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そんな事もある

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【初日の調査終了】

 日が沈み切る前に要たち、水捜索組は戻って来た。先生を始め、俺たちは彼等を労いながら優しく迎えた。

 獣と出会ったそうだ。能力を使って追い返したらしい。形は兎に似ていて、牙と爪の他に、角、背中に棘があったようだ。

 残念ながら水源は見つからなかったらしい。しかし、空気が沈む事は無かった。追い返したおおとりがその武勇伝を語って場を盛り上げたからだ。

「……とそこで! 皆が怯える中、拙者の能力、《かまいたち》で魔物を切り裂いたでござるよ!」

 動物や獣、どう呼べばいいのか。異世界だから魔物と呼べばいいのか分からない。とにかくこの世界の生物は基本はけものと呼ぶ事とした。草食動物に似ている生物でさえ、どこか殺意溢れる外見もあり、獣という言い方が警戒心を持てる、のでそう決まった。



「鳳君すごーい!」

 女子が鳳の武勇伝に歓喜していると、一緒に参加した男子が不満そうに呟く。

「けっ、俺たちは女子を守るために、辺りを警戒してたんだよ。別に怯えてた訳じゃねーよッ」

「そうでござったか! 主役を譲ってくれたのだなっ。お気遣い感謝する!」

 先生と数名の女子がさらに彼を誉めた。他の人たちはやはりそれに不満がある表情をしていた。女子に褒められた事に気を良くしたのか彼は言う。

「実は……皆に言って置かなければならない事がある……」

 それに佐久間と愛丘まなおかが真剣な表情になった。

「何かあったのか?」

「ゴホン……実は、拙者の職は民では無い。と言う職でござるよ」

「!?」

 皆が一斉に驚きを見せた。

「オラ、クル……?」

「左様……オラクルの詳細は……」


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”短時間だが、一度だけ女神と会話できる。他人の言葉の真偽が分かる。
オラクルは民にカウントされ、生き残れば民と共に地球へ帰れる”

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「……でござる」

 皆が静まりシーンとなった。一条いちじょうがイラついた様子で突っかかる。

「はぁ? お、お前だけ二つも三つも能力があるって事かよ! そんなのおかしいだろ!」

 少し離れた場所で、不良男子たちの目付きが鋭くなった。愛丘が彼をなだめる。

「落ち着くんだ、一条君……ええっと、おおとり君。他に分かるルールはあるのかい?」

「特には……すまぬでござる」

 佐久間は喜びの声を上げた。

「とんでもない! 凄いぞこれはっ……これなら現地人との交渉に仕えるかもしれない!」

「ただ女神との会話はもう少し状況を理解して使った方がいいな」

「拙者もそう思うでござるよ」


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