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発展

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 そこから人が来なかった。というより、歩く音も近くでは聞こえなくなった。こういう時は寝るのが一番いいから気を遣ってくれたのだろう。そして、俺はいつの間にか寝ていた。

 数時間後、意識が戻った。何か刺激があったからだ。目を開けると和が近距離にいた。そして、口に柔らかい物が当たっているのに気が付いた。和が慌てて距離をとった。

「お、起きたんだ! ご、ごめんね……体調はどう?」

「も、もう大丈夫。一回寝たら熱も引いたよみたい」

「そ、そう! 良かったー」

「あ、と……い、今のって……」

「……キスしちゃった。い、嫌だった?」

「い、嫌じゃないっ……っていうか! う、嬉しいかもっ」

「そっか。あ、ちょっと体調が良くなったって伝えてくるね」

 そう言って彼女はそそくさと外に出て行った。熱は引いたはずなのに、未だに頭がボーっとしていた。皆が帰って来る時間帯になった。狩猟で狩った肉を調理する。それを要たちが運んで来てくれた。

「彰人、体調はどうだ?」

「おかげさまで良くなった」

「和のおかげさまでぇ~?」

 みーちゃんがそう言って来たので俺は和と目が合う。しかし、照れくさくなりお互い顔を反らした。

「そうそう! 和の《ヒーリング》が効くんだわっ」

「おや? おやまぁー」

「仲良くなったみたいだな」

「そ、そりゃ幼馴染だからな!」

「そうじゃないってー」

 二人はからかう様子で笑って来た。夕食を終えると少し雑談をして、就寝の時間だ。今は俺たちは太陽を中心に生活していた。

「そうだ。ねぇ彰人。和と一緒に寝なよ」

「何でそうなる」

「念の為の《ヒーリング》? 手を握ってもらえるだけで違うでしょ」

「常時発動はしんどいだろ……」

「私は大丈夫だよ。体調が安定してからかな? MPの回復が早くなってる。今90だよ」

「寝ながら出来るのか?」

「まあまあ、試してみるね」

「……適当かよ」


「じゃっ、場所移動だね」

 彼女は嬉しそうに移動する。

「お前がそうしたいだけじゃないか?」

「あ、ばれた? それじゃおやすみ~」

「ははは、未来らしいよ」

(確かにこの振り回されてる感じ。戻って来てるな)

 ふと前を見ると和が恥ずかしそうに見ていた。

「ね、寝ようか」

「お、おう……」

 俺は目を閉じると手が暖かくなる。ヒーリング効果だ。今日は色々あったな。茶碗が出来ていたのには感動した。それに簡易とはいえお茶にもビックリだった。

(それと……後はキ……)

 そこまで考えると体の温度が上がる。明日の為に今日は寝よう。


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