あなたが幸せなら俺はそれで

すずめ

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あなたが幸せなら俺はそれで


ー どこかの誰かがよく言う言葉
ー 初恋は実らないものだと


叶わない恋をしている


「はぁ~飲んだし、食べた~! 」

「理沙飲みすぎ。酒弱いんだから、ほどほどにしておけよ。体調は大丈夫か? 」

「大丈夫!大丈夫! 」

「本当か?心配だなぁ。具合悪くなったらすぐに言うんだぞ」

「分かってまーす!
そんなことより、もう~聞いてよ~。
大輝に昨日メッセージ送ったのにまだ既読つかないんだよ! 」

「忙しいんだって。大丈夫。そのうち返ってくるよ」


いつもの居酒屋で幼なじみの理沙と取り留めもない話をしながら、お酒を飲みすすめる。
だけど、最近は理沙の愛しの王子様こと俺たちの幼なじみ兼親友でもある大輝の恋愛話を聞かされるのがもっぱらだ。
俺たちは、幼稚園の頃からの腐れ縁で、小さい頃から理沙に恋に似た憧れのような感情を持っていた。
自覚し始めたのは中学生の頃だった。
クラスの男友達が理沙のことを可愛いと言った時、うまく説明できないが嫉妬と不安、そして理沙に恋している事を自覚した。

そこからは、理沙ばかり見ていた。
授業中、休み時間、3人で遊んでいる時。
そして、気づいた事がある。理沙は大輝ばかりを見ていることに。大輝は俺が理沙に送る視線、理沙が自分に向ける視線に気づいていたと思う。
だから、遠慮して見て見ぬふりをしていてくれていたのだ。大輝だって理沙が好きだというのに、俺に遠慮してなのか、友情を壊したくなかったのか。
だが、先日大輝から、理沙に告白しようと思う。と伝えられ、やっとかと思ったと同時に、遂にこの時が来てしまったかと思った。

理沙と二人だけで過ごせる時間はあと僅かだろうな、なんて他人事のように思う。まだ実感が湧かないのだ。あまりにも一緒に居すぎたから。


「そうかな~ 」

「ああ。あいつ研究とかで忙しそうだし、色々あるんだって! 」

「そうだよね!もう少し待ってみる!好きな人からの連絡が遅いのって辛いな~。
他の友達なら1、2日来なくたって気にならないのに 」

「・・・好きってそう言うもんなんだろうな 」

俺は決して敵わないライバルを優しくフォローする。どうせ叶わない恋なのだ。理沙には幸せになってほしい。
本当は俺がずっとずっと大切に幸せにしたい。でも、違う。隣に居るのは俺じゃない。そんな事は分かりきってるのに。未練がましくも、愛してる相手の恋愛話を聞かされると分かっていても、のこのこ誘いに乗ってしまう愚かものなのだ。


「かもね~もういいや!飲も飲も! 」

「おい、だから飲み過ぎ」

「そうだ!〘今類と飲んでる。酔っちゃった~笑 迎えに来て。〙って送っちゃおう!
いくら親友の類とはいえ、男の子と2人で飲んでるって言ったら、私のこと少しでも気があるなら、さすがに心配なりなんなりするでしょ」


しないわけないだろう。
彼女は自分の魅力に気付いていないのだ。だけど、伝えることは俺には出来ない。
大輝はすっ飛んで来るだろうな。

「そんな彼女が彼氏に送る文面…」

「お酒の勢いってことで☆ 」

「勢い付き過ぎだろ。それにさ ー 」

「あ!もう返ってきた!

〘どこで飲んでるの?迎えに行く〙

だって! やった~嬉しすぎる!

〘いつもの3人で飲む居酒屋だよ!〙っと。

〘すぐ行く〙

だって~! やった! こういうのって言ってみるもんだよね~ 」

「かもな。
俺はお前ともっと一緒にいたかったけど 」

「うん?なんか言った? 」

「いや、なーんも! ほら、王子様のご到着だぜ、お姫様 」

予想通りの結末に笑いが込み上げる反面、落胆の色が隠せそうにない。
だから、俺は仮面を被る。理沙と大輝は大親友で二人の恋を応援するという嘘で塗り固めた仮面。
この仮面を本当の意味で外せる日は来るのだろうか。
長く被りすぎて取れそうにない。
理沙より好きな相手と巡り会えることはできるのだろうか。


「あ! 大輝!!! 」

「これはこれは、随分お早いご到着で 」

「いや、理沙が酔ったって言うし、ちょうど近くにいたし 」

「お前忙しいんだろ? 理沙にも連絡できないほどに 」

お前の性格も事情も知ってるけど、ちょっとの意地悪位許せよ大輝。


「類には関係ないだろ 」

「それに、俺がちゃんと理沙の事は家まで送り届けるつもりだったしな。
大丈夫だよ。送り狼になんてならないし、さしずめ理沙の騎士ナイトってところかな? 」


「理沙が連絡くれたのは俺だ 」

「はいはい。そうですかー 」

「ちょっと! 類! 」

「悪い。理沙がお前からの連絡こなくて、あんまりにも寂しそうだったからついな、お酒の勢いってことで許してよ、理沙 」

「もぅ~しょうがないなぁ 」

「ほら、だいぶ酔いもまわってるんだろう。帰るぞ。
理沙の分のお代はここに置いとくから。じゃ、また学校でな 」

「お金なんて貰おうと思ってないよ。理沙と飲めただけで楽しかったから、充分だし 」

「それでも、置いとく。行くぞ! 理沙! 」

「あ、ちょ、ちょっと待って!類ごめん。また今度飲もうね! 」

「ああ。気をつけて帰るんだぞ。…また、な」


叶わない恋をしている


あ~あ、言っちゃった。そんなに焦って俺と理沙を離さなくても、理沙はお前にぞっこんだよ。ばーか。

俺は目の前の酒を一気に飲み干す。この酒こんなに不味かったか?理沙と飲んでる時は、もっと美味く感じた気がした。



「理沙! ほら早く行くぞ 」

「あ、待って! そんなに急がなくても~ 」


ー帰り道


「類と2人でよく飲むの? 」

「それは幼なじみだし」

「ふ~ん・・・そうなんだ 」

「なんで? 」

「いや、なんでって言われると……。もしかして類のこと…。いや、なんでもない 」

「うん? 何がなんでもないの? 」

「類に先越されたくない。だから、こんなムードも何もない所だけど言わせて。理沙の事ずっと好きだった。出会ったときからずっと。理沙の事知れば知るほど好きになって、今友達の類にさえにも嫉妬してる」

「うそ…、本当に? 」

「こんなことで嘘付くわけなだろ。本当はお店の近くにはいなくて、連絡もらって急いできた。連絡関連の話で言うけど、理沙に嫌われたくなくて、文章を考え過ぎて送れなかった。スマホの通知でメッセージの内容は知ってたけど、どう返せば良いか分からなくて、本当にごめん。俺も本当はすぐに返信したい。たくさんやり取りしたい。でも、悩みに悩んで返せずにいたんだ」

「そうだったんだ」

「それで…、さ。返事は今もらえるのかな? 」

「私も大輝が好き。同じ気持ちで嬉しい! 」

「良かった~! 良かった! 俺てっきり類の事が好きだと思ってたから、すげぇ嬉しい」

「私も大輝の事がずっと好きだった! 」

「ねぇ、手、繋いでいい? 」

「……うん」


ー居酒屋の店先


「〘大輝と付き合えることになった! 最高! 〙ね。
付き合うだろうとは思ってたけど、もう少し先だったらな、なんて。
理沙の幸せが1番だし。
おとぎ話だって最後には王子様とお姫様が末永く幸せに暮らしましたとさってなるんだし。
騎士ナイトの出る幕なんてないんだよなぁ。ずっとずっと好きだったなぁ。大好きだったなぁ。理沙のこと・・・。諦めないとなぁ」


俺は叶わない恋をしていた。



「あれ? 類くん? 」

「おお! 楓じゃん! 」

大学の同級生でサークルの飲み会の場で、よく話す明るく気さくな友達。
理沙とは違って酒は大層強い。

「こんな所で会うなんて偶然! 」

「だな。何してたの? 」

「友達との飲みの帰り! 」

「そっか。俺も同じ。俺さ、まだ飲み足りない気分なんだけど、もう一軒どう? もちろん奢るし、断ってくれて全然構わないから、急だしさ! 」

「すごい奇遇! 私も飲み足りないって思ってもう一軒行こうかと思ってたくらい」

「まじ? じゃ、行こうぜ! 今夜は飲み明かす! 」

「望むところ! 」


ー この出会いは偶然かはたして運命か。それは、まだ誰も知らない。


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