8 / 38
第一章 空の島
火山地帯(2)
しおりを挟む
ようやくクライヴのグリフォン操作が安定し始めた頃、精霊の声が聞こえる方へ飛んで行くと徐々に暖かくなる。遠くに緑と茶色の境界が見えた。火山地帯だ。茶色い部分は木が極端に少なくなっている。
その時、クライヴが低空飛行をすると木々が生い茂る地面へと飛び降りた。皆はそれを咎めない。何故なら一回り大きなグリフォンが魔獣に襲われていた。どうやら卵を守っている。翼が黒ずんで飛べない様子。
「うおぉぉぉおお!」
巨大な体。左右非対称の足を持つ魔獣。クライヴが落下しながら盛大に戦斧を振り下ろす。頭の部分を潰したが、それはまだ生きていた。この魔獣にとってそこは急所では無い様だ。
グリフォンの前に立ち。彼は戦斧を構える。アルフィーたちも一度旋回すると助けに加わる。背後から急所になりそうな場所を突く。失敗しても狙いを分散できる。
クライヴは魔獣がよそ見をした際、消去法で再び急所の可能性がある部分を狙う。魔獣は奇声を上げて絶命する。
エルナが近づこうとするが、グリフォンは鳴き声で威嚇をする。
「まあ……そうなるわよね」
クライヴはグリフォンの眼を見て語り掛ける。
「頼む。お前を助けたい……」
彼の必死な姿を見て、少しだけ警戒を解いた。ゆっくり近づくと、撫でる事が出来た。アルフィーが治癒をかけようとするとレティシアが言う。
「あの。私に癒しの魔法をっ」
「……分かった」
練習している際にレティシアは言っていた。この魔法は馴染むようだと。実際に凄まじい早さで基礎を覚えた。
翼に触れると手が光り出す。黒ずんでいた部分が消えかける。しかし、あと一歩。浄化しきれない。アルフィーがそっと手を重ねる。
「もっとこう」
レティシアは驚いて赤くなりながらピクっとなったが、すぐに真剣な表情に戻る。
「こう?」
「ああ、凄く上手い」
「そ、そうかな?」
「少し慣れたか。もっと内。深くいけるか?」
「うん、大丈夫」
「ねぇ。ちゃっちゃとアルフィーが治さない? ここ他にも魔獣しそうだし」
「なんだ? 嬢ちゃん、怒ってるのか」
「だから怒って無いって!」
暫く癒しの魔法を使うとグリフォンの翼が完全に治った。クライヴに頭を擦り始めた。
「おっ! お礼言ってんのか。可愛い奴め」
レティシアが精霊と話し始めた。するとグリフォンは卵を鋭い爪で掴む。バサバサと大きな風を起こして飛び去って行った。
「な、なんだぁ!? 何を話した?」
「ん~、内緒♪」
「げ、元気でな!?」
去り行くグリフォンに急いで別れの挨拶をするのであった。それを見届けるとアルフィーは言う。
「火山のところに行って見るか」
「そうだな」
余り近づき過ぎると嫌がったので、早めに降りて徒歩で向かう。段々と熱くなる。火が近くなるのはもちろんだが。恐らくレティシアの周辺に精霊が集まってきているのだろう。
湯気が見える程の熱湯で巨大なワニがバシャバシャと動いていた。何か食べている様子だ。さらに奥に行くと溶岩が溢れている場所もあった。溶岩の塊からは火だるまのオオサンショウウオが出て来た。
「サラマンダー!」
陸に上がるとテクテクと歩き出す。警戒しているアルフィーの前をそのままゆっくりと横切った。
「よく見ると可愛いね」
「おいおい、不意打ちして来ないだろうな?」
「ないない……」
「あ、止まった。もしかして着いて来いってこと?」
暫く着いて行くと盛り上がった所があった。そこを上っていた時、レティシアが精霊から何かを聞いたのか待ったをかけた。
「その先は!?」
その声に驚いたエルナは丘の上で振り返ると、足を滑らせて前のめりに転んだ。膝を付き、大きく股を開いた状態になっていたのでスカートの中が丸見えになっていた。
「な、なに食い入るように見てるのよっ!」
それに気が付いた彼女は叫びながらも慌てて起き上がる。レティシアはジトっとした様子でアルフィーを見ていた。
「見てないし……」
「嬢ちゃん、早く起きな」
丘の向こうでは十数体の魔獣が暴れていた。サラマンダーは先ほどとは打って変わり、信じられない速度で何処かに去って行った。
「あ、あれを倒せってことっ?」
皆は急いで武器を構えた。こちらに気が付くと襲い掛かって来る。様子見など頭にないのか。相変わらず最初か全力で飛び込むクライヴ。負けじとエルナも飛び込んで魔獣と戦い始める。
アルフィーはレティシアを意識しつつ、彼等の援護に徹する。不思議な事にそれは噛み合っていた。
「ピィィ!」
それを見てフィーが、まるで自分が戦っているかの如くはしゃいでいた。
エルナの話だと。魔獣は人や精霊を食べる事に強くなっていく感じがした、と言っていた。ここの魔獣はそんなに強いのはいなかった。幸い魔獣が住み着いてから、早期に発見出来たのだろう。
「私七匹倒したけど、あんたは何匹?」
「俺? ええっと……数えてない」
「ププ。じゃあ私の勝ちね」
アルフィーは言われて数え始めた。
「多分、八匹だな」
「はぁ~嘘つきなさいよ!」
「じゃあ数えてみろって」
エルナが数えると手が止まる。そして、悔しそうな顔を見せると、もう一度ゆっくりと数え始める。アルフィーはそれをほってクライヴたちに言う。
「こうなると精霊が集まる所には定期的に来て、魔獣を討伐した方がよさそうだな」
「私も賛成」
「そうだな。一旦帰って報告するか」
彼等は空の島に帰還する。一部の火の精霊はしっかりと着いて来ているらしい。火山帯を離れグリフォンが待つ地へと歩く。
「あ、あれみて!」
帰る際、サラマンダーや温泉ワニがジッとこちらを見ていた。
「ははっ、お見送りかね~」
その時、クライヴが低空飛行をすると木々が生い茂る地面へと飛び降りた。皆はそれを咎めない。何故なら一回り大きなグリフォンが魔獣に襲われていた。どうやら卵を守っている。翼が黒ずんで飛べない様子。
「うおぉぉぉおお!」
巨大な体。左右非対称の足を持つ魔獣。クライヴが落下しながら盛大に戦斧を振り下ろす。頭の部分を潰したが、それはまだ生きていた。この魔獣にとってそこは急所では無い様だ。
グリフォンの前に立ち。彼は戦斧を構える。アルフィーたちも一度旋回すると助けに加わる。背後から急所になりそうな場所を突く。失敗しても狙いを分散できる。
クライヴは魔獣がよそ見をした際、消去法で再び急所の可能性がある部分を狙う。魔獣は奇声を上げて絶命する。
エルナが近づこうとするが、グリフォンは鳴き声で威嚇をする。
「まあ……そうなるわよね」
クライヴはグリフォンの眼を見て語り掛ける。
「頼む。お前を助けたい……」
彼の必死な姿を見て、少しだけ警戒を解いた。ゆっくり近づくと、撫でる事が出来た。アルフィーが治癒をかけようとするとレティシアが言う。
「あの。私に癒しの魔法をっ」
「……分かった」
練習している際にレティシアは言っていた。この魔法は馴染むようだと。実際に凄まじい早さで基礎を覚えた。
翼に触れると手が光り出す。黒ずんでいた部分が消えかける。しかし、あと一歩。浄化しきれない。アルフィーがそっと手を重ねる。
「もっとこう」
レティシアは驚いて赤くなりながらピクっとなったが、すぐに真剣な表情に戻る。
「こう?」
「ああ、凄く上手い」
「そ、そうかな?」
「少し慣れたか。もっと内。深くいけるか?」
「うん、大丈夫」
「ねぇ。ちゃっちゃとアルフィーが治さない? ここ他にも魔獣しそうだし」
「なんだ? 嬢ちゃん、怒ってるのか」
「だから怒って無いって!」
暫く癒しの魔法を使うとグリフォンの翼が完全に治った。クライヴに頭を擦り始めた。
「おっ! お礼言ってんのか。可愛い奴め」
レティシアが精霊と話し始めた。するとグリフォンは卵を鋭い爪で掴む。バサバサと大きな風を起こして飛び去って行った。
「な、なんだぁ!? 何を話した?」
「ん~、内緒♪」
「げ、元気でな!?」
去り行くグリフォンに急いで別れの挨拶をするのであった。それを見届けるとアルフィーは言う。
「火山のところに行って見るか」
「そうだな」
余り近づき過ぎると嫌がったので、早めに降りて徒歩で向かう。段々と熱くなる。火が近くなるのはもちろんだが。恐らくレティシアの周辺に精霊が集まってきているのだろう。
湯気が見える程の熱湯で巨大なワニがバシャバシャと動いていた。何か食べている様子だ。さらに奥に行くと溶岩が溢れている場所もあった。溶岩の塊からは火だるまのオオサンショウウオが出て来た。
「サラマンダー!」
陸に上がるとテクテクと歩き出す。警戒しているアルフィーの前をそのままゆっくりと横切った。
「よく見ると可愛いね」
「おいおい、不意打ちして来ないだろうな?」
「ないない……」
「あ、止まった。もしかして着いて来いってこと?」
暫く着いて行くと盛り上がった所があった。そこを上っていた時、レティシアが精霊から何かを聞いたのか待ったをかけた。
「その先は!?」
その声に驚いたエルナは丘の上で振り返ると、足を滑らせて前のめりに転んだ。膝を付き、大きく股を開いた状態になっていたのでスカートの中が丸見えになっていた。
「な、なに食い入るように見てるのよっ!」
それに気が付いた彼女は叫びながらも慌てて起き上がる。レティシアはジトっとした様子でアルフィーを見ていた。
「見てないし……」
「嬢ちゃん、早く起きな」
丘の向こうでは十数体の魔獣が暴れていた。サラマンダーは先ほどとは打って変わり、信じられない速度で何処かに去って行った。
「あ、あれを倒せってことっ?」
皆は急いで武器を構えた。こちらに気が付くと襲い掛かって来る。様子見など頭にないのか。相変わらず最初か全力で飛び込むクライヴ。負けじとエルナも飛び込んで魔獣と戦い始める。
アルフィーはレティシアを意識しつつ、彼等の援護に徹する。不思議な事にそれは噛み合っていた。
「ピィィ!」
それを見てフィーが、まるで自分が戦っているかの如くはしゃいでいた。
エルナの話だと。魔獣は人や精霊を食べる事に強くなっていく感じがした、と言っていた。ここの魔獣はそんなに強いのはいなかった。幸い魔獣が住み着いてから、早期に発見出来たのだろう。
「私七匹倒したけど、あんたは何匹?」
「俺? ええっと……数えてない」
「ププ。じゃあ私の勝ちね」
アルフィーは言われて数え始めた。
「多分、八匹だな」
「はぁ~嘘つきなさいよ!」
「じゃあ数えてみろって」
エルナが数えると手が止まる。そして、悔しそうな顔を見せると、もう一度ゆっくりと数え始める。アルフィーはそれをほってクライヴたちに言う。
「こうなると精霊が集まる所には定期的に来て、魔獣を討伐した方がよさそうだな」
「私も賛成」
「そうだな。一旦帰って報告するか」
彼等は空の島に帰還する。一部の火の精霊はしっかりと着いて来ているらしい。火山帯を離れグリフォンが待つ地へと歩く。
「あ、あれみて!」
帰る際、サラマンダーや温泉ワニがジッとこちらを見ていた。
「ははっ、お見送りかね~」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
5
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる