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奇跡
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鳳や大竜たちを思い出したのか雰囲気が重くなる。話を無理やり変える事にする。
「そうだ。アレってどうなる? ずっと固まったまま?」
アレとは石化した状態の事だ。一応話したくないかもしれないので、周りに聞かれないように軽くぼかしておいた。
「知らん……昆虫にも試したが、解除されたり、されなかったりだ」
「……コントロールが出来て無いのか?」
「そうとも言う……」
元気そうなのを確認したので戻る事にした。
「また急に体調悪くなったら怖いから、すぐ助けられるよう当分は誰かと一緒に行動しろよ」
そして、俺は焚火の方へと戻った。
その後、彼は静寂の中、一人ポツリと呟く。
「城詰、あいつ天然か? それとも疲れてんのか?」
【夕食後、各自の時間】
俺は早めに床に入った。すると要が話しかけて来る。
「調子が悪いんだろ? 顔色が良くないぞ」
「……ちょっと前くらいにな。軽く頭痛がする。要は?」
「俺も違和感が出て来た。体が怠い」
(恐らく明日……限界が来るだろう。それが最後の探索になりそうだ)
「彰人、鉄をどうみる?」
「……悪い奴ではないかも」
「あの状況では誰も何も言わなかったが……鳳の水を何故か持っていた……」
「……鉄は馬鹿じゃない。自分の水だと言い張る事も出来たし、その他の理由だって適当に作れたはずだ」
「つまり、そうしなかったのはただ拾っただけ、だと?」
「それ一つで喧嘩の引き金にもなった。結果だけを見るなら鉄が持ってて良かったのかもしれない……でも要、急にどうしたんだ?」
「うーん。気のせいかもしれないが……あいつだけ異様に元気なんだよな……それがなんか違和感があって」
(……無限水分補給してるからじゃないかな、とは言えん……)
その時、俺は体を起こし、耳を澄ませた。
「どうした、彰人?」
その音色に体中から元気が湧き上がって来た。興奮が抑えられなくなる。
「要! 寝てる場合じゃない! 行くぞ!」
要は訝しげな表情で俺を見ていた。しかし、それに舞い上がった俺は答えを言わず、居ても立っても居られなくて立ち上がると、そのまま佐久間の所に向かった。天羽が寝ている真横に彼は居た。
「佐久間! 休んでる場合じゃないかも!」
「城詰か。病人に響くから静かに」
「悪い……」
「それでどうした?」
俺は上を指さした。すると葉に何か当たる音がした。それに気が付いた佐久間が目を見開く。
「まさか……」
愛丘も俺たちの声で起きたようで近づいて来た。その間にもポツリ、ポツリと葉を弾く。そのリズムは少しずつ感覚が短くなる。佐久間が勢いよく立ち上がる。
「雨……ッ」
笑顔で俺は頷いた。俺は佐久間に言う。
「焚火と薪を守ろう。それと雨は冷たい。体を濡らして冷やさない様にっ」
無意識にテンションが上がって来る。いや、俺だけじゃない。誰しもが込み上げる喜びを抑えきれ無かった。
「後、慌てて飲んで腹を壊すなよ。あ、それと天羽に制服と体操着を……ッ」
佐久間たちは頷くなり、急いで準備に取り掛かる。天羽を濡れない場所に移動させ、焚火の上に雨よけを置く。設備は簡易だが、拠点待機組がしっかりと準備してくれていた。
愛丘と背後でそれを聞いていた要は、急いで数人を起こして事情を説明し、伝達速度を上げる。
そして、それが功をそうしたのか、準備を終えた瞬間に土砂降りになる。雨の音を遮るかのように、歓喜の声が辺りに響き渡る。
「雨! 恵みの雨だ!」
「水! 水ぅ!」
今までの乾燥を取り戻すかのようにペットボトルに少し貯めた水を何度も何度も飲む。宝剣と白竜も大量にがぶがぶと水を飲んでいた。それでも佐久間は冷静で、ゆっくりと天羽に水を飲ませていた。
一方、鉄は感情が読み取り温い表情で水を飲んでいた。
その頃、俺は要たちと乾杯をする。それを口にした途端に、命の源が体に染み渡るのを感じる。雨水を堪能していると、要が優しく微笑んだ後、茶化すように言った。
「おい、彰人。何泣いてんだよ。情けねーなー」
「……え?」
指摘されるまで気が付かなかった。頬に水が滴った。
「あ、いや。これは違う」
それを見た和が穏やかな口調で言う。
「あき、頑張ってたもんね」
「そうそう、彰人のおかげだよ」
「いや、偶然に助けられただけで。俺が何かしたわけじゃ」
「鳳たちは残念だったけどな……でも、こうして皆生きてるのはお前のおかげだよ。なんせ雨が降るまで耐えたんだ。自信を持てって」
「……ありがとう」
明日の予定は多少変更になった。ずっと雨が降り続けば拠点で待機。雨が止めば、引き続き水源の探索となる。
どちらにせよ、今はしっかりと休んで、明日に備える事にしよう。
「そうだ。アレってどうなる? ずっと固まったまま?」
アレとは石化した状態の事だ。一応話したくないかもしれないので、周りに聞かれないように軽くぼかしておいた。
「知らん……昆虫にも試したが、解除されたり、されなかったりだ」
「……コントロールが出来て無いのか?」
「そうとも言う……」
元気そうなのを確認したので戻る事にした。
「また急に体調悪くなったら怖いから、すぐ助けられるよう当分は誰かと一緒に行動しろよ」
そして、俺は焚火の方へと戻った。
その後、彼は静寂の中、一人ポツリと呟く。
「城詰、あいつ天然か? それとも疲れてんのか?」
【夕食後、各自の時間】
俺は早めに床に入った。すると要が話しかけて来る。
「調子が悪いんだろ? 顔色が良くないぞ」
「……ちょっと前くらいにな。軽く頭痛がする。要は?」
「俺も違和感が出て来た。体が怠い」
(恐らく明日……限界が来るだろう。それが最後の探索になりそうだ)
「彰人、鉄をどうみる?」
「……悪い奴ではないかも」
「あの状況では誰も何も言わなかったが……鳳の水を何故か持っていた……」
「……鉄は馬鹿じゃない。自分の水だと言い張る事も出来たし、その他の理由だって適当に作れたはずだ」
「つまり、そうしなかったのはただ拾っただけ、だと?」
「それ一つで喧嘩の引き金にもなった。結果だけを見るなら鉄が持ってて良かったのかもしれない……でも要、急にどうしたんだ?」
「うーん。気のせいかもしれないが……あいつだけ異様に元気なんだよな……それがなんか違和感があって」
(……無限水分補給してるからじゃないかな、とは言えん……)
その時、俺は体を起こし、耳を澄ませた。
「どうした、彰人?」
その音色に体中から元気が湧き上がって来た。興奮が抑えられなくなる。
「要! 寝てる場合じゃない! 行くぞ!」
要は訝しげな表情で俺を見ていた。しかし、それに舞い上がった俺は答えを言わず、居ても立っても居られなくて立ち上がると、そのまま佐久間の所に向かった。天羽が寝ている真横に彼は居た。
「佐久間! 休んでる場合じゃないかも!」
「城詰か。病人に響くから静かに」
「悪い……」
「それでどうした?」
俺は上を指さした。すると葉に何か当たる音がした。それに気が付いた佐久間が目を見開く。
「まさか……」
愛丘も俺たちの声で起きたようで近づいて来た。その間にもポツリ、ポツリと葉を弾く。そのリズムは少しずつ感覚が短くなる。佐久間が勢いよく立ち上がる。
「雨……ッ」
笑顔で俺は頷いた。俺は佐久間に言う。
「焚火と薪を守ろう。それと雨は冷たい。体を濡らして冷やさない様にっ」
無意識にテンションが上がって来る。いや、俺だけじゃない。誰しもが込み上げる喜びを抑えきれ無かった。
「後、慌てて飲んで腹を壊すなよ。あ、それと天羽に制服と体操着を……ッ」
佐久間たちは頷くなり、急いで準備に取り掛かる。天羽を濡れない場所に移動させ、焚火の上に雨よけを置く。設備は簡易だが、拠点待機組がしっかりと準備してくれていた。
愛丘と背後でそれを聞いていた要は、急いで数人を起こして事情を説明し、伝達速度を上げる。
そして、それが功をそうしたのか、準備を終えた瞬間に土砂降りになる。雨の音を遮るかのように、歓喜の声が辺りに響き渡る。
「雨! 恵みの雨だ!」
「水! 水ぅ!」
今までの乾燥を取り戻すかのようにペットボトルに少し貯めた水を何度も何度も飲む。宝剣と白竜も大量にがぶがぶと水を飲んでいた。それでも佐久間は冷静で、ゆっくりと天羽に水を飲ませていた。
一方、鉄は感情が読み取り温い表情で水を飲んでいた。
その頃、俺は要たちと乾杯をする。それを口にした途端に、命の源が体に染み渡るのを感じる。雨水を堪能していると、要が優しく微笑んだ後、茶化すように言った。
「おい、彰人。何泣いてんだよ。情けねーなー」
「……え?」
指摘されるまで気が付かなかった。頬に水が滴った。
「あ、いや。これは違う」
それを見た和が穏やかな口調で言う。
「あき、頑張ってたもんね」
「そうそう、彰人のおかげだよ」
「いや、偶然に助けられただけで。俺が何かしたわけじゃ」
「鳳たちは残念だったけどな……でも、こうして皆生きてるのはお前のおかげだよ。なんせ雨が降るまで耐えたんだ。自信を持てって」
「……ありがとう」
明日の予定は多少変更になった。ずっと雨が降り続けば拠点で待機。雨が止めば、引き続き水源の探索となる。
どちらにせよ、今はしっかりと休んで、明日に備える事にしよう。
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