148 / 171
第二部 セルフィニエ辺境伯領編
第百四十八話 ピクニックの時間 ③
しおりを挟む
「いましたー!」
そうこうしている内にチェルソくんもわたげキノコを見つけてしまった。
わたげキノコが逃げてしまわないように両手でしっかりと捕まえている。
「僕も見つけなきゃ! 日陰の場所、日陰の場所……」
慌ててキョロキョロとする。
「殿下、日陰というのはワタゲキノコが好む場所の一つに過ぎません」
そう助言するのはアレクスさんだ。
「正確にはキノコが好むのは湿気の多い場所です。日陰の他にも切株や倒木、落ち葉の中に生えていることが多いです。他には沢の近くに生えることも多いですが、今回は近くに沢はないので……」
「分かりました、切株や倒木のとこも探してみます!」
アレクスさんの助言を得て、僕はわたげキノコを探す。
日陰以外にも切株や落ち葉にも目を向けるようにした。
走る度に足元でパキポキと枝や落ち葉が音を立てる。
こんなに大勢で遊んであちこち走り回るのは初めての事かもしれない。
まるで宝探しみたいで、わたげキノコを探し回るこの時間が僕は楽しくてたまらなかった。
「ああー! いた!」
やがて倒木の裏側にもこもこと白い毛に覆われたキノコが生えているのを見つけた。
嬉しさのあまり声を上げる。
「本当ですか! 逃げられないように捕まえて下さい、私が捕まえましょうか?」
「ううん、自分でやってみます!」
ケイスくんだってチェルソくんだって自分で捕まえたのだから、僕だって自分で捕まえるのだ。
僕は音を立てないようにそっと近づき、ゆっくりと手を伸ばした。
「……っ!」
ばっとわたげキノコを掴む。
途端にキノコは手の中で身をくねらせて動き出す。
手が滑ってしまわないように、両手で押さえ込む。
捕まえた!
「おめでとうございます、殿下!」
「えへへ」
見事にわたげキノコを捕まえ、僕ははにかんだのだった。
「みんなの分が揃いましたね、早速競争しましょう!」
ケイスくんが僕たちに声をかける。
そうだ、見つけてお終いじゃなかった。ここからが本番だ。
僕らは森の入口の広場のように空間が広がっている場所に集まった。
「こっからあっちに向かってわたげキノコを飛ばして、一番遠くまで飛んでいったのが勝ちです!」
僕たちは端っこに一列に並ぶ。
そしてわたげキノコを振り上げ構える。
「いっせーのーせっ!」
合図で僕たちは一斉にキノコを放り投げた。
空中に放たれた途端、キノコの頭がぽんっと音を立てて広がる。
「うわっ!」
わたげキノコから綿毛の一部が分離し、パラシュートのように広がったのだ。
こんな風になるなんて知らなかった。
目を点にして僕らが投げたわたげキノコの行く末を見守る。
ケイスくんが投げたキノコが一番高いところを飛んでいたが、進行方向が微妙に斜めに反れていって飛距離があまり伸びなさそうだ。
チェルソくんと僕のキノコはいい勝負だが、僕の方はだんだんと高度が下がってきている。このままでは先に地面に落ちてしまう。
「がんばれ~」
キノコに声援を送る。
だが声援虚しく僕のわたげキノコが先に地面に落ちてしまった。
僕はがっくりと項垂れる。
「ああ~」
「ここからですよ殿下!」
なんと、地面に落ちたキノコは足を動かしてぽてぽてと走り始めた。
キノコはまだまだ距離を伸ばす!
