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1.プロローグ
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「どうか…この子に幸せを…!」
そろそろ日も落ちかける頃。
誰かがそう言って、スウェルが惰眠をむさぼる大樹の根元へ『何か』を置いていった。
『この子』の時点でそれが何かの想像はつく。
時々、あるんだよね。
やれ、仔牛が産まれただの、やれ今年は麦が豊作だったの。果てはようやく息子に嫁が来ただの。
何かことあるごとに『お礼』と称して、供物を置いて行くのだ。大抵、それらは野生の生き物の糧となる。
ただ、今回はどうも様子が違うらしい。供物として置いていった訳ではなさそうだ。
面倒だな。
正直な感想だった。
そのまま暫く大樹の上に作られた見張り台の上で、肘をつきゴロリと横になっていたが。今にも消えいりそうな泣き声に、このまま無視を決め込む訳にも行かず。
それに放っておけば、泣き止むより先に野生の生き物に喰われるのが落ちだろう。流石にそれは気が引ける。
スウェルはハァと大袈裟なほど深いため息をついた後、身体を起こし、長く垂れる銀糸の髪を億劫そうに肩へと跳ね上げた。仕方なく樹を降りて様子を伺う事にしたのだ。
この樹はかなりの年月を経た大木で。
森の奥、知らねば到達出来ない場所にあるのだが、近隣の村人には代々言い伝えられているらしく、多くはないにしろ、訪れる人が絶えることはなかった。
どうやら、この辺りの守り神と思われているらしい。その為、人々はここへ願い事や感謝をしに訪れるのだ。
エルフは樹の上を好む。特に時を経た大樹は何よりの棲みかで。
この大樹には、人には見えないよう、目に入っても気づかれないよう、ニ、三名が寝られる程の広さの台が上部に築かれていた。
見張りの為だ。森にはごく稀に野蛮な生き物が入り込む事があり。その警戒の為に作られているのだ。
そんな役割を持つ樹なのだが、そこを本来とは違う役割、寝場所のひとつと決め込んでいるスウェルは、人々のそれに遭遇する確率が高かった。
しかし、ただ聞くだけだ。ここに誰もいない時と同じように、ただ静かにしているだけ。
人々は知らずに必死に祈り、時にはお礼に来る。こちらが何かした事はない。勝手に祈って勝手に感謝して。
面白いものだな。人間と言うものは。
大木を降りきると、木の太い根と根の間、守られるようにして粗末な布にくるまれた赤子がいた。すでに置いて行った人の姿はそこにない。
髪は赤茶色。瞳は深いグリーン色。しかし、綺麗な瞳に対して、その瞼は泣きすぎですっかり赤く腫れあがっていた。
ふん。瞳は俺と同じ色か。いや、俺の方が薄いな。
まだ生まれて間もない割には痩せている。
この年頃の赤子は、もっと丸々と太って手足などふくふくしているものだが。
さて?
泣き声も小さかった。ひぃひぃと最後には絞り出すようなかすれ声になっていて。今まで見てきた人の赤子とは明らかにかけ離れている。
きっと栄養が足りていないのだな。
粗末な布にくるまれている所からも、この赤子の育ってきた環境が伺い知れた。貧しい家に生まれて、口減らしに捨てられたのか。
同情の余地はある。
このまま放っておけば、どの道近いうちに命を落とすだろう。
最近、この辺りは不穏な空気に包まれている。人々は国と国との戦いに明け暮れ、その傍ら、人の黒いオーラに触発されたかのように、オークやゴブリンなど、闇に生きる者たちの動きも活発化しているのだ。
ここはエルフの里にも近く、聖域となっている。滅多なことでは質の悪いオークどもはやってこないが、野生動物に襲われるより先、奴らに襲われる可能性もなくはない。
このままって、わけにもな…。
仕方なし、ひーひー泣き続ける赤子を根元から取り上げた。
しかし、その身体の軽さに驚く。
まるで羽毛のように軽い。しかも、両手で持たずとも片手で十分なほど。
生まれた時も未熟な状態で生まれたのだろうか。それでも目鼻口、手足はきちんと人のそれだ。
育てるつもりはさらさらないが、とにかく、今は栄養を与えることの方が先決だろう。
しかし、スウェルは長い生の中で、一度として婚姻したことも、子を持ったことも、育てたこともない。
一時、預かるにしても、何をどうしていいのか全く分からなかった。馬に餌を与えるのとはわけが違う。
さて、どうするか。
そう考えている間にも、次第に泣き声は小さくか細くなっていく。
これは…不味いな。
兎に角、既知の友人の元へ向かう事にした。
赤子など連れて行けば、何時の子だ、誰の子だとはやし立てられるのは目に見えていたが、今はそれどころではない。
「ったく。面倒だな…」
泣きすぎて疲れたのか、はたまた温もりに安堵したのか、寝入ってしまった赤子を腕に抱え、途方に暮れつつもスウェルは友人の元へと向かった。
✢✢✢
スウェルはエルフとしても、まだ年若い方だった。
兄弟は多く、上に男ばかり六人もいる。
森のエルフの王である父と、后である母との仲の良さの結果だろう。
今でも仲睦まじい二人に、また子どもができるのではと噂されるほどだ。自身はその最後の子どもだと信じているが。
「あれ? スウェル、いつ子どもを持ったの? いったい、どちらのお嬢様との子どもなの?」
懇意にしているエルフ、薬師シリオの伴侶であり、助手もしているルフレが、腕の中にいる赤子を認めて、菫色の瞳を意味ありげにきらりと光らせながら声を掛けてきた。
そこにはすでにからかいの色がある。
「そんなんじゃない…。見ればわかるだろう? 人の子だ。俺のねぐら──いや、見張りをしている木の下に人が捨てていったんだ。すぐに人に返すが、その前になにか与えないと死にそうだ。どうしたらいいか、シリオに聞きに来た。奴はいるか?」
「そうなの? あれ、かわいい子。でも確かに痩せすぎだ…。シリオ! シリオ!」
スウェルの腕の中の赤子を覗き込んだあと、肩までの金色の髪を揺らし、急いで石造りの建物の奥へと駆けて行った。
館は白亜の石で出来ていた。その壁や柱には、美しい意匠の彫刻が施され、そこへさまざまな植物の蔦がからみ、また上から垂れ下がっている。それがまるで屋根のようにも見えた。館のほとんどはその蔦の中に埋まっている。
シリオはエルフの薬師だ。かなり腕の立つ薬師であり、彼の薬で治らないものはないと言われている程で。
そんなシリオなら、赤子を一気に太らせる妙薬を知っているのではないかと思ったのだが。
「あぁ、なんだ。スウェルか…。何の用だ?」
奥からルフレと共に姿を現したシリオは、金色の前髪をかき上げながら不機嫌な顔をして見せた。青い目には明らかに不信の色が浮かんでいる。
しかし、スウェルはそんな態度など、気にも留めない。
シリオとは幼馴染だった。
幼い頃、よく連れまわし、無茶に付き合わせたため、今ではすっかり煙たがられている。
「そんな、嫌そうな顔をするな。お前に仕事を持ってきた。この赤子を今すぐ太らせろ」
「はぁ?」
シリオは素っ頓狂な声を上げて、スウェルの腕の中の赤子に目を向けた。そうして、すぐにその腕から赤子を取り上げると、抱え上げ。
「…こりゃあ、薬じゃだめだ。人の乳がいいが、そんなもの、すぐには手に入らない。俺たちが乳代わりにするもので良ければあるが…」
「なんでもいい。すぐ太らせろ。そうしたら、さっさと人里に置いてくる」
「おいおい。そんな簡単に太る訳ないだろう? 幾らお前の父君、エルフの王グリューエン様の力を持ってしても、やせっぽちの人の子を一瞬にしてまるまる太らせることなんて出来やしない。太らせるには時間がかかる。それまではちゃんとお前が面倒を見るんだ。それが看る条件だ」
「はぁ?」
今度はスウェルが声を上げる番だ。
「冗談じゃない! そんな赤子がいたら、おちおち遊びにもでかけられんだろ? 今夜も約束があるんだ…。せっかく頑張って落とした娘と初デートだ。甘い夜を過ごすんだ。彼女も首を長くして待ってる。行かないと男が廃れ──」
「ああ、はいはい。あなたはそういう軽薄で薄情なエルフですものね?」
横で聞いていたルフレは、シリオの手から赤子を取り上げ大事そうに抱えると、館の中へと連れていく。
スウェルは、ああもうっ! と半ば癇癪を起して、銀色の髪をくしゃくしゃにかき回し、そのあとを追った。
✢✢✢
「流石、王家の末っ子、甘ったれ王子様。やりたい放題、あちこちの娘に手を出しては、それはそれは充実した日々をお過ごしのことでしょう。では、今夜も逢引きにいってらっしゃいませ。そうして、その間にこの子が短い生涯を終えた所で、あなたの胸はひとつも痛まないのでしょうね? 流石、王家の放蕩息子。遠方に放逐されることだけはありますね?」
すべて言い切ると、ルフレは冷えに冷え切った目をスウェルに向ける。
その言いように、暫くスウェルは口をぱくぱくさせていたが。はたと我に返り、ついてきたシリルに向けて。
「シリル! お前の伴侶はなに様だ? 俺をそこまで貶める権利があるのか? しつけはどうなってる?」
しかし、ルフレの言葉はいちいち、スウェルの胸に突き刺さった。その通りだからだ。
スウェルがあちこちの娘に手を出しているのは有名な話で、時にはそれが女性同士の諍いの種になったりもする。
父である森のエルフの王グリューエンは、さすがに見過ごすことができず、罰を与える代わりに、末の息子を遠方の警備の長に充てたのだ。
長と言っても実質、指揮を執るのはその下の優秀な部下達で。
長であるスウェルは日々、件の大樹の見張り台で惰眠を貪り、飽きれば見目麗しい娘の部屋を訪れ、そこで事に及んでいるのだ。
シリルは苦笑しつつ。
「俺もしつけられている口だ。ルフレは赤子を心配しているだけさ。拾ったのなら、最後まで責任を持てとな。当然のことだ」
「…信じられん。俺が王だったら、即座にそんな口などきけないよう、封じてやるところだ」
それを耳にしたルフレは、わざと大きな声で。
「ああ、良かった! あなたのような人が王にならなくて。さぞ、酷い暴君となったことでしょう。きっと、自分に都合の悪いことを口にするものは、端から全て処罰したでしょうから。優秀な兄上たちがいらっしゃって、本当に良かった!」
「おい! シリル! こいつの口の悪さをなんとかしろ!」
「…仕方ない。本当の事だ」
笑うシリルに、スウェルは苦虫を噛みつぶした様な顔になるが。
ルフレは言いながらも、赤子を柔らかなソファの上に一旦おくと、大理石のテーブルにたらいをのせ、その中に沸かしてあったお湯を移し、赤子に丁度いい適温にする。
ちなみに、エルフの声音は耳に心地よいらしく、幾らルフレが大きな声を出しても気にならない様だった。
「何をする気だ?」
スウェルが不審気に見やれば。
「湯あみです。こんなに薄汚れて…。このままじゃ、病気になってしまう。身体もすっかり冷え切っていますし。兎に角綺麗にすることが先です!」
と、赤子に巻かれていた粗末な布を取り去った。と、ルフレがあっと声を上げる。すぐにシリルが反応した。
「どうした?」
「…こんなものが」
赤子に巻かれていた布を取り去ると、中から厳重に皮で巻かれた棒状のものが出てきたのだ。
