【完結】スキルが美味しいって知らなかったよ⁈

テルボン

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第4章 魔王と呼ばれてるなんて知らなかったよ⁈

043話 初めての街 デピッケル

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   ヤブネカ村を出発して丸二日。馬車はモドコ店長に借りた。もちろん、移動にはムーブヘイストを始めから使用している。
   3日目にしてようやく、レニナオ鉱山へと辿り着く事が出来た。通常なら7日以上かかるらしい。

「わぁ!凄いね!」

「ええ、圧倒されます!」

「これが、レニナオ鉱山の街デピッケルか!」

   その街は、山を丸ごと切り抜いて出来たかのようで、段々と上へと続く住宅街と、下へ下へと潜っていく繁華街。その一つ一つの建物が、とても凝った造りとなっている。街道も様々な彫刻が並んでいて、この世界では芸術の都と呼ばれているのではないかと思う程だ。

「予定より、予想通りに早く着いたから、宿屋の手配は何とかなりそうだね」

「メリダさん、式はいつなんですか?」

   この街では村長と呼ぶ事は止めるように言われてるので、着いてからは名前で呼ぶ事にする。

「来週の天神日、5日後だね。宿屋は、挙式の3、4日前から混んで空かないだろうからね。早めに確保することに越したことは無いよ」

   こんな大きな街の宿屋が部屋が埋まるとは、ガルムさんの息子さんの挙式には、余程の人数が集まるのかもしれない。

   馬車を、繁華街の一つ横の通りになる宿屋通りに入れる。その通りには宿屋ばかりが立ち並び、様々な横看板が建物から突き出てアピールしている。

「先ずは土竜の帽子亭、ここにしましょうか」

   ネーミングセンスが何とも…。でも、三回建ての石壁造り、奥域もあり玄関も広い。宿屋の外見はさほど悪くはないと言える。馬車を店脇に停める。

カラン、カラン。

   玄関扉を開けると、扉に取り付けられていた呼び鈴が鳴る。

「いらっしゃ~い!」

   玄関ロビーは広く、円卓や椅子が置いてある。どうやら食事スペースにもなっているようだ。ロビーの突き当たりにあるフロントらしき場所に、手招きをする一人の女性ドワーフが居た。

「お泊りかい?それとも食事かい?」

   彼女はドワーフ特有の体型で、背はアラヤと変わらないくらいに低くて、スタイルは大人の女性らしさもあり恰幅がいい。髪を後ろで結んでいるが、ドワーフはほとんどが剛毛らしく、彼女も毛先が庭箒のようになっている。

「泊りで頼みたいんだけど」

「泊りなら、一室一泊夕食付きで金貨2、銀貨5枚だよ。二人部屋だけどね」

   村では一切、お金を使うことが無かったけど、ここでようやくこの世界の通貨を使うことになる。
   この世界では、お金に紙幣は無く、全て硬貨である。それぞれの国が硬貨を製造しており、その硬貨にはそれぞれの国家の紋章が刻まれる。国により、含まれる純度で多少の価値が変わるが、おおよそは以下の通りに使用されている。

大白金貨 (日本円で約1000万円程度)

白金貨 (日本円で約100万円程度)

大金貨 (日本円で約10万円程度)

金貨 (日本円で約1万円程度)

銀貨 (日本円で約1000円程度)

銅貨 (日本円で約100円程度)

   つまり、ここの宿屋は一泊2万5千円くらいというわけだ。

「それなら、2部屋を5日分頼みます」

   村長は、巾着袋の財布から大金貨2枚と金貨5枚を取り出して渡した。

「はい、確かに5日分あるね。それじゃ、改めまして、ようこそ土竜の帽子亭へ!私は土竜の帽子亭の店主をしているカカだよ。用事がある時は私か、娘のネネを呼んでおくれ。お~い、ネネ!お客様を部屋に案内しな~」

   すると、奥の部屋から可愛らしいドワーフの女の子が出てきた。見た目は5・6歳だが、ステータスは普通の大人よりも高いからね。

「部屋は二階になります。お運びするお荷物ありますか?」

「ううん、荷物は大丈夫だよ。それより、外に馬車を停めてるんだけど」

「店前にありました馬車なら、後ろにある馬宿場に移動してあります」

「おお、早いね」

   既に、お客になると予想して移動させていたのだろう。でも、断る可能性は考えなかったのかな?良く言えば気が利いてるけど、少々強引と思われそうだね。

「お客様のお部屋は、隣同士のこの2部屋で、間取りと内装は同じです。トイレは各階の通路奥にございます。夕食の時間は、5時から1階の料亭にて、宿泊客様用の日替わりメニューを御提供致します」

