異世界転生した僕、実は悪役お兄様に溺愛されてたようです

野良猫のらん

文字の大きさ
2 / 84

第二話 まず婚約します

しおりを挟む
 その昔、戦争をしていたとある国と国が戦争を止めるために和平の証としてそれぞれの国の王子と姫を婚姻させることにした。
 だが結婚の直前、姫が病に倒れ死んでしまう。
 姫には姉妹はいない。よく似た弟がいるだけであった。
 このままでは和平がうやむやになってしまう……そこで国は法を変え男同士で結婚できることにし、姫の弟を相手の国の王子に嫁がせたのであった。

 そういう経緯からこの国では男同士で結婚ができる。
 そして憎い憎い異母兄との結婚を避ける為に領地を繁栄をさせるのがゲームの目的なので、ゲーム内ではロベールとの結婚はできない。
 いや正確にはできるがそれはゲームオーバーになった時のことで、互いを憎悪し合う悲惨な結婚生活が待ち構えている。

 まあそれはともかくとして転生によってせっかく自由度が高まったこの世界、最短でロベールと結婚するのが最善手と思われるのでここでプロポーズします。

「結婚しよう」
「はぁ……!?」
「僕とお前で結婚しよう」

 僕は言葉を重ねる。
 その僕の言葉に……ロベールはみるみるうちに顔を青褪めさせた。

「爺や! アントワーヌが錯乱した! 今すぐこの村にあるという城まで運べ!」

 何故だか僕は爺やに城まで運ばれることになってしまった。

 あれぇ、おかしいなあ。
 ロベールは僕との結婚を望んでいるはずだから、『結婚しよう』とさえ言えば婚姻成立だと思ったのに。

 僕は村民に吸血鬼の棲む廃城と噂されている古城に運び込まれ、慌てて清掃された寝室に押し込められた。

「……気分はどうだ」

 しばらく大人しく寝ていたら、ロベールが様子を見に来た。

「いい」
「それは良かった……それで、さっきの妄言は一体なんだ。まさか村の惨状にショックを受けて自暴自棄になったのではあるまいな?」

 僕のプロポーズは何一つ本気にされてなかった。
 ついさっきまで親の仇と憎んでいた相手にプロポーズするという奇行に、流石のロベールも僕のことが心配になってしまったらしい。

 さて、ロベールに僕のプロポーズを受け入れさせる為には一体どうしたらいいだろうか?

「本気だ」

 とりあえず、真剣な顔をしてみる。

「…………」

 ロベールは不気味なものでも見るみたいに顔を歪ませている。
 このアプローチでは駄目なようだ。
 では少し視点を変えてみよう。

「子供の頃は仲が良かったじゃないか……お兄様」

 第二夫人がナルセンティアに戻るまでの短い間は、僕たちは一緒に育ち、異母兄弟ながらとても仲が良かった。何をするにも常に一緒で、僕はロベールをお兄様と呼んで慕っていた。

「大きくなったらお兄様と結婚するという約束もした」
「い、いや待て、だがそれは幼い頃の話で……」
「お兄様は心変わりしたの?」

 こてん、と首を傾げて兄を見上げる。
 ロベールは狼狽している。さっきよりは反応がいい。

「心変わりしたというのならそれは君の方だろう。私との婚姻が嫌で……っ、こんな僻地まで来たんじゃないのか?」

 ロベールは睨むような懇願するような何とも言えない複雑な表情で僕を見つめる。
 だが彼の中にどのような複雑な想いが渦巻いていようと僕には関係ない。

「いや。村おこしRTAしたいから来た」

 あっけらかんと言う。

「だからそのアールティーエーというのは何なんだ!? 私には君が分からない!」

 戸惑いが許容値を越え、このままではロベールの方が錯乱しかねない。
 僕は無理やり話題を変えることにした。

「父上も母上も姉上も殺された時、僕だけが生き残ったのはロベールが命乞いしてくれたからだと聞いた」

 僕の言葉にロベールはビクリとする。

「それは……君も聞いただろう。命乞いというほどのことはない。君の白い髪に白い肌、紅い瞳が珍しいから自分の物にしたいと母上にねだった。ただそれだけのことだ。ハッ、まるで私が君に情を抱いているかのような言い方は止してもらいたいな」

 僕は自分の手を見下ろした。
 確かに病的なほどの白い肌をしている。アルビノというやつだろう。
 主人公がアルビノだからロベールは欲したという情報はゲーム内でも出ている。

「それは本当?」
「な……っ」

 追及するとロベールはあからさまに動揺する。

「僕はロベールが僕のことが好きだから助けてくれたんだと信じてる。だから僕はロベールと結婚したい。でもナルセンティアでは生活したくない。だから僕と一緒にこの村を盛り上げるのを此処で手伝って欲しい……ダメ?」

 早く最序盤からナルセンティア家の資金チートで村おこしRTAしたいんだから結婚しろ、と僕は迫った。

「いや、それは……だが、私にはそんな資格は……っ」

 ロベールは躊躇いを見せる。

 ええい、まどろっこしい。
 僕はベッドから身を起こすとロベールに抱き着いた。
 そして背伸びをして……唇と唇を接触させた。いわゆるキスという行為だ。

 ゆっくりと唇を離すと、驚きに目を見張ったロベールの顔が耳まで真っ赤に染まっているのが見えた。

「僕にはロベールがいないと駄目なんだ」

 実際には駄目ということはないがここで資金ブーストがあるかないかでかなりクリアタイムに差異が出てくると思われるので、いてくれた方がいい。

「アントワーヌ……」
「昔みたいにアンって呼んで」

 僕は唇を尖らせる。

「アン……分かった。私はこの地で君と暮らそう。母上らのことは何とか説得しよう」

 ロベールが僕の背中に片腕を回す。
 そしてもう片方の手を僕の顎に添え、屈む。
 唇と唇が触れる。再びの接吻くちづけ。二人の呼吸が混ざる。

 よし、第一段階無事クリアー!
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。

時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!? ※表紙のイラストはたかだ。様 ※エブリスタ、pixivにも掲載してます ◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。 ◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」 身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。 死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。 カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。 「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」 献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。 これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。

処理中です...