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第二十五話 ケイン視点――今なら好きになれそうだ
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翌朝。
父さんが帰ってきていきなり頭を下げた。
「すまない」
と。
「昨日はお前の考えを優先すると言った。でも、事情が変わったんだ」
頭を下げたまま父さんが言い募る。
よくもまあ昨日自分を殺そうとした奴のところにのこのこと戻って来れるものだと思う。
「父さん、頭を上げてくれないか」
頭を上げた父さんは驚いた顔をしていた。
僕が彼のことを父さんと呼んだからだろう。
父さんがスピアリング先生のところに泊まることになった辺りから予感はしていた。
「分かってたよ。スピアリング先生の為にも死ねないって言うんだろ?」
「……!」
どうやら図星のようだ。父さんの目が丸くある。
「あ、ああ。そうか……お前は何でもお見通しなんだな」
まるで息子の成長を喜ぶかのように父さんは目を細めて微笑んだ。
「昔から父さんはスピアリング先生に惹かれていた。やっぱり父さんは父さんなんだな」
父さんは僕の手に入る人じゃないと、本当はとっくに分かっていた。
同時に僕の手に入らないからこそ僕の父さんなんだとも思った。
これからは父さんに幸せにしてもらうのではなく、自分の手で掴まなければならない。
僕はずっとそのことが怖かったんだ。
「その、それで、暫くエルのところに泊まろうと思うんだが……」
「そのままスピアリング先生の家に住んでも大丈夫だよ」
「いやいや、そんな訳にはいかないだろ!」
慌てて言い返す父さんの顔が赤く染まっていた。
まったく見せつけてくれる。
「話が終わったならもう言って。僕は今父さんの顔を見るとムカつくんだ」
半ば追い返すようにして、父さんが去っていくのを見送ったのだった。
その背中が見えなくなると、ふうと溜息を吐いた。
「アベル。見てたんだろ、出て来いよ」
外にまで響く声を出して傍観者に声をかける。
「……気づいていたのか」
アベルがそっと姿を現した。
「お前のことだから使い魔で覗き見していると思っていた」
「覗き見だなんて人聞きの悪い。お前が妙な気を起こさないか見張っていただけだ」
僕には敵わない癖に、父さんの護衛のつもりだったらしい。
滑稽なことだ。
「それにしてもざまあないな。どうだ、これが『選んでもらえなかった側の気持ち』だ」
アベルが僕のことを鼻で笑う。
「喧嘩を売ってるのか」
不機嫌に彼を睨み付けながら、身体に魔力を漲らせる。
「……でも、だいぶ人間っぽい顔になったな。今のお前、結構好きだぜ」
何か吹っ切れたような顔で、彼が笑いかけてくる。
「やっぱり喧嘩を売ってるんだな」
「ちょ、おいおい! 褒めてやってるんだぜ!?」
色々と考えたいことはあるが、まずはこの同級生を締めてからにしよう。
拘束の魔術を無詠唱で奔らせながら思う。
その後は……こいつの友達になってやったっていい。
今なら好きになれそうだ。
父さんが帰ってきていきなり頭を下げた。
「すまない」
と。
「昨日はお前の考えを優先すると言った。でも、事情が変わったんだ」
頭を下げたまま父さんが言い募る。
よくもまあ昨日自分を殺そうとした奴のところにのこのこと戻って来れるものだと思う。
「父さん、頭を上げてくれないか」
頭を上げた父さんは驚いた顔をしていた。
僕が彼のことを父さんと呼んだからだろう。
父さんがスピアリング先生のところに泊まることになった辺りから予感はしていた。
「分かってたよ。スピアリング先生の為にも死ねないって言うんだろ?」
「……!」
どうやら図星のようだ。父さんの目が丸くある。
「あ、ああ。そうか……お前は何でもお見通しなんだな」
まるで息子の成長を喜ぶかのように父さんは目を細めて微笑んだ。
「昔から父さんはスピアリング先生に惹かれていた。やっぱり父さんは父さんなんだな」
父さんは僕の手に入る人じゃないと、本当はとっくに分かっていた。
同時に僕の手に入らないからこそ僕の父さんなんだとも思った。
これからは父さんに幸せにしてもらうのではなく、自分の手で掴まなければならない。
僕はずっとそのことが怖かったんだ。
「その、それで、暫くエルのところに泊まろうと思うんだが……」
「そのままスピアリング先生の家に住んでも大丈夫だよ」
「いやいや、そんな訳にはいかないだろ!」
慌てて言い返す父さんの顔が赤く染まっていた。
まったく見せつけてくれる。
「話が終わったならもう言って。僕は今父さんの顔を見るとムカつくんだ」
半ば追い返すようにして、父さんが去っていくのを見送ったのだった。
その背中が見えなくなると、ふうと溜息を吐いた。
「アベル。見てたんだろ、出て来いよ」
外にまで響く声を出して傍観者に声をかける。
「……気づいていたのか」
アベルがそっと姿を現した。
「お前のことだから使い魔で覗き見していると思っていた」
「覗き見だなんて人聞きの悪い。お前が妙な気を起こさないか見張っていただけだ」
僕には敵わない癖に、父さんの護衛のつもりだったらしい。
滑稽なことだ。
「それにしてもざまあないな。どうだ、これが『選んでもらえなかった側の気持ち』だ」
アベルが僕のことを鼻で笑う。
「喧嘩を売ってるのか」
不機嫌に彼を睨み付けながら、身体に魔力を漲らせる。
「……でも、だいぶ人間っぽい顔になったな。今のお前、結構好きだぜ」
何か吹っ切れたような顔で、彼が笑いかけてくる。
「やっぱり喧嘩を売ってるんだな」
「ちょ、おいおい! 褒めてやってるんだぜ!?」
色々と考えたいことはあるが、まずはこの同級生を締めてからにしよう。
拘束の魔術を無詠唱で奔らせながら思う。
その後は……こいつの友達になってやったっていい。
今なら好きになれそうだ。
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