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彼はもう動かない
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【陰り】
日が暮れる。最初の頃に比べて、段々と口数が減って来た。一昨日、あれ程肉を食べたはずなのに空腹だ。それは佐久間も同じのはず。何時獣に襲われるかも分からない森で疲れもある。しかし、彼は力強く皆を鼓舞した。
「大丈夫だ! 明日はきっと水が見つかる! いや、絶対に見つけて見せる!」
その時、後ろの方で不満の声が聞こえた。
「はっ……これだけ探しても無いんだ……あるはずないだろ……もう俺たちは皆死ぬんだ……もうおしまいなんだよ……っ」
そう発言したのは秋元。溜めていたストレスを吐き出すようだ。疲労で限界を超えたのだろう。
「てめッ! 下がる事いうんじゃねぇよ! 皆頑張ってんだろ! 絶対に見つかるッ」
清時が立ち上がって怒鳴る。彼があれ程怒るのは初めて見る。一番恐れていた事が起きた。止めないと。
「二人とも駄目だって。仲間割れをしても意味がない。今は協力しないとっ」
「うるせぇよ城詰ぁ!! はっ、何がサバイバルは得意だ! 全然役にたたねぇじゃねーかよっ」
今度はそれを聞いた要たちが怒った。
「秋元! お前、マジで黙れ。散々助けられて今更人のせいか!? ふざけんな!」
「そんなの誰も頼んでねぇよ!」
「何だとぉッ」
要が大声を出したので二人は睨むだけだった。その行為は嬉しかったが、今は駄目だ。
「よせ要! 秋元、本当にすまない……絶対に水は見つけるから……頼むから落ち付いてくれ……」
「はぁ? また口だけか! そんな言葉信用できねぇよ! こっちはもうずっとまともに水を口にしてねぇんだッ」
「秋元君、それはちょっと言い過ぎじゃないかな? 秋元君も城詰君も凄く頑張ってるじゃないっ。だから一旦落ち着きましょう、ね?」
先生が優しい口調で諭す。先生が言った通り落ち着いて欲しい。だが、秋元は止まらなかった。
「そもそも何でお前達は冷静なんだよ! もしかしてどっかに飲食物をまとめて隠してるんじゃないのか!?」
流石にそれは佐久間も強めに否定する。それだけはしっかりと主張しなければならない。
「そんなはずないだろ! お前も知ってるだろ! 最初の配給は皆同じだ!」
「じゃあッ……それを確かめた奴はいるのかよ……ッ!!」
仲の良いモノ同士で見せ合っただけで納得し、そこを余り気にしていなかった事に気が付いた。一条が秋元の指摘を聞いて動揺する。
「確かに……可笑しい……だってさぁ、能力にしても、全然公平じゃなかったしなっ。袋の中もそうとは限らない! 実は愛丘と他何人かが最初に示し合わせて、俺たちを騙してるんじゃないのか?」
「だよな! お前もそう思うよな! 絶対おかしい! 愛丘が能力を隠すのも怪しいぜ!」
「もうお前等は信用出来ねぇ!」
「違う! そんな事はしていない! 二人とも落ち着いてくれ! 皆も冷静にっ」
「佐久間君の言う通りだ。僕たちがそんな事するはずがない。それに能力は後々必ず明かす事を約束する」
しかし、その声は届かずに皆がざわざわとしだす。皆冷静さを失いかけていた。俺もこの場を治めようとゆっくりと話しかけるがそれは変わらなかった。
愛丘も例外では無く、言葉に何時ものキレがない。その原因は明らかで、顔からは余裕が感じら無い。水分不足を始め、持続的な心身の疲労にやられているようだ。
皆の心が僅かだが揺れ動く。そう僅かに。だが、それは心身が疲れ切った者達が集うこの状況では非常に危うい。
(駄目だ……止められない……能力者同士で暴力沙汰は不味い……佐久間にも先生にも無理ならどうやって止めれば……)
ここで突然、パンッと大きな音が鳴った。振り向くと鉄が椅子代わりの岩に座った状態で手のひらを合わせていた。
「鉄?」
日が暮れる。最初の頃に比べて、段々と口数が減って来た。一昨日、あれ程肉を食べたはずなのに空腹だ。それは佐久間も同じのはず。何時獣に襲われるかも分からない森で疲れもある。しかし、彼は力強く皆を鼓舞した。
「大丈夫だ! 明日はきっと水が見つかる! いや、絶対に見つけて見せる!」
その時、後ろの方で不満の声が聞こえた。
「はっ……これだけ探しても無いんだ……あるはずないだろ……もう俺たちは皆死ぬんだ……もうおしまいなんだよ……っ」
そう発言したのは秋元。溜めていたストレスを吐き出すようだ。疲労で限界を超えたのだろう。
「てめッ! 下がる事いうんじゃねぇよ! 皆頑張ってんだろ! 絶対に見つかるッ」
清時が立ち上がって怒鳴る。彼があれ程怒るのは初めて見る。一番恐れていた事が起きた。止めないと。
「二人とも駄目だって。仲間割れをしても意味がない。今は協力しないとっ」
「うるせぇよ城詰ぁ!! はっ、何がサバイバルは得意だ! 全然役にたたねぇじゃねーかよっ」
今度はそれを聞いた要たちが怒った。
「秋元! お前、マジで黙れ。散々助けられて今更人のせいか!? ふざけんな!」
「そんなの誰も頼んでねぇよ!」
「何だとぉッ」
要が大声を出したので二人は睨むだけだった。その行為は嬉しかったが、今は駄目だ。
「よせ要! 秋元、本当にすまない……絶対に水は見つけるから……頼むから落ち付いてくれ……」
「はぁ? また口だけか! そんな言葉信用できねぇよ! こっちはもうずっとまともに水を口にしてねぇんだッ」
「秋元君、それはちょっと言い過ぎじゃないかな? 秋元君も城詰君も凄く頑張ってるじゃないっ。だから一旦落ち着きましょう、ね?」
先生が優しい口調で諭す。先生が言った通り落ち着いて欲しい。だが、秋元は止まらなかった。
「そもそも何でお前達は冷静なんだよ! もしかしてどっかに飲食物をまとめて隠してるんじゃないのか!?」
流石にそれは佐久間も強めに否定する。それだけはしっかりと主張しなければならない。
「そんなはずないだろ! お前も知ってるだろ! 最初の配給は皆同じだ!」
「じゃあッ……それを確かめた奴はいるのかよ……ッ!!」
仲の良いモノ同士で見せ合っただけで納得し、そこを余り気にしていなかった事に気が付いた。一条が秋元の指摘を聞いて動揺する。
「確かに……可笑しい……だってさぁ、能力にしても、全然公平じゃなかったしなっ。袋の中もそうとは限らない! 実は愛丘と他何人かが最初に示し合わせて、俺たちを騙してるんじゃないのか?」
「だよな! お前もそう思うよな! 絶対おかしい! 愛丘が能力を隠すのも怪しいぜ!」
「もうお前等は信用出来ねぇ!」
「違う! そんな事はしていない! 二人とも落ち着いてくれ! 皆も冷静にっ」
「佐久間君の言う通りだ。僕たちがそんな事するはずがない。それに能力は後々必ず明かす事を約束する」
しかし、その声は届かずに皆がざわざわとしだす。皆冷静さを失いかけていた。俺もこの場を治めようとゆっくりと話しかけるがそれは変わらなかった。
愛丘も例外では無く、言葉に何時ものキレがない。その原因は明らかで、顔からは余裕が感じら無い。水分不足を始め、持続的な心身の疲労にやられているようだ。
皆の心が僅かだが揺れ動く。そう僅かに。だが、それは心身が疲れ切った者達が集うこの状況では非常に危うい。
(駄目だ……止められない……能力者同士で暴力沙汰は不味い……佐久間にも先生にも無理ならどうやって止めれば……)
ここで突然、パンッと大きな音が鳴った。振り向くと鉄が椅子代わりの岩に座った状態で手のひらを合わせていた。
「鉄?」
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