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プロローグ
しおりを挟む「月が綺麗ですねを訳すならどう訳す?」
事務所からの帰り道、夜空に輝く月を眺めながら、そう聞いてきた。
突然の質問に、彼へと視線をうつす。彼は、深い青色の瞳でただ、空を眺めているだけだった。
その言葉は、どこかの偉い人が“愛している”と訳したことで有名だが、それを自分なりに訳せと言う彼の真意は読めない。こくりと首を傾げながらも自分なりの考えを返す。
「愛させてください……かな?」
俺の答えは無難ものだった。その答えに、何を思ったのか、彼の瞳は悲しげに閉じられこう呟いた。
「俺は、星をもっと輝かせたいって訳すよ」
「え、それって訳せてるの、か?」
首を傾げれば、彼の瞳が此方へと向けられる。深い青色の瞳は、夜空のようで吸い込まれそうになる。
お互い、そのまま見つめあって数分、いや数秒かもしれない。長く静かな時は、彼が悲しげに笑ったことで終止符をうった。
「解散しよう、俺たち」
結成して7年、事務所に入って1ヶ月。今、巷を騒がせている二人組のユニット、SORAはこの日解散した。
翌日、社長にどういうことか問い詰めようと荒々しく社長室への扉を開いた。
「静かに開けなさい」
開けた瞬間に、注意と視線を受けて、忌々しく舌打ちをした。
ウェーブのかかった茶髪の髪に、何を考えているか読めない瞳で此方を見る女性は、SORAの所属する事務所の社長だ。
「解散ってどういうことだよ」
注意に対して謝罪もせずに本題を聞けば、社長は深くため息をはいた。
「SORAは、居なくならないわよ」
「は?どういうことだよ」
「SORAは、2人ではなく1人になるの」
ひとり、その言葉に怒りは頂点を達した。ガンっと社長のデスクを蹴り上げる。すぐさま、社長の近くにいた秘書が俺の両腕を抑えるが、それでも俺は暴れ続けた。
「SORAは、ひとりじゃ成り立たねぇよ! 2人だからのSORAだ。俺が、いけねぇのはわかってる。けど、あいつは……」
「あの子よ、いなくなるのは……あの子もそれを望んでるわ」
「は、なんだよ、それ……」
意味がわからない。小さくなっていく言葉に比例して抵抗も弱くなっていく。
彼は、高校時代に約束した、あのことを忘れてしまったのだろうか。それに答える声は、もうなかった。
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