   ホント、子供とは思えない接客対応だ。
   部屋の扉を開けて、四人は中を確認する。扉は内鍵付き。窓は開き窓が一つ。その下に小型の箪笥が一つあり、ベッドは二つだ。

「それでは、御用の際はお呼びください」

   そう言って笑顔で待機している。すると、ああ、とメリダさんが銅貨を取り出してネネに握らせる。ペコリと頭を下げて、ネネは階段を下りていった。チップみたいなものだね。

「しっかりとした子だったね」

「あれで6歳だよ。人間だと12歳くらいかな」

「ドワーフにしたら、時間がとても大事なんだ。ボーっと生きている様なドワーフはこの街には居ないよ。そんな事よりアラヤ、皆んなの荷物を出してちょうだい」

   亜空間収納を出して、四人分の荷物を取り出す。荷物と言っても主に衣類だけどね。

「さて、部屋分けなんだけど、私とアラヤが一緒の部屋ね」

「へ?」

「ちょっとメリダさん!」

「何故でしょうか?」

「何故って、貴方達ね…道中でも散々イチャイチャしてうるさかったってのに、残り5日も同じように私に見せ付けるわけ?」

   イチャイチャしてた自覚は無いけど、独身であるメリダさんには我慢の限界だったらしい。野営の時も、彼女を起こさないようにこっそりと馬車からは離れてたんだけど、バレてはいたのかも。そのおかげで、取得データが残りわずかだったアヤコさんの念話と、サナエさんの感覚補正を習得できた。

「メリダさんが、1人部屋で良いのでは?」

「ダメよ。貴方達、簡単にタガが外れるでしょ」

「⁉︎」

   メリダさん、なんでそこまで知ってるんだ⁈この二人が、快楽に落ちると止まらなくなる事を。まさか、見られていたわけではないよな…?

「別に私が、アラヤを取って食おうなんてしないわよ。この街には今、王都や他の街からも招待客が来てるの。その中には貴族も居るわ。貴方達は仮にも貴族という立場なのよ。少しは自重しなさいって事よ」

「まぁ、そういう事なら。悪目立ちしたくないですからね」

「ちょっと、アラヤ⁉︎」

「新婚なのに…納得できません」

   二人はまだぶつぶつ言ってたけど、街で欲しい品を買う事で渋々了承してくれた。
   メリダさんから、お小遣いとして金貨2枚ずつ受け取って、繁華街へと三人で向かう。

   街路を行き交う人々は、ドワーフや人間だけではなく、時々蜥蜴人リザードマンらしき奴隷の亜人も見かけた。奴隷は飼い犬のように首輪をしている。
   大陸の西を占めるグルケニア帝国が、奴隷制度を認めており、亜人を良く従えているらしい。

「見てください、書店があります!入っても良いですか?」

「もちろんだよ。サナエさんも行こう?」

「私は、アクセサリーが見たいんだけど…」

「初めての街で離れるのは危険だから、三人で居ようよ。書店の後に、アクセサリー屋にも行くからさ」

「分かったよ」

   書店に入ると、魔導書からエッセイまで様々な種類の本が並んでいた。その中で、アラヤは意外な物を見つけた。

「将棋が置いてある…」

   製造元はポスカーナ領ヤブネカ村で、販売元にはバルグ商会の名が書いてある。ちょっとだけ、嬉しいし感動した。本当に、商品化して売り出したんだね。

「決まりました」

   本の種類で、値段は全然違い、一番高いのは魔導書。次に技能参考書、地域地図、小説、歴史本、エッセイと続く。アヤコさんは、2冊の歴史本を購入した。

  次に向かった装飾品店では、サナエさんは柘榴石のイヤリングを購入していた。真ん中に展示してある指輪の値段を見てみたが、やはりかなりの値がはる代物だね。
   とてもじゃないけど、金貨2枚で買える代物じゃないね。本当に村長に感謝だよ。
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