ちなみにケイスくんのわたげキノコはすっかり明後日の方向へと行ってしまった。
「がんばれー」
「頑張れー!」
みんなでキノコたちを応援する。
遂にチェルソくんのキノコも地面に落ち、キノコたちの対決は徒競走に変わった。
「ああっ」
僕のキノコがぽてっと転んでそのまま動かなくなってしまった。
チェルソくんのキノコは分け目もふらず走っていって藪の中に消えていった。
「……チェルソの優勝ー!」
「おめでとう!」
アレクスさんも含めてみんなでチェルソくんを拍手で祝福した。
チェルソくんは嬉しそうにえくぼを浮かべてはにかんでいた。
僕は優勝できなかったけど、とても楽しかった。
僕が生まれて初めてアウトドアの遊びを満喫した日だった。
そうこうしている内にチェルソくんもわたげキノコを見つけてしまった。
わたげキノコが逃げてしまわないように両手でしっかりと捕まえている。
「僕も見つけなきゃ! 日陰の場所、日陰の場所……」
慌ててキョロキョロとする。
「殿下、日陰というのはワタゲキノコが好む場所の一つに過ぎません」
そう助言するのはアレクスさんだ。
「正確にはキノコが好むのは湿気の多い場所です。日陰の他にも切株や倒木、落ち葉の中に生えていることが多いです。他には沢の近くに生えることも多いですが、今回は近くに沢はないので……」
「分かりました、切株や倒木のとこも探してみます!」
アレクスさんの助言を得て、僕はわたげキノコを探す。
日陰以外にも切株や落ち葉にも目を向けるようにした。
走る度に足元でパキポキと枝や落ち葉が音を立てる。
こんなに大勢で遊んであちこち走り回るのは初めての事かもしれない。
まるで宝探しみたいで、わたげキノコを探し回るこの時間が僕は楽しくてたまらなかった。
「ああー! いた!」
やがて倒木の裏側にもこもこと白い毛に覆われたキノコが生えているのを見つけた。
嬉しさのあまり声を上げる。
「本当ですか! 逃げられないように捕まえて下さい、私が捕まえましょうか?」
「ううん、自分でやってみます!」
ケイスくんだってチェルソくんだって自分で捕まえたのだから、僕だって自分で捕まえるのだ。
僕は音を立てないようにそっと近づき、ゆっくりと手を伸ばした。
「……っ!」
ばっとわたげキノコを掴む。
途端にキノコは手の中で身をくねらせて動き出す。
手が滑ってしまわないように、両手で押さえ込む。
捕まえた!
「おめでとうございます、殿下!」
「えへへ」
見事にわたげキノコを捕まえ、僕ははにかんだのだった。
「みんなの分が揃いましたね、早速競争しましょう!」
ケイスくんが僕たちに声をかける。
そうだ、見つけてお終いじゃなかった。ここからが本番だ。
僕らは森の入口の広場のように空間が広がっている場所に集まった。
「こっからあっちに向かってわたげキノコを飛ばして、一番遠くまで飛んでいったのが勝ちです!」
僕たちは端っこに一列に並ぶ。
そしてわたげキノコを振り上げ構える。
「いっせーのーせっ!」
合図で僕たちは一斉にキノコを放り投げた。
空中に放たれた途端、キノコの頭がぽんっと音を立てて広がる。
「うわっ!」
わたげキノコから綿毛の一部が分離し、パラシュートのように広がったのだ。
こんな風になるなんて知らなかった。
目を点にして僕らが投げたわたげキノコの行く末を見守る。
ケイスくんが投げたキノコが一番高いところを飛んでいたが、進行方向が微妙に斜めに反れていって飛距離があまり伸びなさそうだ。
チェルソくんと僕のキノコはいい勝負だが、僕の方はだんだんと高度が下がってきている。このままでは先に地面に落ちてしまう。
「がんばれ~」
キノコに声援を送る。
だが声援虚しく僕のわたげキノコが先に地面に落ちてしまった。
僕はがっくりと項垂れる。
「ああ~」
「ここからですよ殿下!」
なんと、地面に落ちたキノコは足を動かしてぽてぽてと走り始めた。
キノコはまだまだ距離を伸ばす!
ちなみにケイスくんのわたげキノコはすっかり明後日の方向へと行ってしまった。
「がんばれー」
「頑張れー!」
みんなでキノコたちを応援する。
遂にチェルソくんのキノコも地面に落ち、キノコたちの対決は徒競走に変わった。
「ああっ」
僕のキノコがぽてっと転んでそのまま動かなくなってしまった。
チェルソくんのキノコは分け目もふらず走っていって藪の中に消えていった。
「……チェルソの優勝ー!」
「おめでとう!」
アレクスさんも含めてみんなでチェルソくんを拍手で祝福した。
チェルソくんは嬉しそうにえくぼを浮かべてはにかんでいた。
僕は優勝できなかったけど、とても楽しかった。
僕が生まれて初めてアウトドアの遊びを満喫した日だった。
53
あなたにおすすめの小説
【完結】我が兄は生徒会長である!
tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。
名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。
そんな彼には「推し」がいる。
それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。
実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。
終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。
本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。
(番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)
たとえば、俺が幸せになってもいいのなら
夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語―――
父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。
弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。
助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
ある日、人気俳優の弟になりました。
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる
木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8)
和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。
この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか?
鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。
もうすぐ主人公が転校してくる。
僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。
これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。
片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる