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バトルロワイヤルして♡

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 紙の匂いが風に運ばれ、嗅覚を擽ぐる。

 爽やかな風と匂い。
 気持ちを爽やかにしてくれる筈のもの。
 だが俺の心は気が重い。

 そう思うも、ウダウダしていて何かが好転する訳でもない。
 だから紙を手に取って読んだわけだが……。

 まあ俺が説明するよりも見た方が早い。


『神です、異世界転生ありがとう♡
 君達にはこの異世界で転生者同士のバトルロワイヤルをして貰います。
 殺し合い、殺し愛、殺し哀。
 好きなの選んで♡

 ♡以下ルールを記載するね♡
【ノルマ】一月に最低一人の転生者を殺す。

【期限】死ぬまで。

【報酬】評価に応じて。

【注意】自殺した場合は強制蘇生。

 そういう訳なので頑張ってね。
 勿論ゲームを面白くする為に特別な能力を授けるよ。
 やったね♡

 能力は君達の近くに箱があるから、まずはそれを一枚引いてね。』


 ここで終わっている。

 中途半端にA4紙の半分も使わずに、だ。

 そして書いてある内容。
 たち悪い事この上無い。
 
 転生者同士のバトルロワイヤル。
 一月に最低一人殺すこと。
 期限はクソ。
 報酬は明確化されてない。
 自殺した場合の強制蘇生って、何処までが自殺と見做されるんだ。

 なんだこれ。
 全てを無視して紙を破いて捨て、生きていくために街で情報でも集めたくなる。

 が、こんなことを実行するやつだ。
 変なところに拘ってそうだし、念の為に用心して行動した方がいいか。

 ゲームを面白くする為にクジを一枚引け。
 これに関しては、まあ疑わなくてもいいだろう。

 この神、いや邪神と呼ぶか。
 邪神はあくまでも殺し合いを避けさせず、かつ面白おかしい様を眺めたいようだからな。
 そして紙の内容から考えるに、俺達を直接殺すようなことはない筈。
 この邪神を楽しませるか、内容沿って行動する限りは……。

 何よりも能力を与えると言った。
 こいつがこれから先を生き抜くキーとなるなら、引かなければマズいことになる。
 逆にクジを引くことで転生者に害を与えるとするならば困り物だ。

 それはただの愉快犯か、人格破綻者だ。
 誘拐犯が誘拐した目的とは別のこと被害者を行う。
 そういう奴もいるだろうが、この邪神は超常的な光景を既に幾つか見せている。
 まるで銃を一発撃って見せ、本物であると認識させる様に。

 つまり、俺とまだ見ぬ転生者諸君は銃を突きつけられ、身動き出来ぬよう縄で縛られた状態ってとこか。

 出来ることは隙を窺うか、作り出すか。
 そしてその隙を利用すること。

 そこまで考えて、俺は戸惑わずにクジを引いた。

 紙を左手に持ったまま、右手をクジの穴へ突っ込む。
 ガサゴソと中を漁れば……何もない。

「……」

 ガサゴソと中を漁る。
 隅々まで埃を拭き取るかの様に漁る。

「……」

 …………っ!
 何の成果をも!!
 得られませんでした!!

 あほくさ。

 そう思い手を引き抜こうとすると、俺の手首を誰かに掴まれた・・・・・・・

「っ!!」

 反射的に引き抜こうとするも微動だにしない。
 そして掌に一枚の紙を握らされ、手首から誰かの手が離れていく。

 即座に手を引き抜く。

 気持ち悪い奴。
 邪神自身か……?

 見ると、手の甲がべっとりと濡れている・・・・・

 手を引き抜く間際、掴まれた手首が自由になる一瞬前、確かに手の甲に感じたモノ。
 微かにザラつき、濡れた何か。
 ……まるで味を確かめるようなナニカ。

「くそったれが」

 考えたくもない。

 頭を振り払い、手に無理矢理握らされた紙片を見る。

 三つ折りにされた紙を広げれば、ポケットティッシュ程の大きさになった。
 何か、書かれている。


『二回くじ引きが出来るよ♡』


 ……おい。
 まさか能力とかいうやつ、貰える数は一つじゃないのか。
 しかもその貰える数、クジで決めるのか。

 最大個数が何個か知らねえが、こんなもん運ゲーじゃねぇか。

 いや待て。
 待てよ、落ち着け。

 これまさか邪神自ら紙渡してないよな?
 邪神自ら、紙に数字を書いて渡してるなんて、ないよな?
 まさかとは思うが、人を見て幾つ能力をやるか決めてるとか、ないよな?

「あり得そうだ……」

 思い出したのは、A4紙に書いてあったルール。
 確か、報酬は評価によって決めるとか何とか。

 その評価って何処から何処までが範囲だ?
 いつから始まってるんだ?

 ……もう、始まってるのかもな。

 確認の為にもう一度A4紙を見てみる。

 そこにあった文章。

 ──増えている。

 空き部分に新たな文字が書かれている。
 続きは以下の通りだ。


『クジを引いたね?
 今引いたクジに書かれている通り、今度は二回引いてね♡
 能力が一回につき一つ。
 つまり君は二つの能力が貰えるよ。
 やったね♡

 因みに君の思考はいい線イってるかも♡』


 おちょくってんのか。
 なんとも腹が立つ。

 だがまあ大丈夫。
 こういう奴のペースに乗るのは気に食わねぇし、こういう時の対処法ってのは心得てる。

 自分に言い聞かせて心を落ち着ける。
 簡単な事だ。
 冷静に、毅然とした態度でいればいい。

 一言で言えば『無視』すればいい。
 全てを無視するわけにもいかないが……そこは割り切るしかない。

 俺が今やることは決まってる。
 ならば実行するだけだ。

 二回クジを引く。
 一度目と同じく仮定は同じ。
 誰かに無理矢理に紙を握らされる。

 だが毅然と、クールに、俺はやり遂げた。
 俺すごい。よく頑張った。

 一枚目の紙を開く。

【ブーメランを操る能力(笑)】

 二枚目の紙を開く。

【転生者☆殺戮式☆回復能力】

 よし、邪神ぶっ殺す。


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