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初めからあったモノ

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「けっ、信用できねぇな。どいつもこいつも……それと宝剣っ。将史まさしを発見したのはお前たちだったよなっ。白竜たちと協力して、殺したのを隠してるんじゃないのか!?」

 鳳将史が死んだ状況を持ち出す。それに思わず怒鳴ろうとした宝剣を手で制し、白竜が話す。

「そんな事は断じてない。鳳の死は刺突によるもので、その周囲もかまいたちの跡があった。あの時の俺は風を刃にする事は出来なかった……あの時点では現場の状況は作れない」

「ハハハハ! 今それを言うのか!? 今更弁解してももう遅いんだよ!」

「確かにそう言われても仕方ない……だが、あの時の俺はその考えに至らなかった。今も愛丘が能力を話してくれるまで言い出せなかった。本当に申し訳ないと思ってる……」

 秋元がさらに言葉を重ねようとした時、愛丘まなおかが言う。

「いいや、違う。鳳君はその時に死んでないよ。体温や硬直の具合から死んでから約八時間から十時間は経過していた」

 遺体の死亡推定時刻を確認出来る事にツッコミを入れる者は居なかった。愛丘は曖昧にせずにきっぱりと断言したからだ。それに彼の言葉には異様な説得力があった。鉄はその様子を見て、楽しそうに口元が少し広げる。


 そして、秋元は舌打ちをしながら標的を変えた。全員を指さしながら叫ぶ。 

「怪しい! 全員怪しいなッ! 実は殺された三人を恨んでいた奴がこの中にいるんじゃないのか!?」

 意外だったのは要。怒るかと思ったが、冷静だった。彼はその発言の最中、クラスメイトを反応をジッと注意深く確認していた。


「おいッ、言葉に気を付けろよ秋元……それ以上は本当に笑えないぞッ」

 田村が煽る様な言動を止めようとするが、彼には届かない。

「ハハハハ! 佐久間と付き合うために、他の女を蹴落とすチャンスかもな! 死人に口なしって良い言葉だよなァ!」

 数人の女子が誰も気が付かない程度だが、僅かに反応した。

「おいッ。だからいい加減にしろ!」

 そこで、清時が秋元を殴り飛ばした。追撃しようとした彼を皆が止める。殴られて尻もちを着いてた秋元はなおも挑発をする。

「ハッ。女子の裸を覗こうとした癖に今更正義ぶってんじゃねぇぞお前等! どうせいざとなったら女子を襲うんだろ!」

「お前と一緒にすんじゃねぇよ!」

 秋元が見下すように彼等を見ていた。彼等はそれを見てさらに怒りが込み上げる。そのやり取りを見ていたくろがねが愉しそうに言う。


「少し褒めたらこれか秋元……正直がっかりだ」

「ああッ?」


「今重要なのはそうじゃない」


 彼はその言葉を理解出来ずに訝しげな表情でずっと鉄を見上げていた。さっきまでの許容とは違う表情になった鉄に少したじろいでしまう。

「田中の能力は月に一度だけ使用可能。しかし、それを伝える事が出来るのは30日後。一か月間のロスがあるなら上手く使っても、後34回ってとこか……」

「な、何が……言いたい……?」

「まだ分からねぇか。俺たちは残り34人。時間さえかければ、ほぼ全員を鑑定する事が出来るって事だ……」

 ここで秋元の表情がみるみるうちに青ざめた。

「さて、ここで問題だ……最初に誰から鑑定しようか?」

「ッ……」


「はしゃぎすぎたな秋元……お前の行動は一貫して目に余る害悪」


「ぁッ……ふっ、ふっ、ふざけんな! それよりも明らかに怪しい鉄や佐久間、天羽とかが先だろ!!」

「クク。俺も自分を早めに鑑定して、身の潔白を証明したいところだが、お前の後を希望するぜ。一か月は長すぎる」

「だ、黙れぇっ! ふ、普通はくじ引きだろ! そんなの公平じゃない!」

「それなら通常時はくじ引きでランダムに。だが……怪しい奴が居たらそいつを優先するかを投票で決めるか? 挙手きょしゅはやりにくいだろうからな。遮蔽物使って、誰が誰に入れたか見えなくすれば良い……」

「だ、だから勝手に決めるなよッ」

 秋元の声を無視して鉄は続ける。

「似た様な事をやりたいからわざわざ田中の能力を暴露したんだろ、愛丘?」

 愛丘は僅かに苦笑いをしていた。そして、何かを確信した様な自信に満ちた表情になる。

「……概ね鉄君の言う通りだ……彼女の能力を隠してこっそりと鑑定するのフェアじゃないと言う結論になった。これは信用に関わる事。皆を裏切る訳にはいかないからね……」

 何人かは気が付いていた。少なくとも鉄も愛丘もその他も、まだ全てを出さずにまだ何か隠している。彼等は情報の共有と後出しを上手く使い分け、お互いに探りながら徐々に答えに近づこうとしている。


(危うい……全てが危うい……まるで綱渡りをしているかのよう。詳細が明確にされてない以上、誰の言う事も納得ができ、同時に否定も出来る……そんな中でどう動くのか……こんな不安定な状態で三年間も……メンタルを保てるか……)


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