51 / 84
第五十話 頼りになる伴侶
しおりを挟む
「どうしよう、こんなのいらないよ……」
僕は結局媚薬の蜜を部屋まで持ち帰ってきていた。
さてなんと言って従者に処分させようか。
この蜜って結構有名なものなのかな。この蜜がえっちなものだってみんなが知ってたら従者に処分させるのも恥ずかしいな。
自分で捨てようか……一体どうやって?
クライヴは紅茶に一杯混ぜるだけで充分だと言っていた。
そんなものを瓶一本分も無造作に川に捨てたりしたら何か悪影響があるかもしれない。
不用意に始末するわけにはいかなかった。
「アン? 一体何を眺めているんだ?」
「うわぁぁぁあ!?!?」
突然後ろからかけられた声に僕は絶叫した。
「ろ、ロベール! なんで勝手に部屋に入ってきてるんだ! ノックしてよ!!」
「驚かしてすまん、だがノックはしたのだ! 返事がないから何かあったのかと心配になって……」
どうやら僕が考え込んでてノック音を聞き逃したらしい。
僕はごめんと頭を下げた。
「ところでそれは何だ?」
ロベールの視線が僕の手の中にある瓶に向く。
「え、えと、これは……」
えっちな媚薬だとバレただろうかと心臓がバクバクと跳ねる。
「ふむ、見覚えのないものだな。一体なんだ?」
良かった、ロベールはこれを知らないらしい。
これなら誤魔化しようはある。
「えっとね、特別な花の蜜だってもらったんだ」
「花の蜜? ロゼワインのように美しい色をしているではないか。どれ、少し香りを嗅がせてくれないか」
「だ、だめ―っ!!」
僕は必死で止める。
一滴で効果があるものだ、匂いを嗅ぐだけでも何か影響があるかもしれない。
「嗅ぐだけでも駄目なのか?」
「だ、駄目。あまり空気に触れさせちゃいけないんだっ!」
「そういうことなら仕方ないな」
ロベールは納得したようだった。
ふう、危ない危ない。
「そうだ、部屋を訪れた用件を忘れていた。村の運営についてだ」
「話を聞こう」
僕は頭を切り替えて椅子に腰かけた。
「これはボニーから上がってきた意見だ。何でもこの村に学校を建ててほしいそうだ」
「学校を?」
「ああ。隣村にも文字を教える小さな学校がある。この村にも子供を教育する場があればいいのではないかと」
僕はしばし考え込む。
確かにある程度の規模になればそういう施設は必要になってくる。だがダンジョン村の繁栄には直接の関係はない。すぐには儲からないタイプの施設だ。
「君が悩むのも分かる。学校は金を生まない」
「ああ。少なくとも短期的にはね」
ゲーム内では十年間だけ村を運営すればそれで良かったが、僕は十年間の保護期間が終わった後もこの村を運営していくつもりだ。
この村の未来を考えると学校がないのは不味いだろう。
「だが金を生まない施設だからこそ公費で建てねばならない。何より隣村にすらあるものが我が村にはないというのは悔しいじゃないか。建てよう、学校」
僕の言葉に驚いたようにロベールは目を見張った。
「意外だな。君は金を得ることしか考えていないのだと思った」
「僕が守銭奴みたいな言い方だな」
「言い方が悪かった、すまん。だが君は儲けるだけ儲けてそのすべてを村の運営に注ぎ込んでしまう。その君が学校の設立に賛成してくれるとは」
「その言い方だと君はボニーと同じ意見だったみたいだな」
口ぶりにロベールも学校を建ててもらいたがっていたようだと察する。
「ああ。文字が読めればそれだけ平民でも就ける職が増えるだろう。今までそんなことは気にしたこともなかったが、この村を見ていて気が付いたんだ。同じ平民でも単なる肉体労働よりも商人やギルド員など、学がある者が就ける職の方がより多くの金を得られる。この村の子供たちが文字を読めるならばそれに越したことはない。また、大人でも文字が読めるようになりたいと思っている者は学べるといい。ボニーやその二人の兄のようにな」
僕はロベールの言葉に目を見張る。
「なんだ。ロベールの方が僕なんかよりずっと村の未来を見据えているじゃないか」
「そ、そうか?」
「ああ。僕は即物的な物にばかり視線がいってしまう。だがロベールならそうではないものにも視線を向けられる。だから、これからも僕はロベールに頼りたい」
ロベールは僕の言葉を耳にすると、ニッと力強く笑った。
「ああ、もちろんだとも。私のことを大いに頼ると良い。全力でアンのことを支えてやる」
僕の伴侶がこの人で良かった。
僕は心からの安堵に包まれたのだった。
僕は結局媚薬の蜜を部屋まで持ち帰ってきていた。
さてなんと言って従者に処分させようか。
この蜜って結構有名なものなのかな。この蜜がえっちなものだってみんなが知ってたら従者に処分させるのも恥ずかしいな。
自分で捨てようか……一体どうやって?
