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第4話
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そんなことをすっかり慮外においていた10日ほど後、またぱちんぱちんと音がした。
さわやかな早朝、見下ろすと、いつのまにやらうっすらと雪がつもっていた。
その中で小さな足跡をつけながら、くだんのモモンガがきょろきょろとまわりを見渡していた。
「かみさまかみさま。おれいにきました。すこしけがはえました」
よく見ると、たしかに少しだけ毛は増えているようだった。
ただ、思ったより少ないな。
見るともなく見ていると、小さな手で何か栗色のものを差し出した。
「かみさまですから、かみがいいとおもって、おれいにもってきました。はやしていただいた毛です」
わしは神様ではあっても髪様ではないのだが。
願った毛を自分で抜いてどうする。
しかしその表情はひどく満足そうでもあった。
成長したオスのモモンガは頭のてっぺんの毛が抜けるのは世界のきまりでもある。
これはこれでうまくおさまったのかもしれない。
まぁ、よきかな、よきかな。
それから、その小さなモモンガの寿命がつきるまで、ほこらには季節のかわりめに栗色の毛がささげられた。
さわやかな早朝、見下ろすと、いつのまにやらうっすらと雪がつもっていた。
その中で小さな足跡をつけながら、くだんのモモンガがきょろきょろとまわりを見渡していた。
「かみさまかみさま。おれいにきました。すこしけがはえました」
よく見ると、たしかに少しだけ毛は増えているようだった。
ただ、思ったより少ないな。
見るともなく見ていると、小さな手で何か栗色のものを差し出した。
「かみさまですから、かみがいいとおもって、おれいにもってきました。はやしていただいた毛です」
わしは神様ではあっても髪様ではないのだが。
願った毛を自分で抜いてどうする。
しかしその表情はひどく満足そうでもあった。
成長したオスのモモンガは頭のてっぺんの毛が抜けるのは世界のきまりでもある。
これはこれでうまくおさまったのかもしれない。
まぁ、よきかな、よきかな。
それから、その小さなモモンガの寿命がつきるまで、ほこらには季節のかわりめに栗色の毛がささげられた。
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