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第十一話 自信を持て
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「内々の面会ですから、過度にマナーが問われることはございませんよ。ヴァン様なら大丈夫です」
フィリップは後ろからヴァンの首にジャボを取り付けながら笑った。
ヴァンは国王夫妻に合うために、おめかしをさせられているところなのだ。
「やはりヴァン様には、空の色が似合いますね」
彼は前に移動すると、すっかり着せ付けられ終えたヴァンの姿を上から下まで眺めて満足そうに微笑んだ。
「うう、こんな立派な服装落ち着かないです……」
ヴァンは、襟の辺りに金糸の刺繍が施された空色のジャケットを着せられていた。金のボタンには細かな彫刻が施されており、まず間違いなく一級の品だと分かる。一体いくらするのだろうと考えてしまう。
「ヴァン様は殿下のフィアンセなのですから、それに相応しい装いをしなくては」
「はい、そうですよね……」
照れながら、姿見を覗き込む。
彼が選んでくれたジレは、パステル調の淡い黄色をしている。ジレの淡さが、目の冴えるような空色のジャケットの印象を柔らかくしてくれている。胸元のジャボだけでなく袖口にもフリルがヒラヒラと踊っていた。下半身は、黒いオー・ド・ショースに白いタイツだ。
「品のある落ち着いた雰囲気に纏まったかと思われますが、いかがですか?」
「これで落ち着いた方なのですか……?」
これ以上派手になったら困るので、この格好でいいと伝えた。
刺繍されている糸一つ取っても、普段着ていた服に使われていた糸とは煌めきが違う。質が段違いなのだと分かる。だから王城の人たちにとっては落ち着いた服装でも、ヴァンにとっては充分すぎるほど豪華に感じられるのだった。
「さあ、それでは国王陛下と王妃陛下の元に参りましょう」
気が重い、という言葉を呑み込む。
遂にこの王国のトップに会わなければならないのだ。ヴァンは胃が痛くなってくるのを感じた。
「へえ、良い見立てだ」
国王夫妻の待つ部屋に向かう途中、ギュスターヴとバッタリ出くわした。国王夫妻との顔合わせには彼も居合わせるのだから、出くわすのは当然と言えば当然だ。
彼はフィリップの見立てた服装に着替えたヴァンの姿を見下ろして、満足げに目を細めた。
「ジレのセンスがいい。ヴァンの琥珀色の瞳と、色味が調和している」
「もったいないお言葉です」
フィリップが如才なく返答する。
その横でヴァンは頬が熱くなるのを感じていた。地味な色の茶色い瞳を、琥珀色だなんて詩的な言葉で言い表されたのは初めてだった。
「ヴァン、緊張しているのかい?」
「ええまあ、国王陛下と王妃陛下にお会いするのは初めてのことですので……」
ヴァンは落ち着かなげに、眼鏡の位置をカチャカチャと直す。
「自信を持ってくれ、今の君は素敵だよ。私が必ず、両親に君のことを認めさせよう」
「……はい」
ヴァンは唇を噛む。自信を持てだなんて無責任な言葉だ。
風の精霊の加護しかないし、彼みたいに美しくもない。愛嬌がいい性格とも言えないし、おまけに彼よりも年上。こんな人間のどこを見て自信を持てだなんて言うのか。
また、お得意の綺麗ごとだ。
苦々しく思いたいのに、胸の内に暖かいものが湧き起こってくるのを止められなかった。「自信を持て」なんて言ってくれたのは、彼が初めてだったから――。
フィリップは後ろからヴァンの首にジャボを取り付けながら笑った。
ヴァンは国王夫妻に合うために、おめかしをさせられているところなのだ。
「やはりヴァン様には、空の色が似合いますね」
彼は前に移動すると、すっかり着せ付けられ終えたヴァンの姿を上から下まで眺めて満足そうに微笑んだ。
「うう、こんな立派な服装落ち着かないです……」
ヴァンは、襟の辺りに金糸の刺繍が施された空色のジャケットを着せられていた。金のボタンには細かな彫刻が施されており、まず間違いなく一級の品だと分かる。一体いくらするのだろうと考えてしまう。
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「はい、そうですよね……」
照れながら、姿見を覗き込む。
彼が選んでくれたジレは、パステル調の淡い黄色をしている。ジレの淡さが、目の冴えるような空色のジャケットの印象を柔らかくしてくれている。胸元のジャボだけでなく袖口にもフリルがヒラヒラと踊っていた。下半身は、黒いオー・ド・ショースに白いタイツだ。
「品のある落ち着いた雰囲気に纏まったかと思われますが、いかがですか?」
「これで落ち着いた方なのですか……?」
これ以上派手になったら困るので、この格好でいいと伝えた。
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「さあ、それでは国王陛下と王妃陛下の元に参りましょう」
気が重い、という言葉を呑み込む。
遂にこの王国のトップに会わなければならないのだ。ヴァンは胃が痛くなってくるのを感じた。
「へえ、良い見立てだ」
国王夫妻の待つ部屋に向かう途中、ギュスターヴとバッタリ出くわした。国王夫妻との顔合わせには彼も居合わせるのだから、出くわすのは当然と言えば当然だ。
彼はフィリップの見立てた服装に着替えたヴァンの姿を見下ろして、満足げに目を細めた。
「ジレのセンスがいい。ヴァンの琥珀色の瞳と、色味が調和している」
「もったいないお言葉です」
フィリップが如才なく返答する。
その横でヴァンは頬が熱くなるのを感じていた。地味な色の茶色い瞳を、琥珀色だなんて詩的な言葉で言い表されたのは初めてだった。
「ヴァン、緊張しているのかい?」
「ええまあ、国王陛下と王妃陛下にお会いするのは初めてのことですので……」
ヴァンは落ち着かなげに、眼鏡の位置をカチャカチャと直す。
「自信を持ってくれ、今の君は素敵だよ。私が必ず、両親に君のことを認めさせよう」
「……はい」
ヴァンは唇を噛む。自信を持てだなんて無責任な言葉だ。
風の精霊の加護しかないし、彼みたいに美しくもない。愛嬌がいい性格とも言えないし、おまけに彼よりも年上。こんな人間のどこを見て自信を持てだなんて言うのか。
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