【完結】スキルが美味しいって知らなかったよ⁈

テルボン

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第3章 スキルが美味しいって知らなかったよ⁈

032話 フユラ村の子供達

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   結婚してから数日、アラヤと休みが合う方が、技能スキル取得の為の村の外出に同行することになった。
   今日はロハムムの森に、早朝からサナエさんと来ている。ホーンラビットやワイルドボアは既に弱肉強食を使用して狩っている。今は新たな魔物がいないかを捜索中である。

「ねぇ、アラヤ。さっきの感覚共有で感じた感覚…その特殊技能ユニークスキルを使用した時だけ感じるの?」

  熟練度を上げる為に、常に感覚共有を使用している為、弱肉強食をワイルドボアに使用した時に来た、あの旨味と快楽をサナエさんも体感したのだ。

「う~ん。捕食吸収でも少しだけ感じるようにはなったけど、はっきりと感じるのは弱肉強食の時だね。でも、獲得した技能スキル量に影響してるのか、初めて使用した時に比べて、持続時間も快楽度合いも少ないんだよね」

「そっかぁ、あの時は3日も正気を失ってたもんね。余程の快感だったんだね?」

「う…まぁね」

「ねぇ、アラヤ…まだ余韻が残ってる」

「ちょっ、駄目だよ。魔物もいる森なんだから」

   急に後ろから抱きついて、甘えてくるサナエさん。背中に当たる感覚を、お互い共有しちゃうんだよ?ヤバイです。
   俺が強制的に離れようとすると、決まって技能スキルを使用してくる。

「…魅惑の艶舞」

   はい。強制的に逃げられなくなります。感覚共有中の行為は、中毒になりそうな程の快楽に落ちてしまう。だって、お互いが感じる快感って、倍じゃ済まないからね?
   おかげで夜は三人で夫婦の営みをしてる。三人の感覚共有は、自我が無くなりそうになるよ。ただし、最高を知ったが為にルールを決めました。
   夜の営みは必ず三人で行うこと。
   月のものの日には行わないこと。
   三人の合意が必ず必要であること。

   しかし、日中はこの有り様である。若いうちは仕方ないと言われそうだけど、気配感知があるとはいえ場所は考えないとね。

「自重してくれないと、しばらく夜は無いからね?」

「……分かった」

   気を取り直して捜索を再開した。その後に発見したのは、フォレストベア(熊)とボールパイソン(ヘビ)、食人花(花)である。
   フォレストベアは、割とサナエさんの実戦経験になってくれた。肉も食べ応えがあり、残りはお土産として亜空間収納に入れる。
   ボールパイソンは、木の上からボール状になって襲ってきた奇妙な毒ヘビだ。アラヤは毒耐性もあるので、噛まれても噛み返して捕食した。
   食人花は、見つけた時点でサナエさんがチャクラムで遠くから斬り刻んだ。ウネウネした触手が気持ち悪かったらしい。
   結果的に、食人花以外は弱肉強食で捕食できたので技能スキルを新たに獲得したよ。サナエさんも、快感で再び暴走しそうになったけど堪えてたよ。

   ロハムムの森

食奪獲得イートハント技能スキル       超嗅覚LV 1(ワイルドボア)   魔爪連撃LV 1(フォレストベア)   咆哮LV1(フォレストベア)(威圧LV2の経験値として吸収されました)   ポイズンバイトLV 1(ボールパイソン)   毒耐性LV 1(既存の毒耐性LV 1に吸収され、LV 2に昇華しました)

   今日の成果は以上だね。薬草と毒草も、群生地を見つけたらちゃんと回収している。ロハムムの森には、新たな魔物は居そうにないので、次回は違う場所を調べてみよう。

   村に帰ったら、先ずは手に入れた肉(ウサギ・クマ・イノシシ。サナエさんがヘビ肉は遠慮するらしい)を食堂へと提供する。亜空間収納の中は時間経過はないみたいなので、腐敗や菌の繁殖もしていない。一応、クリーンは掛けたけどね。ここでサナエさんと別れて、今度は雑貨店に向かう。

