17 / 49
2.デュラはんと機械の国の狂乱のお姫様
僕とデュラはんはカレルギア帝国に向かった。
しおりを挟む
キウィタス村はマジカ・フェルムと呼ばれる少し特殊な大きな島に存在する。
首になったデュラハンたちは世界中を飛び回ったと言うけれど、その世界っていうのはこの広い世界の全てじゃない。デュラハンたちの体が動き回っていたのはとても広い範囲だけどこの大きな島の範囲内。海岸線の内側。
「でも聞いてる範囲、めっちゃ広そうやったよ」
「うん。ここはものすごく大きな島なんだよ。そこが多分デュラはんたちが行動できる範囲内」
「行動?」
「そう。島より外には多分出ていけない。だからあの子たちがいう世界っていう表現は間違ってはないのかも」
「ボニたんはちゃうん?」
この世界は色々と複雑且つシンプルに絡み合っている。
魔女様と呼ばれる存在がこの世界の魔力を監理し、その運行を司っている。だけどそういった世界の真理についてはこの国の普通の人にはほとんど知られていない。ここが他と比べても特殊な場所で大きな島だということも、その外に世界があることも知られていない。
僕は教会にいたから辛うじて知ることができただけ。
「僕は人種だから島の外に出ても大丈夫だけど……てなんでそんなに驚いてるのさ」
「いやてっきりボニたんはエルフかなんかやと思てて」
「なんで!」
何故僕がエルフに間違えられるんだろう。エルフの特徴なんて持ち合わせていないと思うのだけど。
まあ気を取り直して。
それでこのマジカ・フェルムは5人の魔女がそれぞれ担当領域を受け持って協力統治している。
僕らの住んでいる村やコラプティオは同じ魔女様が統治する領域だけれどもこれから行くカレルギア帝国は異なる魔女様の領域だ。僕らの住んでいる領域は森や緑が溢れているけれど、カレルギア帝国に緑は少なく砂や土に覆われた黄色と赤の特殊な領域だって央協会で学んだ。
同じこの島の中といってもずいぶん遠くて、だいぶん違う。
「その魔女いうんが違うとなんか違うん?」
「魔女様は世界を巡る魔力を管理しているんだ。魔力が世界の変なところに溜まりすぎたり枯渇しすぎたりしないように調整しているの。そうしないと災害とかが起きちゃうんだって。それで簡単に言うとカレルギア帝国は魔力がほとんどない地域、と認識してればいいんだと思う」
「ふうん? けど俺は魔法使えんで? 関係ないんとちゃう?」
「それは多分逆で」
デュラハンというのは妖精だ。妖精は精霊と似た性質を持っていて、魔力をその本質としている。
簡単にいうと精霊は魔力の塊で、妖精というのはその精霊が肉をまとったもの。その中身はだいたい魔力で満ちているはずなんだ。つまり肉の体を持っているように見えても本質的には魔力に親和性が強くて魔力で動いている……はず。だから魔力がないと存在できない。
だからあの子たちはカレルギア帝国の噂は聞いていても、誰も死を告げにいくどころか帝国内に立ち入ったことすらないようだった。どこかで噂を聞いただけ。
「噂を聞いただけで入ったことがないのっておかしいと思わない?」
「お仕事なかったんちゃう?」
「ううん、多分デュラハン、というか妖精は入れないんだよ。教会みたいに」
「俺、教会入れるよ?」
「そこがわからないんだよねぇ本当に。でも僕が習った話ではそうなんだ。魔力がないと動けなくなるはず」
「え、それ俺ヤバいんちゃう?」
「でもまぁ僕が習った話では聖水でデュラハンは弱体化するのに全然しないしねぇ」
「聖水めっちゃ気持ちええで」
本当にデュラはんはいつも企画外。あの子たちもそうだけど、他の世界から来たと言うのが関係あるのかなぁ。
でもこれから行くカレルギア帝国は魔力が少ない。いわばご飯がないようなもの。デュラはんは食べ物を食べていないから、恐らく純粋に、というか無意識に大気中から魔力を吸収して魔力で動いているんじゃないのかな。
カレルギア帝国の領域でも魔力はほんの僅かにはあるそうだからすぐに死んだり消滅したりはしないだろうけど動けなくなったりする可能性はある。
それもあって止めようって言ったのに誰も話を聞いてくれなかったじゃん。
『みなさま。間も無く『灰色と熱い鉱石』の魔女様の領域に入ります。魔道具をお使いの方は一旦その使用をお止めください』
馬車が停車してアナウンスが流れる。
僕らはカレルギア方面行きの乗合馬車に乗ってちょうど13日目。今その問題のカレルギア帝国のある魔女様の領域に入るところ。
領域を超える時に魔力の性質が変わることがあるそうだ。
魔力の管理者が変わるからだといわれていて、その場合、魔道具を使い続けていると不具合が出ることがあると聞く。異世界人は『旅先で急に電圧がかわって電化製品が壊れる現象』って言うそうだ。デュラはんもなるほど? と言っていたけどよくわかっていなさそう。僕もだけど。
車内にガサガサと荷物を改める音が溢れた。
魔力の変質の影響は人にも現れるらしく、先輩に聞いた話だとちょっとクラッとして空気の匂いが変わるのが一瞬だけわかるとか。
僕も領域を越えるのは初めてのことでちょっとだけ緊張していた。
デュラはんもドキドキしているのかカバンの中でふらふら左右を見渡している。もし動けなくなったら次の停車場で降りて引き返そう。
そして再び馬車は領域境界に向けて進み出した。
首になったデュラハンたちは世界中を飛び回ったと言うけれど、その世界っていうのはこの広い世界の全てじゃない。デュラハンたちの体が動き回っていたのはとても広い範囲だけどこの大きな島の範囲内。海岸線の内側。
「でも聞いてる範囲、めっちゃ広そうやったよ」
「うん。ここはものすごく大きな島なんだよ。そこが多分デュラはんたちが行動できる範囲内」
「行動?」
「そう。島より外には多分出ていけない。だからあの子たちがいう世界っていう表現は間違ってはないのかも」
「ボニたんはちゃうん?」
この世界は色々と複雑且つシンプルに絡み合っている。
魔女様と呼ばれる存在がこの世界の魔力を監理し、その運行を司っている。だけどそういった世界の真理についてはこの国の普通の人にはほとんど知られていない。ここが他と比べても特殊な場所で大きな島だということも、その外に世界があることも知られていない。
僕は教会にいたから辛うじて知ることができただけ。
「僕は人種だから島の外に出ても大丈夫だけど……てなんでそんなに驚いてるのさ」
「いやてっきりボニたんはエルフかなんかやと思てて」
「なんで!」
何故僕がエルフに間違えられるんだろう。エルフの特徴なんて持ち合わせていないと思うのだけど。
まあ気を取り直して。
それでこのマジカ・フェルムは5人の魔女がそれぞれ担当領域を受け持って協力統治している。
僕らの住んでいる村やコラプティオは同じ魔女様が統治する領域だけれどもこれから行くカレルギア帝国は異なる魔女様の領域だ。僕らの住んでいる領域は森や緑が溢れているけれど、カレルギア帝国に緑は少なく砂や土に覆われた黄色と赤の特殊な領域だって央協会で学んだ。
同じこの島の中といってもずいぶん遠くて、だいぶん違う。
「その魔女いうんが違うとなんか違うん?」
「魔女様は世界を巡る魔力を管理しているんだ。魔力が世界の変なところに溜まりすぎたり枯渇しすぎたりしないように調整しているの。そうしないと災害とかが起きちゃうんだって。それで簡単に言うとカレルギア帝国は魔力がほとんどない地域、と認識してればいいんだと思う」
「ふうん? けど俺は魔法使えんで? 関係ないんとちゃう?」
「それは多分逆で」
デュラハンというのは妖精だ。妖精は精霊と似た性質を持っていて、魔力をその本質としている。
簡単にいうと精霊は魔力の塊で、妖精というのはその精霊が肉をまとったもの。その中身はだいたい魔力で満ちているはずなんだ。つまり肉の体を持っているように見えても本質的には魔力に親和性が強くて魔力で動いている……はず。だから魔力がないと存在できない。
だからあの子たちはカレルギア帝国の噂は聞いていても、誰も死を告げにいくどころか帝国内に立ち入ったことすらないようだった。どこかで噂を聞いただけ。
「噂を聞いただけで入ったことがないのっておかしいと思わない?」
「お仕事なかったんちゃう?」
「ううん、多分デュラハン、というか妖精は入れないんだよ。教会みたいに」
「俺、教会入れるよ?」
「そこがわからないんだよねぇ本当に。でも僕が習った話ではそうなんだ。魔力がないと動けなくなるはず」
「え、それ俺ヤバいんちゃう?」
「でもまぁ僕が習った話では聖水でデュラハンは弱体化するのに全然しないしねぇ」
「聖水めっちゃ気持ちええで」
本当にデュラはんはいつも企画外。あの子たちもそうだけど、他の世界から来たと言うのが関係あるのかなぁ。
でもこれから行くカレルギア帝国は魔力が少ない。いわばご飯がないようなもの。デュラはんは食べ物を食べていないから、恐らく純粋に、というか無意識に大気中から魔力を吸収して魔力で動いているんじゃないのかな。
カレルギア帝国の領域でも魔力はほんの僅かにはあるそうだからすぐに死んだり消滅したりはしないだろうけど動けなくなったりする可能性はある。
それもあって止めようって言ったのに誰も話を聞いてくれなかったじゃん。
『みなさま。間も無く『灰色と熱い鉱石』の魔女様の領域に入ります。魔道具をお使いの方は一旦その使用をお止めください』
馬車が停車してアナウンスが流れる。
僕らはカレルギア方面行きの乗合馬車に乗ってちょうど13日目。今その問題のカレルギア帝国のある魔女様の領域に入るところ。
領域を超える時に魔力の性質が変わることがあるそうだ。
魔力の管理者が変わるからだといわれていて、その場合、魔道具を使い続けていると不具合が出ることがあると聞く。異世界人は『旅先で急に電圧がかわって電化製品が壊れる現象』って言うそうだ。デュラはんもなるほど? と言っていたけどよくわかっていなさそう。僕もだけど。
車内にガサガサと荷物を改める音が溢れた。
魔力の変質の影響は人にも現れるらしく、先輩に聞いた話だとちょっとクラッとして空気の匂いが変わるのが一瞬だけわかるとか。
僕も領域を越えるのは初めてのことでちょっとだけ緊張していた。
デュラはんもドキドキしているのかカバンの中でふらふら左右を見渡している。もし動けなくなったら次の停車場で降りて引き返そう。
そして再び馬車は領域境界に向けて進み出した。
0
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる