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異世界転移と女神

1プロローグ

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 ブレザーを着ている男子二人が登校している。僅かに背の低い男が話しかける。

「今日も良い天気だな」

「だな。今週はずっと晴れるらしいぞ」

 話しかけた方は城詰彰人じょうづめあきと、高校二年生。黒髪で顔は普通、成績も普通くらいの男である。

 その何気ない言葉に反応したのは中学生の頃からの友人、宮本みやもとかなめ。茶髪の男で顔はかなり整っており、運動神経が抜群。成績も上位である。

 彼等はA組の教室に入ると鞄を置き、女子二人に近づいた。おはようと挨拶を交すと、城詰に気が付いたらしく、彼女等も笑顔で挨拶を返す。

 黒髪ロング、大人しい性格の清水。もう一人は黒い髪をポニーテールにしている。活発な印象を受ける彼女は五鬼継ごきつぐ未来みく

 五鬼継だけはこの学校で仲が良くなった。要は中学からの、清水和しみずのどかは小学校からの幼馴染だ。大体この四人で行動している。宮本が少し興奮気味に話を始める。

「昨日さ、面白い動画見つけたんだ」

「要の事だからどうせクイズ系か?」

「と、思うだろ?」

 五鬼継も当てようとする。

「じゃあ、スポーツ?」

「それは未来の好みだからな」

「分かった。ペットとかか?」

「それは清水の好みだって!」

「ハハハ。だったら、もったいぶらずに早く言えって」

 いつも通りの何の変哲もない会話だった。

 そこで教室のドアが開いた。同時に長い髪に綺麗な藤色の髪をした、スタイルの良い大人の女性が入って来る。このクラスの担任の古川ふるかわ

 古川が席に着く様、生徒に促す。皆が席に着いた頃、ざわざわと声がした。突如、教室の床全体に魔法陣のような模様が浮かび上がったからだ。

 そして、教室は不自然な静寂に包まれた。誰もいなくなったからである。
 


【地平線が広がる白い空間】


 俺は気が付いたら辺りに何もない真っ白な空間で倒れていた。腕を突いて立ち上がると、クラスの皆も起き上がり始める。

「要……大丈夫か?」

「……彰人。一体何が……はっ! 未来と清水はっ」

「そこにいる」

 急いで近づいて声をかけると、彼女等の意識が戻った。お互い何ともない様でほっと胸をなでおろす。

 少し冷静さを取り戻した時、クラスの皆が大声で騒ぎ出す。それを先生や冷静さを保った数人の生徒がなだめていた。

 そこから数分ほど経つとどこからともなく女性の声が聞こえて来た。それは落ち着いた声だった。

「おめでとうございます。貴方がたは選ばれました」

 声のする方へ向くと、光が集まっていた。皆は不安と恐怖、疑問が混じった表情をしていた。その場所に目を凝らし、ジッと見ていると徐々に人形が現れた。それはこの世の者とは思えない程の美しい女性であった。

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