「やぁ、アラヤ。今日は何の用だい?」

  陳列棚から、モドコ店長がひょこっと顔を出す。

「薬草が多く手に入りましたので持ってきました。あと、フォレストベアの牙や爪も」

「それは助かるよ。逆に必要な物は無いかい?」

「それじゃあ、小瓶は入荷してませんか?」

「ああ、二つ程入荷したよ。持って行きなさい」

   これは毒草をすり潰して入れる用に使う。小瓶を受け取ったら、今度は織物屋にフォレストベアの毛皮を提供する。

「うん、中々の毛皮だね。アラヤ君の皮剥ぎも上手くなってきてるから、使える部分が多くて助かるよ」

  ナーベさんは毛皮を受け取ると、手作りの焼き菓子を出してくれた。

「趣味で最近始めたんだ。まぁ、味見役になっておくれ」

   うん、普通に美味しかったよ。こうやって裁縫師には関係無いけれど、練習を続ければ調理スキルを習得したりするかもね。

「ありがとう、美味しかったです。そういえば、ナーシャさんは?」

「あの子は新たなドレスを製作中だよ。サナエさんのデザインが気に入ったんだってさ」

「それは楽しそうですね」

    織物屋の次は、自宅で毒薬と麻痺薬の製作に取り掛かる事にしよう。

「アラヤ君」

    自宅に帰る途中で、アラヤは呼び止められた。振り返ると、棟梁の奥さんのハンナさんが子供二人を連れていた。棟梁、こんなに小さい子供いたんだ。

「こんにちは、ハンナさん。可愛いお子さんですね」

「やだねぇ、私達の子はもう大人だよ。この子達は今預かってるフユラ村の子達だよ。ほら、挨拶しなさい」

「…タオです。こっちはハル。しばらくお世話になっています」

「そっか。…大変だったね」

   捕まった他の子達は、全員亡くなっている。唯一助かった二人も、かなり衰弱していたらしい。
   男の子のタオは、雰囲気は暗いけど、あの出来事を受け止め、必死に立ち直ろうとしているようだ。
  女の子のハルは、目に力が感じられない。ショックで心を閉ざしてしまったようだ。

「この子達、明日にフユラ村に帰る予定なんだよ」

「そうなんですか。確かに村の人達も心配しているでしょうからね」

「しっかりと送り届けてやりなよ?」

「へ?」

「聞いてないのかい?村長はアラヤ君達に送らせるって言ってたんだけどね」

   初耳なんですけど。しかも、達って事は他に居るのね?フユラ村の場所を知らないから当然か。

「分かりました。ちょっと確認してみますね」

    毒薬作りは後回しにして、その足で村長宅に向かう。丁度、昼食の時間前なので、村長は作業を止めていた。

「村長、聞きましたよ。フユラ村の子達の護送の件。もっと早めに知らせてくださいよ」

「うん?それは、アラヤが朝から居なかったから、仕方ないだろう?」

「いや、今日じゃなく前もってという意味です。それで、フユラ村に案内する人は誰なんです?」

「ああ、そうだな。フユラ村へはザックスに案内させる。あの村にザックスの妹が嫁いでるからね。ちょっとした顔見せにもなるだろうよ。後はモドコも付いてくよ」

「えっ?店長もですか?」

「ああ、村からの支援物資と、この時期にしか採れない物を手に入れる為にね。だから、モドコが馬車を出すからね。くれぐれも無理に飛ばすんじゃないよ?」

「分かりました」

   ああ、午後からは明日の準備だな。ザックスさんと二人で、守る対象が三人か。飛ばせないなら、日帰りは無理かもしれない。野営の準備もしておくとしよう。

   昼食の際に、アヤコさんとサナエさんには伝えておく。二人は同行を村長に頼んだけど却下された。遊びじゃないんだよって言われてたけど、戦える二人は村に残しておきたいって考えじゃないかな?三人で行ったからって、いくらなんでも羽目を外したりしないと思うよ。

   モドコ店長の馬車には、支援物資が多く載っていたので、野営道具や食料品等は亜空間収納に入れておいた。
   ちょっと不謹慎かもしれないけど、ヤブネカ村とは違う村を見てみたくて、少し楽しみな気分だよ。
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