ルフレからそれを受け取ったシリルが慎重に、棒に巻かれたそれをほどくと、中から一振りの剣が現れた。
ナイフに近い大きさで、長さは二十センチほど。片刃で象牙でできた柄には、美しい竜の彫り物と赤い宝石が埋め込まれていた。
「…これは、スプレンドーレ家の紋章…」
見事な竜が一匹、赤い石を抱くように掘られている。良く見れば刃にも同じように龍の絵柄が彫り込まれていた。
スプレンドーレ家とは、この地方を治めるセルサスの王家の名だった。
大陸の北方よりを守る国でかなりの強国だったが、ここ最近、各国の諍いに巻き込まれ、自国を守り、周囲を治めるのに手を焼いている。
「なんだ? こんな死にぞこないの赤子が関係しているとでも?」
「そんな言い方、止めてください! ほんっと、優しさの欠片もないんですから。あなたに愛される女性が可哀そうでなりません」
言いながら、ルフレは剣はシリルに任せ、赤子をそっと優しい手つきで洗っていく。いつの間にか目覚めた赤子はルフレの手の中でここち良さげにしていた。
シリルは顎に手をあてながら。
「…これは、王家につながるものを意味しているんじゃ…。もしかしたら、この子は王族に関係しているんじゃないか?」
「だが、木の根元に捨てるくらいだぞ。そんなはずないだろう? しかもこんなやせっぽちで。王族の子どもをそんな目に遭わすか? 何処かで拾ったんじゃないのか? で、せめてもと、子どもの産着に潜ませた…」
「しかし、拾ったにしては…。この子を置いていった主は見なかったのか?」
「いや…。俺もすぐには下りて行かなかったからな…」
「どうせ暫く放っていたのでしょう? 可哀そうに…。だって、声も枯れています。きっと沢山、泣いたんでしょうね?」
ルフレはよしよしと言いながら、温まって軽く赤くなった頬を撫でた。
「…うっ」
まさにその通りで。スウェルは反論もできない。そんなスウェルの肩をシリルは叩くと。
「お前は忙しいだろう? 今晩はここで面倒を見よう。明日からしっかり面倒を見てやってくれ。今からきっちり面倒の見方をルフレから教わってな?」
しかし、スウェルは奮起すると。
「いいや…。今日から面倒をみるぞ! みてやるとも! 俺が無慈悲で冷血なエルフじゃないと証明してみせる! こんな赤子、すぐに手玉にとってやるさ!」
「…スウェル。この子はお前の付き合う女性とは違うんだ。手玉にとるんじゃない。面倒をみるんだ」
呆れたようにシリルが口にした。
✢✢✢
その後、ルフレからこと細かに世話の仕方を教え込まれ、なんとか一通り出来るまでになると、漸くルフレは赤子を託す許可を出した。
ルフレは赤子を抱いたスウェルの背をぴしゃりと叩き。
「いいですか? どうしてもダメな時はすぐに私を呼んでください。手遅れになってからじゃ遅いですからね? ひとつでも手を抜いたら、この子は命を落としますよ? よく、肝に銘じておいてくださいね。まあ、あなたには優秀な従者がついていますから、きっと大丈夫でしょうけど…」
「俺をみくびるな。従者の手など借りない! 完璧に面倒を見てやるさ。俺はできる男だ!」
見返してやるとばかりに胸を張って見せれば。
「その自信が心配なんです。ああ、でもシリルがいいと言うのなら、信じましょう…」
いつまでも不安がるルフレに、そろそろ許可をと、提案したのはシリルだったのだ。
「そうさ。スウェルはこう見えて、案外面倒見がいい。いい経験にもなるだろう。さあ、もう夜も遅い。早く帰って休ませてやるといい。──ああ、あと、名前は忘れずにつけてやるんだぞ?」
「けど、すぐに手放すんだぞ? 名前なんて必要ないだろう?」
「少しの間でも必要だ。太るのには数か月かかる。彼もひとりの人間だからな? ただの可哀そうな赤ん坊じゃない」
「わかった、わかった。何か考える…」
「あ! ポチとかタマとか、安易なのは止めてくださいよ!」
ルフレが慌てて付け足した。
「…分かってると言ってる」
どこまでもスウェルを信用しないルフレだった。
そろそろ日も落ちかける頃。
誰かがそう言って、スウェルが惰眠をむさぼる大樹の根元へ『何か』を置いていった。
