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第11話
アレン様の言う通りに屋敷の裏手から木立の隙間を通っていく。
一応、運動用の軽装に着替えてきたけど、時々木の枝に引っ掛かってしまう。
アレン様が言っていた群生地なんてものが本当にあるのか、若干の疑念を抱きながら進んでいく。
(まあ野花だから、この辺にあってもおかしくないけど・・・)
今日の私の目当てはオレンジ色が特徴のヒメヒオウギズイセンと薄紫色の小さな花を多数咲かせるヤナギハナガサ。
どちらも俗に野花と呼ばれる、悪く言えば地味な花だ。
ただ昨夜読んだ『フローラの備忘録』の文章からしてフローラさんはそんな野花が好きだったらしい。
それに感化されてこれまでバラやガーベラといったザ・花!という感じの花しか扱ったことのない私も野花というものにチャレンジしてみようと思ったわけだ。
20分ほど進んだときだったろうか。
不意に木立が途切れ、日差しが差し込む空間が現れた。
そこには小さな池があり、その周りを囲むようにオレンジ色のヒメヒオウギズイセンやその他の野花が咲いていた。
「群生地、本当にあったわ・・・」
喜びよりも驚きの方が大きかった。
(でも、本当に何でアレン様はこの場所のことを知っていたのかしら?)
そんな疑問が浮かび上がったけど、目当てのものが見つかった喜びで私はすぐに忘れてしまった。
その後、無事にヤナギハナガサも見つかり、摘みあげた花たちをもって私は屋敷に戻った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「これでよしっ・・と」
倉庫から持ち出してきた花瓶に摘んできた花を活けて自室の机の上に飾った。
「うんっ。やっぱりお花があるってだけで華やぐわあ」
倉庫の奥にしまわれていた花瓶はシンプルな白色のものだったが、かえって素朴な野花とベストマッチな感じがした。
「そうだわ、他の部屋にも飾りましょう」
せっかくなので1階の食堂と鍵のかかっていない応接室の机の上にも花瓶を飾った。
屋敷の色彩にオレンジと薄紫が加わる。
それだけで無機質だった屋敷が血が通ったように印象が変わるから不思議なものだ。
その成果に満足した私はその日1日なんだかウキウキした気持ちで過ごすことができたのだった。
一応、運動用の軽装に着替えてきたけど、時々木の枝に引っ掛かってしまう。
アレン様が言っていた群生地なんてものが本当にあるのか、若干の疑念を抱きながら進んでいく。
(まあ野花だから、この辺にあってもおかしくないけど・・・)
今日の私の目当てはオレンジ色が特徴のヒメヒオウギズイセンと薄紫色の小さな花を多数咲かせるヤナギハナガサ。
どちらも俗に野花と呼ばれる、悪く言えば地味な花だ。
ただ昨夜読んだ『フローラの備忘録』の文章からしてフローラさんはそんな野花が好きだったらしい。
それに感化されてこれまでバラやガーベラといったザ・花!という感じの花しか扱ったことのない私も野花というものにチャレンジしてみようと思ったわけだ。
20分ほど進んだときだったろうか。
不意に木立が途切れ、日差しが差し込む空間が現れた。
そこには小さな池があり、その周りを囲むようにオレンジ色のヒメヒオウギズイセンやその他の野花が咲いていた。
「群生地、本当にあったわ・・・」
喜びよりも驚きの方が大きかった。
(でも、本当に何でアレン様はこの場所のことを知っていたのかしら?)
そんな疑問が浮かび上がったけど、目当てのものが見つかった喜びで私はすぐに忘れてしまった。
その後、無事にヤナギハナガサも見つかり、摘みあげた花たちをもって私は屋敷に戻った。
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「これでよしっ・・と」
倉庫から持ち出してきた花瓶に摘んできた花を活けて自室の机の上に飾った。
「うんっ。やっぱりお花があるってだけで華やぐわあ」
倉庫の奥にしまわれていた花瓶はシンプルな白色のものだったが、かえって素朴な野花とベストマッチな感じがした。
「そうだわ、他の部屋にも飾りましょう」
せっかくなので1階の食堂と鍵のかかっていない応接室の机の上にも花瓶を飾った。
屋敷の色彩にオレンジと薄紫が加わる。
それだけで無機質だった屋敷が血が通ったように印象が変わるから不思議なものだ。
その成果に満足した私はその日1日なんだかウキウキした気持ちで過ごすことができたのだった。
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