22 / 84
第二十二話 討伐決行の日です
フロアボス討伐決行の日となった。
「うおぉぉぉ、やるぞーっ!!!」
冒険者たちは鬨の声を上げて士気を高めている。
高揚とした空気が充満している。臆した感じは少しもない。
「それでは領主様、頑張って参ります」
箒を片手にしたメイジの少年が緊張した面持ちで僕の傍らに控えている爺やから魔導具を受け取る。
僕が彼に渡した魔導具の名は「ヴィデ・オブスキュラ」という。
その魔導具は一見水晶玉のように見えるが、魔力を注ぎ込むと起動し、起動している間の周囲の様子を水晶玉の中に保存することができる。そして保存した映像を後で見ることができるのだ。
つまりはビデオカメラだ。
討伐戦の様子を記録したいので購入したのだ。討伐戦の様子を記録しておければ便利なことが様々にあるだろうと考えて。
少年は箒に括り付けたネットに水晶玉を入れる。
水晶玉はスイカのように箒に吊るされた。
彼には空中を飛んでもらってグレートベヒモスの角の発光を見張ってもらい、発光した瞬間に冒険者たちに合図してもらう役目を担ってもらう。そのついでに上空から討伐の様子を記録してもらおうという訳だ。
「任じられた役目、果たしたいと思います」
少年の手は震えていた。
領主に直々に役目を命じられたからか、高価な魔導具を預けられたからか、それとも死の恐怖ゆえか。
「あまり無理しないように。別にそれが壊れても賠償金を請求したりしない」
僕は軽く言った。
魔導具が破壊されたらされたで次回から別の方策を講じるだけだ。例えば撮影専門の人を雇ってずっと遠くから撮影してもらうとか。
少年はこくりと頷く。
少しでも緊張が解けたならいいのだが。
「あと、これはフロアボスの素材を入れておく袋だ」
僕は天鵞絨のような材質の袋を彼に差し出す。
圧縮袋だ。見た目よりずっと多くの物を入れられる袋で、魔導具の一種である。冒険者なら誰でも持っている。これがないと折角倒した魔物の素材が持ち帰れないからだ。
高価であればあるほど内容量が増えるので多くの物が入れられる。
これは圧縮袋の中でも最高級品である。
フロアボスの素材ほど大きな物だと最高級品の圧縮袋でないと入らない。
一介の冒険者が持っている者だとは思えないので貸し出す。
ちなみにこの少年はそんなことをしないとは思うが、託されたフロアボスを討伐した後に素材と圧縮袋を託された者がそれをそのまま盗もうとした事件が過去にあったらしい。
素材が領主に納品されないと報酬は出ないことになっているので、盗人は討伐に参加した全冒険者によって袋叩きに遭ったらしい。
それ以来フロアボスの素材を盗もうなんて不届き者は出ていないそうだ。そんな内容をゲーム内のTIPSで読んだ。
やがて冒険者たちはクライヴを先頭に村から出ていった。
遂にフロアボスの討伐が始まるのだ。
後はもう彼らが戻ってくるまで待つしかない。
「無事に彼らが戻ってくるといいな」
ロベールがぽつりと呟く。
彼にとってはこの村のダンジョンにフロアボスが湧くのは初めてのことだから、内心気が気でないだろう。
もしもフロアボスが外まで出てきたらどうしよう、なんて思っていたりするだろうか。
僕は一番最初のフロアボスなんて楽勝だって知ってるから心配していないけれど、彼はそうではない。
僕はそっと彼の手を握った。
「冒険者たちが戻ってくるまで城で僕と楽しいことしてる?」
僕の言葉にピクリと彼の手が動く。
「いや……いやいやいや、いきなり何を言い出すのかねアン。そういうことはきちんと式を挙げてからだと……」
「お城でチェスとかしてたら気が紛れるかなと思ったんだけど」
「ムグ、ムググググ……」
狙い通り意味を勘違いした彼は顔を真っ赤にさせたのだった。
ロベールの赤面は健康にいい。やっぱり一日一回はロベールを揶揄わないとね。
僕らの様子を爺やが微笑ましげに見守っている。
「じゃあ城に戻ろっか」
「むむむむむ……」
まだ唸っている。どこまで可愛いのだろうか。
僕らは何となくそのまま手を繋いで城まで戻った。
城に戻った後、ロベールは日頃の仕返しとばかりにチェスで本気を出してきて僕はギタンギタンに負けたのだった。
「うおぉぉぉ、やるぞーっ!!!」
冒険者たちは鬨の声を上げて士気を高めている。
高揚とした空気が充満している。臆した感じは少しもない。