『この子』の時点でそれが何かの想像はつく。
時々、あるんだよね。
やれ、仔牛が産まれただの、やれ今年は麦が豊作だったの。果てはようやく息子に嫁が来ただの。
何かことあるごとに『お礼』と称して、供物を置いて行くのだ。大抵、それらは野生の生き物の糧となる。
ただ、今回はどうも様子が違うらしい。供物として置いていった訳ではなさそうだ。
面倒だな。
正直な感想だった。
そのまま暫く大樹の上に作られた見張り台の上で、肘をつきゴロリと横になっていたが。今にも消えいりそうな泣き声に、このまま無視を決め込む訳にも行かず。
それに放っておけば、泣き止むより先に野生の生き物に喰われるのが落ちだろう。流石にそれは気が引ける。
スウェルはハァと大袈裟なほど深いため息をついた後、身体を起こし、長く垂れる銀糸の髪を億劫そうに肩へと跳ね上げた。仕方なく樹を降りて様子を伺う事にしたのだ。
この樹はかなりの年月を経た大木で。
森の奥、知らねば到達出来ない場所にあるのだが、近隣の村人には代々言い伝えられているらしく、多くはないにしろ、訪れる人が絶えることはなかった。
どうやら、この辺りの守り神と思われているらしい。その為、人々はここへ願い事や感謝をしに訪れるのだ。
エルフは樹の上を好む。特に時を経た大樹は何よりの棲みかで。
この大樹には、人には見えないよう、目に入っても気づかれないよう、ニ、三名が寝られる程の広さの台が上部に築かれていた。
見張りの為だ。森にはごく稀に野蛮な生き物が入り込む事があり。その警戒の為に作られているのだ。
そんな役割を持つ樹なのだが、そこを本来とは違う役割、寝場所のひとつと決め込んでいるスウェルは、人々のそれに遭遇する確率が高かった。
しかし、ただ聞くだけだ。ここに誰もいない時と同じように、ただ静かにしているだけ。
人々は知らずに必死に祈り、時にはお礼に来る。こちらが何かした事はない。勝手に祈って勝手に感謝して。
面白いものだな。人間と言うものは。
大木を降りきると、木の太い根と根の間、守られるようにして粗末な布にくるまれた赤子がいた。すでに置いて行った人の姿はそこにない。
髪は赤茶色。瞳は深いグリーン色。しかし、綺麗な瞳に対して、その瞼は泣きすぎですっかり赤く腫れあがっていた。
ふん。瞳は俺と同じ色か。いや、俺の方が薄いな。
まだ生まれて間もない割には痩せている。
この年頃の赤子は、もっと丸々と太って手足などふくふくしているものだが。
さて?
泣き声も小さかった。ひぃひぃと最後には絞り出すようなかすれ声になっていて。今まで見てきた人の赤子とは明らかにかけ離れている。
きっと栄養が足りていないのだな。
粗末な布にくるまれている所からも、この赤子の育ってきた環境が伺い知れた。貧しい家に生まれて、口減らしに捨てられたのか。
同情の余地はある。
このまま放っておけば、どの道近いうちに命を落とすだろう。
最近、この辺りは不穏な空気に包まれている。人々は国と国との戦いに明け暮れ、その傍ら、人の黒いオーラに触発されたかのように、オークやゴブリンなど、闇に生きる者たちの動きも活発化しているのだ。
ここはエルフの里にも近く、聖域となっている。滅多なことでは質の悪いオークどもはやってこないが、野生動物に襲われるより先、奴らに襲われる可能性もなくはない。
このままって、わけにもな…。
仕方なし、ひーひー泣き続ける赤子を根元から取り上げた。
しかし、その身体の軽さに驚く。
まるで羽毛のように軽い。しかも、両手で持たずとも片手で十分なほど。
生まれた時も未熟な状態で生まれたのだろうか。それでも目鼻口、手足はきちんと人のそれだ。
育てるつもりはさらさらないが、とにかく、今は栄養を与えることの方が先決だろう。
しかし、スウェルは長い生の中で、一度として婚姻したことも、子を持ったことも、育てたこともない。
一時、預かるにしても、何をどうしていいのか全く分からなかった。馬に餌を与えるのとはわけが違う。
さて、どうするか。
そう考えている間にも、次第に泣き声は小さくか細くなっていく。
これは…不味いな。
