推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について

あかね

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外出前に

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 来訪者の彼女は今、着替えに行ってもらっている。
 リリーの古い服の中から着れそうなもので悪目立ちしないように揃えてきた。
 必要かと言えば、実はそれほど必要ではない。

 リリーとしては、ディレイと話がしたかっただけだ。
 彼女とも話はするが、事前情報はそれなりに仕入れておきたい。何せ初対面で買い物に行くのだから。

「で、うまくやってるわけ? 放置とかしてない?」

「ほどほどには」

「意外。てっきり、怒られてるかと思ってたのよ。今までも聞いていたし」

 彼について相談されることが多かったのだ。めんどくさい弟分のことだしと一応は話は聞いていたのだが。あまり人と暮らすには向いてない性質をしている。
 普通の時と何かをしているときの落差が激しくて。

 問題がなければ良かったと思ったのだが、ディレイに視線を逸らされた。

「……なにかあったのね?」

「いや、別に。少し、注意されたくらいで」

「なにしたの? いえ、何をしなかったの?」

「少しやめ時を見失って」

 彼はごまかそうとしたのを諦めたようだ。
 リリー以外からも悪い癖だとよく言われていたのだが。

「……治ってないのね。構いなさいって?」

「体に悪いから、食事と休みを取れと」

 なるほど、良い言い方だ。リリーは次からそう言おうと思う。
 ゲイルもその傾向がある。魔動具や呪式を全く弄らないリリーにはわからない感覚なので諦めてもいたが、心配しているは効きそうな気がする。
 それはそれとして。

「逆に心配させるって問題じゃない? うちに引き取ろうかしら。お祖母さまが見つかったら引き取っていい?」

「そのとき考える」

 解答を避ける程度には、気に入っているし、その後の関係についても思うところがあると。
 無意識ではあるだろうが、いつもとは違う気はする。

「良い返事を期待しているわ。故郷についてはなにか言ってる?」

「なにも。今は落ち着いているように見える」

「……そうだといいけど」

 もしなにか、思うところがあってもディレイに言うだろうか。拾われた立場と遠慮しそうな予感がする。

 ならば、自分が少しばかり頼れる相手と認識してもらう方が良い気がした。リリーはそう決めた。

「そういえば、あの格好、ティローにそっくりだったけど真似した? あの子も人見知りの極みみたいなんだけど、まさか、彼女もそうなの?」

 ティローはリリーも中身を見たことは数度しかない兄弟弟子だ。ローブが本体みたいな気持ちでいつも接している。中身は妙齢の女性なのだが、なぜか、男性と勘違いされがちだ。
 同じように人見知りならば少し考えなければいけない。

「違う。前きたとき、顔を確認されることが多くて嫌だったんだよ」

「……まあ、興味はそそるでしょうね。ここら辺で見かけない良いとこのお嬢様風に見えるから」

 さて、嫌だったのはどちらなのだろうか、とはたと疑問に思う。
 顔を出すことに忌避感を彼女から感じなかったから、おそらくはディレイが嫌なんだろう。そのことに思い至る。

「ねぇ、好きなの?」

 リリーの素朴な疑問の答えは聞けなかった。当人が階段を下りてきてしまったのだから。
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