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第二章 十二王家の目覚め

19話 形

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 話し合いの結果。獣人はテオの民となる事となった。話し合いと言っても形式的にで、彼等はテオを慕っている。シオンは大きなイグールの木をクーに自慢して満足していた。


 魔素元と手に入れた事で、島を切り離す事とした。理由は色々とある。開発の目的やリスクの分散を考慮したからである。

 クイーンアイリスは都市開発や農場などに重きを置き、ブレイズアンビシオンは防衛等の軍事方面に舵を切る事になった。ただし取り合えず、という形だ。

 最終的にはそれぞれが国として成立するようになるだろう。

 島は連結して行き来できるが、中型の滑空可能な恐竜、アロフテラでの移動が簡単で早い。それらは羽以外にも持っており、どんな高所から落ちても、傘の様に皮膚を広げ、上手く着地出来る。

 最近はグリフォンが少しづつ増えている事に気が付いた。グリフォンがグリフォンを呼んでいるらしい。新入りはテオの方に送ったりしている。

 農作物は精霊の加護の恩恵なのか、育ちが早く、収穫の周期が早いようだ。魔獣討伐はユイの拳法を基盤に、開発していく。獣人も数人ほど弟子になったようだ。

 レティシアは島の事をクーに教わりながら、合間合間に精霊の声を皆に伝える。それを受けた民は狩りや、資源の探索など今日の方針を決める。

 クライヴはグリフォンの育成に興味を持ち、女性飼育員と共に管理している。他には乗り方のコツも教わっている。

 ディアナは騎士団を強化し、エルナは癒しの魔法に挑戦していた。その他にはマックスとロイクが主体となり、魔法を教えている。そして、アルフィーも魔法を教わっている。


 意識するようになってからは、風に守られている感覚がする。光も少し分かりにくいが、癒しの魔法がより上手くなったし、効力が上がっている。

 体から魔素を集める。それを魔力で包み、属性に変換する。この時に精霊の力を借りる事で爆発的に力が増す。
それを外に解き放つ。大まかに言うと、魔法とはこのような感覚だ。

 属性の精霊が集まるところで集中して感覚を研ぎ澄ませたり、魔素を体中の端から端に移動させたりと。マックス流のやり方で魔法の操作や持続力を向上させる。


 これが出来る様になったのは、島の民が成長したからだ。次に自分に求められるのは武の力だと信じ、訓練を行う。一人で訓練していた時に、テオとノイチがこちらへやって来た。


「テオ陛下。調子はどうですか?」

「はっはっは、快調であるぞ。お前は魔法習得に苦戦しているようだな」

「ええ、見ての通り弱々しく、まだまだ実戦で使える程では……陛下はどの様に魔法を使っているのですか? 何故あれ程の威力を」

「はっはっは! 余は炎、お前は風。果たして聞いたところで意味があるのか?」

「そ、それは……」

「テオ様。お礼を言いにいたのでは無かったのですか?」

「……」


「お礼? ですか?」

「貴方の魔法が無ければ、私たちは魔獣のままでしたので。改めてと」


「はっはっは、仕方ない! 特別に教えてやろう! 魔法とはイメージだ」

「え? イ、イメージ……ですか」

「テオ様……」


「う、うむ。わ、分かっておる。強い願いと言った方が近いな」

「……それは」


「思うだけでは足りない。手を伸ばし、欲する事だ。強き願いは行動へ至り。そして、二つは激しくぶつかり合い、やがて昇華する。お前のやっている事は正しい。だが、貪欲さに欠ける」

「貪欲さ……」

「落下した際……死にかけたお前は……強く欲したのであろう?」

「……そうかっ……」

「魂の熱が、お前の求める力となる。上手く出来ぬなら、どちらかが欠けている」

「……」

「描くが良い。お前の望む姿を」


 テオはそう言い、笑うながら去って行く。その間に、感謝すると紛れ込ませていた。



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