兎に角、既知の友人の元へ向かう事にした。
赤子など連れて行けば、何時の子だ、誰の子だとはやし立てられるのは目に見えていたが、今はそれどころではない。
「ったく。面倒だな…」
泣きすぎて疲れたのか、はたまた温もりに安堵したのか、寝入ってしまった赤子を腕に抱え、途方に暮れつつもスウェルは友人の元へと向かった。
✢✢✢
スウェルはエルフとしても、まだ年若い方だった。
兄弟は多く、上に男ばかり六人もいる。
森のエルフの王である父と、后である母との仲の良さの結果だろう。
今でも仲睦まじい二人に、また子どもができるのではと噂されるほどだ。自身はその最後の子どもだと信じているが。
「あれ? スウェル、いつ子どもを持ったの? いったい、どちらのお嬢様との子どもなの?」
懇意にしているエルフ、薬師シリオの伴侶であり、助手もしているルフレが、腕の中にいる赤子を認めて、菫色の瞳を意味ありげにきらりと光らせながら声を掛けてきた。
そこにはすでにからかいの色がある。
「そんなんじゃない…。見ればわかるだろう? 人の子だ。俺のねぐら──いや、見張りをしている木の下に人が捨てていったんだ。すぐに人に返すが、その前になにか与えないと死にそうだ。どうしたらいいか、シリオに聞きに来た。奴はいるか?」
「そうなの? あれ、かわいい子。でも確かに痩せすぎだ…。シリオ! シリオ!」
スウェルの腕の中の赤子を覗き込んだあと、肩までの金色の髪を揺らし、急いで石造りの建物の奥へと駆けて行った。
館は白亜の石で出来ていた。その壁や柱には、美しい意匠の彫刻が施され、そこへさまざまな植物の蔦がからみ、また上から垂れ下がっている。それがまるで屋根のようにも見えた。館のほとんどはその蔦の中に埋まっている。
シリオはエルフの薬師だ。かなり腕の立つ薬師であり、彼の薬で治らないものはないと言われている程で。
そんなシリオなら、赤子を一気に太らせる妙薬を知っているのではないかと思ったのだが。
「あぁ、なんだ。スウェルか…。何の用だ?」
奥からルフレと共に姿を現したシリオは、金色の前髪をかき上げながら不機嫌な顔をして見せた。青い目には明らかに不信の色が浮かんでいる。
しかし、スウェルはそんな態度など、気にも留めない。
シリオとは幼馴染だった。
幼い頃、よく連れまわし、無茶に付き合わせたため、今ではすっかり煙たがられている。
「そんな、嫌そうな顔をするな。お前に仕事を持ってきた。この赤子を今すぐ太らせろ」
「はぁ?」
シリオは素っ頓狂な声を上げて、スウェルの腕の中の赤子に目を向けた。そうして、すぐにその腕から赤子を取り上げると、抱え上げ。
「…こりゃあ、薬じゃだめだ。人の乳がいいが、そんなもの、すぐには手に入らない。俺たちが乳代わりにするもので良ければあるが…」
「なんでもいい。すぐ太らせろ。そうしたら、さっさと人里に置いてくる」
「おいおい。そんな簡単に太る訳ないだろう? 幾らお前の父君、エルフの王グリューエン様の力を持ってしても、やせっぽちの人の子を一瞬にしてまるまる太らせることなんて出来やしない。太らせるには時間がかかる。それまではちゃんとお前が面倒を見るんだ。それが看る条件だ」
「はぁ?」
今度はスウェルが声を上げる番だ。
「冗談じゃない! そんな赤子がいたら、おちおち遊びにもでかけられんだろ? 今夜も約束があるんだ…。せっかく頑張って落とした娘と初デートだ。甘い夜を過ごすんだ。彼女も首を長くして待ってる。行かないと男が廃れ──」
「ああ、はいはい。あなたはそういう軽薄で薄情なエルフですものね?」
横で聞いていたルフレは、シリオの手から赤子を取り上げ大事そうに抱えると、館の中へと連れていく。
スウェルは、ああもうっ! と半ば癇癪を起して、銀色の髪をくしゃくしゃにかき回し、そのあとを追った。
✢✢✢
「流石、王家の末っ子、甘ったれ王子様。やりたい放題、あちこちの娘に手を出しては、それはそれは充実した日々をお過ごしのことでしょう。では、今夜も逢引きにいってらっしゃいませ。そうして、その間にこの子が短い生涯を終えた所で、あなたの胸はひとつも痛まないのでしょうね? 流石、王家の放蕩息子。遠方に放逐されることだけはありますね?」
すべて言い切ると、ルフレは冷えに冷え切った目をスウェルに向ける。
その言いように、暫くスウェルは口をぱくぱくさせていたが。はたと我に返り、ついてきたシリルに向けて。
「シリル! お前の伴侶はなに様だ? 俺をそこまで貶める権利があるのか? しつけはどうなってる?」
しかし、ルフレの言葉はいちいち、スウェルの胸に突き刺さった。その通りだからだ。
スウェルがあちこちの娘に手を出しているのは有名な話で、時にはそれが女性同士の諍いの種になったりもする。
父である森のエルフの王グリューエンは、さすがに見過ごすことができず、罰を与える代わりに、末の息子を遠方の警備の長に充てたのだ。
長と言っても実質、指揮を執るのはその下の優秀な部下達で。
長であるスウェルは日々、件の大樹の見張り台で惰眠を貪り、飽きれば見目麗しい娘の部屋を訪れ、そこで事に及んでいるのだ。
シリルは苦笑しつつ。
「俺もしつけられている口だ。ルフレは赤子を心配しているだけさ。拾ったのなら、最後まで責任を持てとな。当然のことだ」
「…信じられん。俺が王だったら、即座にそんな口などきけないよう、封じてやるところだ」
それを耳にしたルフレは、わざと大きな声で。
「ああ、良かった! あなたのような人が王にならなくて。さぞ、酷い暴君となったことでしょう。きっと、自分に都合の悪いことを口にするものは、端から全て処罰したでしょうから。優秀な兄上たちがいらっしゃって、本当に良かった!」
「おい! シリル! こいつの口の悪さをなんとかしろ!」
「…仕方ない。本当の事だ」
笑うシリルに、スウェルは苦虫を噛みつぶした様な顔になるが。
ルフレは言いながらも、赤子を柔らかなソファの上に一旦おくと、大理石のテーブルにたらいをのせ、その中に沸かしてあったお湯を移し、赤子に丁度いい適温にする。
ちなみに、エルフの声音は耳に心地よいらしく、幾らルフレが大きな声を出しても気にならない様だった。
「何をする気だ?」
スウェルが不審気に見やれば。
「湯あみです。こんなに薄汚れて…。このままじゃ、病気になってしまう。身体もすっかり冷え切っていますし。兎に角綺麗にすることが先です!」
と、赤子に巻かれていた粗末な布を取り去った。と、ルフレがあっと声を上げる。すぐにシリルが反応した。
「どうした?」
「…こんなものが」
赤子に巻かれていた布を取り去ると、中から厳重に皮で巻かれた棒状のものが出てきたのだ。
ルフレからそれを受け取ったシリルが慎重に、棒に巻かれたそれをほどくと、中から一振りの剣が現れた。
ナイフに近い大きさで、長さは二十センチほど。片刃で象牙でできた柄には、美しい竜の彫り物と赤い宝石が埋め込まれていた。
「…これは、スプレンドーレ家の紋章…」
見事な竜が一匹、赤い石を抱くように掘られている。良く見れば刃にも同じように龍の絵柄が彫り込まれていた。
スプレンドーレ家とは、この地方を治めるセルサスの王家の名だった。
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「なんだ? こんな死にぞこないの赤子が関係しているとでも?」
「そんな言い方、止めてください! ほんっと、優しさの欠片もないんですから。あなたに愛される女性が可哀そうでなりません」
言いながら、ルフレは剣はシリルに任せ、赤子をそっと優しい手つきで洗っていく。いつの間にか目覚めた赤子はルフレの手の中でここち良さげにしていた。
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「だが、木の根元に捨てるくらいだぞ。そんなはずないだろう? しかもこんなやせっぽちで。王族の子どもをそんな目に遭わすか? 何処かで拾ったんじゃないのか? で、せめてもと、子どもの産着に潜ませた…」
「しかし、拾ったにしては…。この子を置いていった主は見なかったのか?」
「いや…。俺もすぐには下りて行かなかったからな…」
「どうせ暫く放っていたのでしょう? 可哀そうに…。だって、声も枯れています。きっと沢山、泣いたんでしょうね?」
ルフレはよしよしと言いながら、温まって軽く赤くなった頬を撫でた。
「…うっ」
まさにその通りで。スウェルは反論もできない。そんなスウェルの肩をシリルは叩くと。
「お前は忙しいだろう? 今晩はここで面倒を見よう。明日からしっかり面倒を見てやってくれ。今からきっちり面倒の見方をルフレから教わってな?」
しかし、スウェルは奮起すると。
「いいや…。今日から面倒をみるぞ! みてやるとも! 俺が無慈悲で冷血なエルフじゃないと証明してみせる! こんな赤子、すぐに手玉にとってやるさ!」
「…スウェル。この子はお前の付き合う女性とは違うんだ。手玉にとるんじゃない。面倒をみるんだ」
呆れたようにシリルが口にした。
✢✢✢
その後、ルフレからこと細かに世話の仕方を教え込まれ、なんとか一通り出来るまでになると、漸くルフレは赤子を託す許可を出した。
ルフレは赤子を抱いたスウェルの背をぴしゃりと叩き。
「いいですか? どうしてもダメな時はすぐに私を呼んでください。手遅れになってからじゃ遅いですからね? ひとつでも手を抜いたら、この子は命を落としますよ? よく、肝に銘じておいてくださいね。まあ、あなたには優秀な従者がついていますから、きっと大丈夫でしょうけど…」
「俺をみくびるな。従者の手など借りない! 完璧に面倒を見てやるさ。俺はできる男だ!」
見返してやるとばかりに胸を張って見せれば。
「その自信が心配なんです。ああ、でもシリルがいいと言うのなら、信じましょう…」
いつまでも不安がるルフレに、そろそろ許可をと、提案したのはシリルだったのだ。
「そうさ。スウェルはこう見えて、案外面倒見がいい。いい経験にもなるだろう。さあ、もう夜も遅い。早く帰って休ませてやるといい。──ああ、あと、名前は忘れずにつけてやるんだぞ?」
「けど、すぐに手放すんだぞ? 名前なんて必要ないだろう?」
「少しの間でも必要だ。太るのには数か月かかる。彼もひとりの人間だからな? ただの可哀そうな赤ん坊じゃない」
「わかった、わかった。何か考える…」
「あ! ポチとかタマとか、安易なのは止めてくださいよ!」
ルフレが慌てて付け足した。
「…分かってると言ってる」
どこまでもスウェルを信用しないルフレだった。
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今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
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※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
転生DKは、オーガさんのお気に入り~姉の婚約者に嫁ぐことになったんだが、こんなに溺愛されるとは聞いてない!~
トモモト ヨシユキ
BL
魔物の国との和議の証に結ばれた公爵家同士の婚約。だが、婚約することになった姉が拒んだため6男のシャル(俺)が代わりに婚約することになった。
突然、オーガ(鬼)の嫁になることがきまった俺は、ショックで前世を思い出す。
有名進学校に通うDKだった俺は、前世の知識と根性で自分の身を守るための剣と魔法の鍛練を始める。
約束の10年後。
俺は、人類最強の魔法剣士になっていた。
どこからでもかかってこいや!
と思っていたら、婚約者のオーガ公爵は、全くの塩対応で。
そんなある日、魔王国のバーティーで絡んできた魔物を俺は、こてんぱんにのしてやったんだが、それ以来、旦那様の様子が変?
急に花とか贈ってきたり、デートに誘われたり。
慣れない溺愛にこっちまで調子が狂うし!
このまま、俺は、絆されてしまうのか!?
カイタ、エブリスタにも掲載しています。
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
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