ワイズマンと賢者のいし

刀根光太郎

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個人戦

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 そして終に、ノラは間合いに入った。接近戦では分が悪い。リルはヒートシールドを二重に重ねた。しかし、そんなものは関係ないと言わんばかりに渾身の魔力と力を込め、槍の刺突を放つ。ひびが入り、火の盾は砕けた。

 もう一歩踏み込み。追撃を放とうとする。ノラは苦笑いを通り越して微笑を見せた。炎の蔦が脚に絡みついていた。最大の威力は出せない。それでも槍を振った。同時にリルも全力の炎の球をぶつける。二人は同時に大きく吹き飛ばされた。

 場外には落ちなかったものの、ボロボロであった。頼りない足取りで立ち上がる。

「タフね……」

「そっちもね……」


 その試合を見ていた生徒たちは大きな盛り上がりを見せた。そんな時、フーが不機嫌そうに言った。

『リル。ここまでだ……』

(『え?』)

『つまらん……こんな結果になるとはな……』



 マグナもそれに気が付いた。それどころか教師が皆、慌ただしく動き出す。

「おい、ラルクロ……気が付いているか?」

「ええ、何と無粋な……」

「規模は……ちっ……厄介な隠蔽だ。ラルクロ!!」

「慌てないでください。探知、解析完了まで五分ってところですかね」

「遅いっ、二分で済ませろ!!」

「相変わらず無茶なことを言いますね……」


 ロロがその低い声に不思議そうに聞いた。

「先生、どうしたんですか?」

「侵入者だ……緊急事態ってやつだな。全員戦闘に備えろ」

「え? そ、それはど……」

 その瞬間、大きな爆発と共に悲鳴が聞こえた。



 リルとノラはその爆発に驚いた。フーは既に闘技場周辺の探知も終えていた。

「なっ。何が!!」

『魔道具あったろ? それでリルの魔力を回復するから全部出せ』

(『で、出来るのそんなこと? って何が起こってるの!!』)

『全快は無理だが、少しでも魔力を補充する……それと言い忘れてた。副作用で後から気分が悪くなるが……』

(『大丈夫。魔力が無いと戦えないもんね』)

 驚いてはいたが、リルは状況を何となく察して魔道具を出す。すると魔道具が割れ、魔力へと変換された。


『敵の目的は不明。厄介なのが1人、それに次いで3人、そこそこなのがいる。後は30人の雑兵。魔物が523匹……』

(『学園の魔法防壁があるのになんで!!?』)

『まあ、防壁は破ればいいからな。それよりもこっちは教師23、上級生7、一年が150だ。教師と上級生、一年の魔導戦闘科の子はともかく、別の科はまだ未熟なやつが多い』

(『助けないと!!』)

『そうだな』

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