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四月篇

第31話  まだまだ終わらない三姉妹の誘惑

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 お風呂で、天国なのか、地獄なのか、どちらで受け取ればいいのか、思考が追い付かなくなった。

 台所に向かうと、テーブルの上に夕食が並べてあり、元凶である三人は、自分の席に座っていた。

「敦也、早く、席に座ってよ。ご飯食べるよ」

 と、敦也を誘ってくる里菜。

「あ、うん……」

 敦也は自分の席に座り、四人揃って、夕食を食べる。

 いつも通り、四人は、楽しい話をしながら、ご飯を食べる。

 敦也は、全部食べ終わると、手を合わせ、「ごちそうさまでした」と、言った後、食器をいつも通り、流し台に置き、水につける。

 他の三人も食べ終えた人から、敦也と同じように行動する。

「俺、リビングにいるから」

 と言い残し、敦也は台所を後にした。

 ソファーで横になりながら、テレビを点ける敦也は、この時間帯のバラエティー番組を見ることにした。

 三人が、こっちに来る気配がない。まだ、台所で談笑しているのだろうか。

 敦也は、テレビを見ながら、大きな欠伸をする。

 それから二十分くらい一人で、テレビを見ていると、三人が、リビングに入ってくる。

「結構、長かったけど、食器を洗っていたの?」

 と、敦也が体を起こして、座ったまま、訊く。

「はい。三人で手分けして、食器を洗いました。先程、終わりましたので、気にしないでください」

 と、唯が答える。

 三人は、敦也の方に近づき、右に唯、左に里菜、そして、敦也の膝の上には咲弥が、それぞれ座る。

「あの……三人共? これはどういう事ですかね……。密着しすぎじゃないですか?」

「そんな事はありませんよ。これが普通なのです」

「そうだよ。これが普通なんだから」

「私にとって、ここがベストポジション」

 三人は、同じような事を言う。

(普通とは? これが普通なんですかね……)

 と、以上にも三人の敦也への愛が強すぎる。

 自分を好きでいてくれるのは、悪い気はしないのだが、年頃の男子である敦也にとっては、少し困る。

 幸せそうに敦也にくっつく三姉妹。

 敦也は、苦笑いをしながら、そのままの姿勢でテレビを見る羽目になった。
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