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第四十五話 王子とティータイム!
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寝室のティーテーブルで王子と向かい合う。
セバスチャンがお茶を淹れてきてくれて、注いでくれた。
「これがこの国のお茶ですか」
ネズィル王子が物珍しげにカップを手に取り、顔に近づける。
「心が落ち着くような香りですね」
王子が香りに顔を綻ばせたのを確認して、俺は先にカップを傾けた。
口の中をお茶が温めるのと同時に、その香りが鼻腔に広がったような気がした。
王子もそれを見てずずっとお茶を啜った。
そういえば。
こうして他人と向かい合ってお茶をして初めて気が付いたが、お茶菓子がない。
いささか口寂しい。お菓子を開発しておけば良かったと俺は後悔した。
王子が帰った後ですぐにでも果物の食糧地でも作成しておこう。
焼きリンゴとか、この落ち着いた味のお茶に合うのではないだろうか。
ああ、食べ物のことを考えているだけでお腹が減ってきた……。
「まず、この国の名前は何というのですか?」
カップを一旦置いた王子が尋ねてくる。
国の名前か……考えたことなかったな。
「名前は特にない」
俺は素直に言った。
「なるほど。これまで他の国との交流などがなかったのなら、国に名前を付ける必要性などありませんからね」
王子は鷹揚に頷いているが、気が付かないのだろうか。
今まで一度も他の国と交流したことのない国の民が自分たちと同じ言語で話している不思議に。
俺たちのような魔力生命体にとって言語とは世界に与えられるものだ。わざわざ学ぶものではない。
文字だって世界に与えられるものだし、絵も文字の範疇なのでモンスターはみんな精巧な絵を描ける。
まあ魔力の多寡や種族差によって文字を書けなかったり、言葉が話せない者がいるが。
王子は俺たちが普通に言葉を交わせる事実を少しも不思議に思う様子がなかった。
もしやこの千年の間に人間は言語の統一でも成し遂げたのかもしれない。
そうであれば、そもそも他の言語で話している者がいるかもしれないという発想自体がないかもしれない。
「窓から見えるあれは何でしょう? 青々と何かが実っているようですが」
王子が窓の向こうに見える遠くの水田を指し示す。
米を収穫した食糧地から自動的にまた米が生えてきたのだ。
水の量も自動的に上げ下げされているようである。どこから水が入ってきて、どこへと流れていっているのかまったく分からないが管理しなくても勝手に水の量が変わっている。
食糧地とはまことに不思議なものである。秋になればまた米が収穫できるであろう。
「あれが米だ。もう食べたことが?」
「ええ、とても美味でした。あのような変わった畑で育つのですね」
一呼吸置くと、王子は窓の外から視線を外し俺に向き直る。
「実は私がこちらへ伺ったのは、そのオコメのことで話があるからなのです」
おや。
俺に勝手に惚れて勝手に失恋したものと思っていたが、どうやら王子には俺に会う以外の目的があったらしい。
そりゃそうだよな。一国の王子が惚れた腫れたで軽々しく国境を越えないよな。
「実を言うと我がイヨケフスト王国では麦の不作が続いていまして、民が飢えているのです。そこで貴方の国のオコメを大量に我が国に輸入してもらうことが出来れば、民たちが助かります」
優しそうな面差し通り、王子は大変国民想いのようであった。
なるほど、それでわざわざはるばる魔の草原の向こうまで来たということか。
「そういうことか、事情は理解した……喜んで力を貸そう」
「魔王様!?」
セバスチャンがお茶を淹れてきてくれて、注いでくれた。
「これがこの国のお茶ですか」
ネズィル王子が物珍しげにカップを手に取り、顔に近づける。
「心が落ち着くような香りですね」
王子が香りに顔を綻ばせたのを確認して、俺は先にカップを傾けた。
口の中をお茶が温めるのと同時に、その香りが鼻腔に広がったような気がした。
王子もそれを見てずずっとお茶を啜った。
そういえば。
こうして他人と向かい合ってお茶をして初めて気が付いたが、お茶菓子がない。
いささか口寂しい。お菓子を開発しておけば良かったと俺は後悔した。
王子が帰った後ですぐにでも果物の食糧地でも作成しておこう。
焼きリンゴとか、この落ち着いた味のお茶に合うのではないだろうか。
ああ、食べ物のことを考えているだけでお腹が減ってきた……。
「まず、この国の名前は何というのですか?」
カップを一旦置いた王子が尋ねてくる。
国の名前か……考えたことなかったな。
「名前は特にない」
俺は素直に言った。
「なるほど。これまで他の国との交流などがなかったのなら、国に名前を付ける必要性などありませんからね」
王子は鷹揚に頷いているが、気が付かないのだろうか。
今まで一度も他の国と交流したことのない国の民が自分たちと同じ言語で話している不思議に。
俺たちのような魔力生命体にとって言語とは世界に与えられるものだ。わざわざ学ぶものではない。
文字だって世界に与えられるものだし、絵も文字の範疇なのでモンスターはみんな精巧な絵を描ける。
まあ魔力の多寡や種族差によって文字を書けなかったり、言葉が話せない者がいるが。
王子は俺たちが普通に言葉を交わせる事実を少しも不思議に思う様子がなかった。
もしやこの千年の間に人間は言語の統一でも成し遂げたのかもしれない。
そうであれば、そもそも他の言語で話している者がいるかもしれないという発想自体がないかもしれない。
「窓から見えるあれは何でしょう? 青々と何かが実っているようですが」
王子が窓の向こうに見える遠くの水田を指し示す。
米を収穫した食糧地から自動的にまた米が生えてきたのだ。
水の量も自動的に上げ下げされているようである。どこから水が入ってきて、どこへと流れていっているのかまったく分からないが管理しなくても勝手に水の量が変わっている。
食糧地とはまことに不思議なものである。秋になればまた米が収穫できるであろう。
「あれが米だ。もう食べたことが?」
「ええ、とても美味でした。あのような変わった畑で育つのですね」
一呼吸置くと、王子は窓の外から視線を外し俺に向き直る。
「実は私がこちらへ伺ったのは、そのオコメのことで話があるからなのです」
おや。
俺に勝手に惚れて勝手に失恋したものと思っていたが、どうやら王子には俺に会う以外の目的があったらしい。
そりゃそうだよな。一国の王子が惚れた腫れたで軽々しく国境を越えないよな。
「実を言うと我がイヨケフスト王国では麦の不作が続いていまして、民が飢えているのです。そこで貴方の国のオコメを大量に我が国に輸入してもらうことが出来れば、民たちが助かります」
優しそうな面差し通り、王子は大変国民想いのようであった。
なるほど、それでわざわざはるばる魔の草原の向こうまで来たということか。
「そういうことか、事情は理解した……喜んで力を貸そう」
「魔王様!?」
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