悪逆第四皇子は僕のお兄ちゃんだぞっ! ~商人になりたいので悪逆皇子の兄と組むことにします~

野良猫のらん

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第二部 セルフィニエ辺境伯領編

第百四十八話 ピクニックの時間 ③

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「いましたー!」

 そうこうしている内にチェルソくんもわたげキノコを見つけてしまった。
 わたげキノコが逃げてしまわないように両手でしっかりと捕まえている。

「僕も見つけなきゃ! 日陰の場所、日陰の場所……」

 慌ててキョロキョロとする。

「殿下、日陰というのはワタゲキノコが好む場所の一つに過ぎません」

 そう助言するのはアレクスさんだ。

「正確にはキノコが好むのは湿気の多い場所です。日陰の他にも切株や倒木、落ち葉の中に生えていることが多いです。他には沢の近くに生えることも多いですが、今回は近くに沢はないので……」

「分かりました、切株や倒木のとこも探してみます!」

 アレクスさんの助言を得て、僕はわたげキノコを探す。
 日陰以外にも切株や落ち葉にも目を向けるようにした。

 走る度に足元でパキポキと枝や落ち葉が音を立てる。
 こんなに大勢で遊んであちこち走り回るのは初めての事かもしれない。
 まるで宝探しみたいで、わたげキノコを探し回るこの時間が僕は楽しくてたまらなかった。

「ああー! いた!」

 やがて倒木の裏側にもこもこと白い毛に覆われたキノコが生えているのを見つけた。
 嬉しさのあまり声を上げる。

「本当ですか! 逃げられないように捕まえて下さい、私が捕まえましょうか?」
「ううん、自分でやってみます!」

 ケイスくんだってチェルソくんだって自分で捕まえたのだから、僕だって自分で捕まえるのだ。
 僕は音を立てないようにそっと近づき、ゆっくりと手を伸ばした。

「……っ!」

 ばっとわたげキノコを掴む。
 途端にキノコは手の中で身をくねらせて動き出す。
 手が滑ってしまわないように、両手で押さえ込む。
 捕まえた!

「おめでとうございます、殿下!」
「えへへ」

 見事にわたげキノコを捕まえ、僕ははにかんだのだった。

「みんなの分が揃いましたね、早速競争しましょう!」

 ケイスくんが僕たちに声をかける。
 そうだ、見つけてお終いじゃなかった。ここからが本番だ。
 僕らは森の入口の広場のように空間が広がっている場所に集まった。

「こっからあっちに向かってわたげキノコを飛ばして、一番遠くまで飛んでいったのが勝ちです!」

 僕たちは端っこに一列に並ぶ。
 そしてわたげキノコを振り上げ構える。

「いっせーのーせっ!」

 合図で僕たちは一斉にキノコを放り投げた。
 空中に放たれた途端、キノコの頭がぽんっと音を立てて広がる。

「うわっ!」

 わたげキノコから綿毛の一部が分離し、パラシュートのように広がったのだ。
 こんな風になるなんて知らなかった。

 目を点にして僕らが投げたわたげキノコの行く末を見守る。
 ケイスくんが投げたキノコが一番高いところを飛んでいたが、進行方向が微妙に斜めに反れていって飛距離があまり伸びなさそうだ。
 チェルソくんと僕のキノコはいい勝負だが、僕の方はだんだんと高度が下がってきている。このままでは先に地面に落ちてしまう。

「がんばれ~」

 キノコに声援を送る。
 だが声援虚しく僕のわたげキノコが先に地面に落ちてしまった。
 僕はがっくりと項垂れる。

「ああ~」
「ここからですよ殿下!」

 なんと、地面に落ちたキノコは足を動かしてぽてぽてと走り始めた。
 キノコはまだまだ距離を伸ばす!
 ちなみにケイスくんのわたげキノコはすっかり明後日の方向へと行ってしまった。

「がんばれー」
「頑張れー!」

 みんなでキノコたちを応援する。
 遂にチェルソくんのキノコも地面に落ち、キノコたちの対決は徒競走に変わった。

「ああっ」

 僕のキノコがぽてっと転んでそのまま動かなくなってしまった。
 チェルソくんのキノコは分け目もふらず走っていって藪の中に消えていった。

「……チェルソの優勝ー!」
「おめでとう!」

 アレクスさんも含めてみんなでチェルソくんを拍手で祝福した。
 チェルソくんは嬉しそうにえくぼを浮かべてはにかんでいた。
 僕は優勝できなかったけど、とても楽しかった。

 僕が生まれて初めてアウトドアの遊びを満喫した日だった。
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