「それでは領主様、頑張って参ります」
箒を片手にしたメイジの少年が緊張した面持ちで僕の傍らに控えている爺やから魔導具を受け取る。
僕が彼に渡した魔導具の名は「ヴィデ・オブスキュラ」という。
その魔導具は一見水晶玉のように見えるが、魔力を注ぎ込むと起動し、起動している間の周囲の様子を水晶玉の中に保存することができる。そして保存した映像を後で見ることができるのだ。
つまりはビデオカメラだ。
討伐戦の様子を記録したいので購入したのだ。討伐戦の様子を記録しておければ便利なことが様々にあるだろうと考えて。
少年は箒に括り付けたネットに水晶玉を入れる。
水晶玉はスイカのように箒に吊るされた。
彼には空中を飛んでもらってグレートベヒモスの角の発光を見張ってもらい、発光した瞬間に冒険者たちに合図してもらう役目を担ってもらう。そのついでに上空から討伐の様子を記録してもらおうという訳だ。
「任じられた役目、果たしたいと思います」
少年の手は震えていた。
領主に直々に役目を命じられたからか、高価な魔導具を預けられたからか、それとも死の恐怖ゆえか。
「あまり無理しないように。別にそれが壊れても賠償金を請求したりしない」
僕は軽く言った。
魔導具が破壊されたらされたで次回から別の方策を講じるだけだ。例えば撮影専門の人を雇ってずっと遠くから撮影してもらうとか。
少年はこくりと頷く。
少しでも緊張が解けたならいいのだが。
「あと、これはフロアボスの素材を入れておく袋だ」
僕は天鵞絨のような材質の袋を彼に差し出す。
圧縮袋だ。見た目よりずっと多くの物を入れられる袋で、魔導具の一種である。冒険者なら誰でも持っている。これがないと折角倒した魔物の素材が持ち帰れないからだ。
高価であればあるほど内容量が増えるので多くの物が入れられる。
これは圧縮袋の中でも最高級品である。
フロアボスの素材ほど大きな物だと最高級品の圧縮袋でないと入らない。
一介の冒険者が持っている者だとは思えないので貸し出す。
ちなみにこの少年はそんなことをしないとは思うが、託されたフロアボスを討伐した後に素材と圧縮袋を託された者がそれをそのまま盗もうとした事件が過去にあったらしい。
素材が領主に納品されないと報酬は出ないことになっているので、盗人は討伐に参加した全冒険者によって袋叩きに遭ったらしい。
それ以来フロアボスの素材を盗もうなんて不届き者は出ていないそうだ。そんな内容をゲーム内のTIPSで読んだ。
やがて冒険者たちはクライヴを先頭に村から出ていった。
遂にフロアボスの討伐が始まるのだ。
後はもう彼らが戻ってくるまで待つしかない。
「無事に彼らが戻ってくるといいな」
ロベールがぽつりと呟く。
彼にとってはこの村のダンジョンにフロアボスが湧くのは初めてのことだから、内心気が気でないだろう。
もしもフロアボスが外まで出てきたらどうしよう、なんて思っていたりするだろうか。
僕は一番最初のフロアボスなんて楽勝だって知ってるから心配していないけれど、彼はそうではない。
僕はそっと彼の手を握った。
「冒険者たちが戻ってくるまで城で僕と楽しいことしてる?」
僕の言葉にピクリと彼の手が動く。
「いや……いやいやいや、いきなり何を言い出すのかねアン。そういうことはきちんと式を挙げてからだと……」
「お城でチェスとかしてたら気が紛れるかなと思ったんだけど」
「ムグ、ムググググ……」
狙い通り意味を勘違いした彼は顔を真っ赤にさせたのだった。
ロベールの赤面は健康にいい。やっぱり一日一回はロベールを揶揄わないとね。
僕らの様子を爺やが微笑ましげに見守っている。
「じゃあ城に戻ろっか」
「むむむむむ……」
まだ唸っている。どこまで可愛いのだろうか。
僕らは何となくそのまま手を繋いで城まで戻った。
城に戻った後、ロベールは日頃の仕返しとばかりにチェスで本気を出してきて僕はギタンギタンに負けたのだった。
あなたにおすすめの小説
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
氷の騎士団長様の悪妻とかイヤなので離婚しようと思います
黄金
BL
目が覚めたら、ここは読んでたBL漫画の世界。冷静冷淡な氷の騎士団長様の妻になっていた。しかもその役は名前も出ない悪妻!
だったら離婚したい!
ユンネの野望は離婚、漫画の主人公を見たい、という二つの事。
お供に老侍従ソマルデを伴って、主人公がいる王宮に向かうのだった。
本編61話まで
番外編 なんか長くなってます。お付き合い下されば幸いです。
※細目キャラが好きなので書いてます。
多くの方に読んでいただき嬉しいです。
コメント、お気に入り、しおり、イイねを沢山有難うございます。
だから、悪役令息の腰巾着! 忌み嫌われた悪役は不器用に僕を囲い込み溺愛する
モト
BL
2024.12.11~2巻がアンダルシュノベルズ様より書籍化されます。皆様のおかげです。誠にありがとうございます。
番外編などは書籍に含まれませんので是非、楽しんで頂けますと嬉しいです。
他の番外編も少しずつアップしたいと思っております。
◇ストーリー◇
孤高の悪役令息×BL漫画の総受け主人公に転生した美人
姉が書いたBL漫画の総モテ主人公に転生したフランは、総モテフラグを折る為に、悪役令息サモンに取り入ろうとする。しかしサモンは誰にも心を許さない一匹狼。周囲の人から怖がられ悪鬼と呼ばれる存在。
そんなサモンに寄り添い、フランはサモンの悪役フラグも折ろうと決意する──。
互いに信頼関係を築いて、サモンの腰巾着となったフランだが、ある変化が……。どんどんサモンが過保護になって──!?
・書籍化部分では、web未公開その後の番外編*がございます。
総受け設定のキャラだというだけで、総受けではありません。CPは固定。
自分好みに育っちゃった悪役とのラブコメになります。
親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃がはじまる──! といいな!(笑)
本編完結済、ロデア大公立学園編、はじめました!
本編のあと、恋愛ルートやおまけのお話に進まずに、すぐロデア大公立学園編に続く感じです。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけです!
名前が * ゆるゆ になりました。
これからもどうぞよろしくお願い致します!
表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。校正も自力です!(笑)
転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜
隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。
目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。
同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります!
俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ!
重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ)
注意:
残酷な描写あり
表紙は力不足な自作イラスト
誤字脱字が多いです!
お気に入り・感想ありがとうございます。
皆さんありがとうございました!
BLランキング1位(2021/8/1 20:02)
HOTランキング15位(2021/8/1 20:02)
他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00)
ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。
いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!
ゲーム世界の貴族A(=俺)
猫宮乾
BL
妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。
【完結】転生した悪役令息は、お望み通り近付きません
カシナシ
BL
「お前など、愛す価値もない」
ディディア・ファントム侯爵令息が階段から落ちる時見たのは、婚約者が従兄弟を抱きしめている姿。
(これって、ディディアーーBLゲームの悪役令息じゃないか!)
妹の笑顔を見るためにやりこんでいたBLゲーム。引くほどレベルを上げた主人公のスキルが、なぜかディディアに転生してそのまま引き継いでいる。
スキルなしとして家族に『失敗作』と蔑まれていたのは、そのスキルのレベルが高すぎたかららしい。
スキルと自分を取り戻したディディアは、婚約者を追いかけまわすのを辞め、自立に向けて淡々と準備をする。
もちろん元婚約者と従兄弟には近付かないので、絡んでこないでいただけます?
十万文字程度。
3/7 完結しました!
※主人公:マイペース美人受け
※女性向けHOTランキング1位、ありがとうございました。完結までの12日間に渡り、ほとんど2〜5位と食い込めた作品となりました!あああありがとうございます……!。゚(゚´Д`゚)゚。
たくさんの閲覧、イイね、エール、感想は、作者の血肉になります……!(o´ω`o)ありがとうございます!(●′ω`人′ω`●)