クライヴは紅茶に一杯混ぜるだけで充分だと言っていた。
そんなものを瓶一本分も無造作に川に捨てたりしたら何か悪影響があるかもしれない。
不用意に始末するわけにはいかなかった。
「アン? 一体何を眺めているんだ?」
「うわぁぁぁあ!?!?」
突然後ろからかけられた声に僕は絶叫した。
「ろ、ロベール! なんで勝手に部屋に入ってきてるんだ! ノックしてよ!!」
「驚かしてすまん、だがノックはしたのだ! 返事がないから何かあったのかと心配になって……」
どうやら僕が考え込んでてノック音を聞き逃したらしい。
僕はごめんと頭を下げた。
「ところでそれは何だ?」
ロベールの視線が僕の手の中にある瓶に向く。
「え、えと、これは……」
えっちな媚薬だとバレただろうかと心臓がバクバクと跳ねる。
「ふむ、見覚えのないものだな。一体なんだ?」
良かった、ロベールはこれを知らないらしい。
これなら誤魔化しようはある。
「えっとね、特別な花の蜜だってもらったんだ」
「花の蜜? ロゼワインのように美しい色をしているではないか。どれ、少し香りを嗅がせてくれないか」
「だ、だめ―っ!!」
僕は必死で止める。
一滴で効果があるものだ、匂いを嗅ぐだけでも何か影響があるかもしれない。
「嗅ぐだけでも駄目なのか?」
「だ、駄目。あまり空気に触れさせちゃいけないんだっ!」
「そういうことなら仕方ないな」
ロベールは納得したようだった。
ふう、危ない危ない。
「そうだ、部屋を訪れた用件を忘れていた。村の運営についてだ」
「話を聞こう」
僕は頭を切り替えて椅子に腰かけた。
「これはボニーから上がってきた意見だ。何でもこの村に学校を建ててほしいそうだ」
「学校を?」
「ああ。隣村にも文字を教える小さな学校がある。この村にも子供を教育する場があればいいのではないかと」
僕はしばし考え込む。
確かにある程度の規模になればそういう施設は必要になってくる。だがダンジョン村の繁栄には直接の関係はない。すぐには儲からないタイプの施設だ。
「君が悩むのも分かる。学校は金を生まない」
「ああ。少なくとも短期的にはね」
ゲーム内では十年間だけ村を運営すればそれで良かったが、僕は十年間の保護期間が終わった後もこの村を運営していくつもりだ。
この村の未来を考えると学校がないのは不味いだろう。
「だが金を生まない施設だからこそ公費で建てねばならない。何より隣村にすらあるものが我が村にはないというのは悔しいじゃないか。建てよう、学校」
僕の言葉に驚いたようにロベールは目を見張った。
「意外だな。君は金を得ることしか考えていないのだと思った」
「僕が守銭奴みたいな言い方だな」
「言い方が悪かった、すまん。だが君は儲けるだけ儲けてそのすべてを村の運営に注ぎ込んでしまう。その君が学校の設立に賛成してくれるとは」
「その言い方だと君はボニーと同じ意見だったみたいだな」
口ぶりにロベールも学校を建ててもらいたがっていたようだと察する。
「ああ。文字が読めればそれだけ平民でも就ける職が増えるだろう。今までそんなことは気にしたこともなかったが、この村を見ていて気が付いたんだ。同じ平民でも単なる肉体労働よりも商人やギルド員など、学がある者が就ける職の方がより多くの金を得られる。この村の子供たちが文字を読めるならばそれに越したことはない。また、大人でも文字が読めるようになりたいと思っている者は学べるといい。ボニーやその二人の兄のようにな」
僕はロベールの言葉に目を見張る。
「なんだ。ロベールの方が僕なんかよりずっと村の未来を見据えているじゃないか」
「そ、そうか?」
「ああ。僕は即物的な物にばかり視線がいってしまう。だがロベールならそうではないものにも視線を向けられる。だから、これからも僕はロベールに頼りたい」
ロベールは僕の言葉を耳にすると、ニッと力強く笑った。
「ああ、もちろんだとも。私のことを大いに頼ると良い。全力でアンのことを支えてやる」
僕の伴侶がこの人で良かった。
僕は心からの安堵に包まれたのだった。
129
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。
時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!?
※表紙のイラストはたかだ。様
※エブリスタ、pixivにも掲載してます
◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。
◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!
ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。
ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。
これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。
ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!?
ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19)
公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年の乙女ゲー転生BLです。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる