【完結】スキルが美味しいって知らなかったよ⁈

テルボン

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第2章 魅惑の生活が怖いって思わなかったよ⁈

018話 スライムの使い道

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   あの日から、アラヤに対する二人の行動は度を増してきた。

『おはようございます、アラヤ君』

   早朝、アラヤはアヤコさんの念話で目を覚ました。すると、目の前にはサナエさんの顔があり、アラヤの顔を覗き込んでいた。

「ちぇっ、起きたのか。おはよう、アラヤ」

「お、おはようって、何してるのサナエさん」

「別に?起こしに来ただけよ。誰かさんに邪魔されたみたいだけど…(アラヤの寝起き観察は私の楽しみなのに…)」

    サナエさん、ちぇっって言ってたけど、俺が寝てる間に何をするつもりだったんだろう。

「ほら、井戸に顔洗いに行こうよ」

「あ、うん」

「私も行きますよ」

   最近は、魔法の水で顔を洗わずに、井戸場に赴いて洗っている。村人達との交流の為だ。

「おはようございます」

   今日の井戸場には、ナーベさんとナーシャさんが先に来ていた。

「あら、おはようアラヤ君。サナエちゃんと先生も」

「私達はついでですか」

「私なんか、最近名前すら呼ばれてませんよ」

   この村の井戸は、いわゆる釣瓶井戸と呼ばれ、滑車を利用して綱をつけた桶を落とし、水を汲み上げるという時代劇とかでよく見る井戸だ。
   ナーベさん達は、自分達の分を汲み終えたらしく、汲み取り場所を譲ってくれる。

「そういえば、アラヤ君。あなた、実は17歳なんだってね?村長から聞いたわよ」

「あれ?言ってませんでしたっけ?」

「ええ。私達はてっきり、アヤコさんの弟かと思って接してたんだけど。ナーシャと一つしか変わらないなんてね。良かったらどうだい?うちの娘も独身で相手募集中だよ?」

バッシャーン!

   汲み上げてた途中の桶を落としてしまった。いきなり何て事を言うんだい?

「い、い、いやぁ、それはナーシャさんにも悪いですよ。俺なんかじゃ釣り合わないですし、ナーシャさんにも好きな人がいるかもしれないでしょう?」

「う~ん。確かにアラヤ君はタイプじゃ無いかもね。私は同じくらいの背の人が良いかも。アラヤ君はやっぱり子供っぽく見えるからね」

   容赦無く一刀両断されました。うん。期待してなかったよ?

「ハハッ。やっぱりチビだと、なかなかお前の良さを理解してもらえないな?」

   なんか久しぶりに、サナエさんにチビって言われた気がする。まぁ、嬉しくは無いけどね?

「じゃあ、貴方達は独身三人で一緒に住んでるんだね?」

    ナーベさんが、わざとらしくからかい出したので、気まずくなる前に話を変える事にした。

「そう言えば、ナーシャさん。投票会で手に入れた絹で、何か作ったんですか?」

「フフ、作ったわよ。凄い滑らかで、触り心地が良かったから、とりあえず絹の下着を作ったの。触ってみる?」

   服の胸元をずらし、下着を少し見せる。しかしそれ以上に、豊満故に出来た深い谷間に目が釘付けになる。

「ヨ、ヨロシインデスカ⁈」

   途端に、首根っこと腕を掴まれました。はい。調子に乗ってすみません。

「下着も良かったんだけど、やっぱり服が良いと思ってて、今ドレスを製作中なんだよね」

「頑張って下さいね」

   俺は二人に引き摺られながら、彼女達に手を振って別れた。結局、井戸水で顔洗えてないじゃん。でも、俺が悪いようなので、今日は魔法の水でしました。

   今日のアラヤの午前中の仕事は、畑群の除草作業を頼まれている。エアカッターで次々と草を刈ってから、集めた草をフレイムで燃やしていくだけ。やる事は単純作業だけど畑群は広く、除草作業はアラヤ一人に任されているので、それなりに時間はかかる。

「ごめんね、アラヤ君一人に任せちゃって」

  少し休憩していた時、じゃがいも畑の収穫をしている親子が声を掛けてきた。

「いえ、これくらい大丈夫ですよ。収穫時期は人手が足りないでしょうからね」

「そうなんだよ。娘もアヤコさんの勉強会に参加させたいけど、手伝ってもらわなきゃいけなくて休ませてるんだよ。先生の勉強会は分かりやすくて人気なんだけどね」

   アヤコさんの勉強会は、子供だけでなく大人にも人気が高い。教える内容は、簡単な数学や読み書きがほとんどだが、たまに童話本や小説なども読んでくれるらしい。
   教え方も、生徒達に【感覚共有】を使って教える為、伝えたい事が心で解るのだ。だから、この村の子供達は知識をどんどん吸収している。…BLは教えて無い事を祈る。

『…だってさ。アヤコさん、来れない子には宿題を作ってあげたら?』

『分かりました。簡単な宿題を用意してみます』

   念じてみれば、案の定アヤコさんと繋がっている。今日は目覚ましコールから、念話の感覚が途切れて無かったから。ちょっとだけ怖いけど、多分技能スキル上げの一環だよね?

「ねぇ、アラヤ君。他の人が言ってたんだけど、最近スライムが侵入してきて、畑を荒らしてるらしいのよ」

「スライムが?」

「私、知ってるよ~。スライムねー、あの壁から来てたよ~」

「そっか。じゃあ調べてみるよ。皆んなは近付いたら駄目だからね?」

   娘が教えてくれたのは、村を囲む塀壁なんだけど、先週の見回りの時は異常無かったんだよね。
   しかし、いざ調査してみると、畑群の周りの塀壁には、三箇所に穴が開いていた。どれも子供が通れるくらいの小さな穴だけど、スライムなら余裕だな。
   畑群の周りの塀壁は、周りに建物が無いから夜とか真っ暗なんだよね。多分、その時に破壊されたんだろう。

「まったく、ライナスさん達は怠けてるのかね?」

   とにかく、今は午前中までに穴を塞ぐべきだな。アラヤは直ぐに製材所に木材を取りに行き、大工職人を一人加勢に呼ぶ。
   ついでだから補強も加えて、何とか三箇所の補修工事が終わった。
   それにしても、二箇所はスライムの通った跡が多かったのに、一箇所の穴の近くには、スライムの通った跡だけじゃなく、子供らしき足跡が残っていたのが気になる。まさか、外に出ていないよね?

『アラヤ君、もう直ぐご飯だよ~』

   侵入したスライム捜索をしていたら、アヤコさんの昼食の連絡が入る。

『ごめん、スライムを見つけてから向かうよ』

『スライムって、あのプニプニした丸っこいやつ?』

『そうだよ。一応、魔物だからね?見つけたら近付いたら駄目だよ。吹き矢効かないと思うし』

『今、目の前で子供達が棒でつついてるよ?』

『直ぐ行く』

   アラヤは直ぐに村長宅に向かった。着いてみたら、三体のスライムが子供達に囲まれて、ツンツンされている。ああ、いじめられている亀みたいだ。

「子供達、スライムを虐めたらいけません。ここはお兄さんに任せて、昼食に向かいなさい」

「遊んでただけだってー。自分も僕達と変わらず小さいのに、お兄さんって呼べないよな~?」

「怒るぞ?」

「うわぁ~っ‼︎アラヤが怒った、逃げろ~」

   子供にもからかわれるなんて、俺だって好きで小さいわけじゃないのに。昔から沢山食べてるけど、全然伸びないんだ。おかげでなんてあだ名もついてたよ。

「さて、(俺の悔しさ)どうしてくれようか」

「退治するんじゃないの?」

「いや、ちょっと利用しようかなって。アイス!」

   スライムを水属性魔法アイスで氷漬けにして、両手に保護粘膜を張り持ち上げる。これなら冷たくもないからね。

「先に昼食に行ってて。これを片付けてから向かうから」

   そう言って彼女と別れ、三体のスライムを持ちながら自宅へと帰った。利用するのはトイレの溜桝だ。石盤の蓋を退かして、スライムをホットブローで溶かして中へと投棄する。

「これで、スライム浄化槽の出来上がりってね」

   これは、水洗トイレを作る為の前実験的なものだ。スライムが栄養を取り過ぎて、キング的な変化にならないか心配はあるので、適度に様子見が必要だ。
   こんな事、女性陣に知られたらトイレに行かなくなるかもしれないからね。

『アラヤ君、まだかかるの?』

『今から向かうよ!』

  これ以上待たせると来そうなので、アラヤは食堂へと向かって走るのだった。
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