【完結】スキルが美味しいって知らなかったよ⁈

テルボン

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第7章 家族は大事と思い知ったよ⁉︎

095話 浴室からの脱出

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   マイホームの浴室。
   10畳はあろうかという大きな浴槽に、アラヤはウォータで水を張りヒートアップで加熱している。
    デピッケルには水道が普及しているのだが、配管内をポンプ圧で送るやり方ではなく、高所にある貯水池から高低差を利用した自然流下方式である。しかも配管ではなく水路であり、その水路に手動の汲み上げポンプの管が伸びているという、なんともずさんな水道設備なのだ。
    故に、水量の多い上流に豪邸街が出来ていて、最下流である繁華街ではあまり水量が無い。
    水が必要不可欠な繁華街では、生活魔法を商売にしている民間魔法販売会社【マクラシアン】から、水属性魔術士が派遣されているらしい。

    マイホームにも、汲み上げポンプはトイレ、厨房、浴室、庭の4箇所にある。
    水量は、豪邸街に近いだけあって充分にある。ただ、我が家には3人の水属性魔法持ちがいるので、熟練度を上げる意味も含めて3人が水を出す事に決めている。もちろん、居ない場合には手動で頑張ってもらおう。

「うん、良い温度だな」

   お湯の温度はだいたい42度くらいだろうか。アラヤは少し高めの風呂が好きなのだ。

「皆んな~、お風呂入れるよ~」

   皆んなに呼びかけると、部屋から出てきたのはアヤコさんとサナエさんの2人だけだった。

「あれ、後の2人は?」

「クララは先にDLの清掃を終わらせるそうです。カオリさんは帰ってきてから、趣味の執筆活動をしているみたいですよ?」

「あ、アラヤは、どうするの?一緒に…入る?」

「えっと…入りたい気持ちはあるんだけど、ちょっと先に魔鉱石作りをやっておこうと思ってて…」

    せっかくサナエさんからの誘いなのだけど、明日の為に、どうしても魔鉱石作りをしないといけなかった。

「うん、いいよ。ちょっと言ってみただけ。正直、まだ恥ずかしいし」

「そうです、何も浴室で見せる必要はありませんよ。後で部屋でたっぷりとお見せしますから」

「あはは…」

    サナエさんの恥じらいとは違い、アヤコさんは言葉も積極的だよなぁ。まぁ、どちらも嫌いでは無いけどね。
    2人は仲良く脱衣場へと向かって行った。一方アラヤは、空き部屋へと入り魔鉱石作りに取り掛かる。

    作業が終わったのは2時間後で、思った通り汗だくである。2人共、とっくに上がっていて、室内にいるようだ。

「さて、俺もそろそろ入るかな」

   アラヤも浴室へと入ると、室内の温度が既に下がり気味な事に気付く。当然、お湯の温度も下がっている。

「時間が経ち過ぎてるからなぁ」

    再びヒートアップをしながら、次からは浴室にもヒートアップの魔鉱石を置く事に決めた。
    充分に再加熱されたら、アラヤは体を洗い始める。すると、魔導感知に反応があった。場所は脱衣場で2人居る。熱感知も併せて掛けると、姿がくっきりと分かるようになった。
    獣耳と尻尾があるクララと、このスタイルはカオリさんだろう。どうやら執筆活動が終わったようだな。

「あら、この着替えは誰のかしら?」

「これはご主人様の服ではありませんか?」

    2人の声が聞こえ、アラヤは慌てて扉のノブに魔力粘糸を飛ばしてぐるぐる巻きした。

「あれ?開かないわ。鍵は無いはずよね?」

「もしかしたら、内鍵が付いているのでしょうか?」

     ガチャガチャと回す音が聞こえるが、何とか扉は固定できたようだ。

「ちょっとにいや!居るんでしょ?鍵を開けてよ」

「いやいや、おかしいでしょ。俺がまだ入ってるって分かったんだから、もう少し後に入ってよ」

「嫌よ、私達は既に裸ですもの。汗をかいてるから、早く体を洗いたいのよ」

「後5分もしたら上がるから、もう少し待ってって」

    アラヤは泡を急いで流して、浴槽へと入る。本当はまだゆっくりと入りたかったんだけど、仕方ないよね。

「ラチがあかないわね。遠回しに、裸の付き合いをしましょうと言ってるのに。こうなったら、強行手段でいきましょう」

  ノブをガシガシと激しく回している。

「ちょ、ちょっと!恥ずかしいでしょ⁉︎」

「はぁ?あんたが恥ずかしがってどうするのよ?普通はこんなラッキースケベイベント、男ならチャレンジして当然でしょ?」

「いやいや、ラッキースケベは偶然起きるものだから!しかも、見られる方が宣言するのもおかしいし、こっちも堂々としてたら一生覗き魔としての称号が付くじゃないか」

「ご主人様、私ならいかがでしょう?銀狼にもなれますし、今は狼人ライカンスロープの姿ですから、母から伝授された女体洗いを奉仕できますが?」

    体毛を利用した、女体洗いボディブラッシングだと⁈どんな洗い心地なんだ⁉︎
    魅惑的なワードに、アラヤの心に迷いが生じる。

「アンロック!ダメね。アイス!どうやら魔法が吸収されてしまうみたいだわ」

    アラヤが悩んでた一瞬にも、カオリはノブに魔法を掛けていたが、魔力粘糸が上手く吸収してくれていた。
    しかし、このままではマズイ。何か対策をしなければ、欲に負けてしまう可能性がある。アヤコさん達からすれば、それは立派な浮気である。それは避けなければならない。

「こうなったら、扉ごと破壊しましょう。溶け落ちろ、アッシ…うっ、こんな時に来るとは…」

     恐ろしい魔法を唱えようとしていたが、カオリは突然倒れた。このタイミングで仮死状態デスタイムがやって来たのだ。

「カオリ様!…仕方ありません。後は私がやりましょう!」

    クララは、倒れたカオリをそっと脇に避けると、扉に向かって強烈な前蹴りを見舞った。

ドガッ‼︎

    扉は勢いよく倒れ、その勢いで浴室内の湯気が舞い上がる。
    浴槽にアラヤの影を見つけたクララは、裸の狼人ライカンスロープのままに抱きつく。

「ご主人様!ペロリ…あれ?」

     顔をひと舐めして、クララはそれがアラヤでない事に気付いた。よく見ると背中の一部が破けている。

「何、この肌。鱗?」

    それは、アラヤが全身竜鱗防御の状態で脱皮した脱け殻だったのだ。竜鱗防御の効果で、肌が硬く重いままなので、中身は空洞だがマネキンのように残せたのだ。

「ふぅ、上手くいったな」

    その隙に、隠密を使い脱衣場へと抜け出したアラヤは、着替えを持って部屋へと戻る事が出来たのだった。

「ん、これはこれで素敵だわ」

    クララは、脱け殻のアラヤを抱き締める。ゴツゴツとした硬い感触。狼人ライカンスロープ時のクララには、この方が亜人族っぽくて好みだと感じた。

「ご主人様も獣化できるようになれば、三通りの愛し方ができるのだけど、それは贅沢ですわね」

    と、ここで入り口に放置していたカオリを思い出す。

「一応、体を洗ってさしあげないといけませんね」

    クララはカオリを抱き上げて、そのまま浴槽へと沈めた。沈んだ状態の彼女を、ゴシゴシと腕と足先の体毛で洗う。既に死んでるから良いものの、かなりの手抜きな洗い方である。
    この時、意識の無い彼女の頭には音声が流れていた。
『窒息耐性の技能スキルを修得しました』
    次にアラヤが彼女を鑑定できるその日まで、彼女はそれをいつ覚えたかも分からないのであった。
    彼女は、体を拭かれた後は部屋に戻されたが、ベッドに裸で寝されていた。技能の体温調節があるので、風邪は引かないのだけれども、明け方、目が覚めた時に自分が裸なので仰天したらしい。

    因みに、アラヤの脱け殻はクララの部屋にこっそりと持ち運ばれる事になった。その後はクララの抱き枕として使われていく事となる。

    おかげでマイホーム初日の夜は、後から部屋に来た嫁2人と、誰からも邪魔される事なく、夫婦3人の時間をたっぷりと過ごせるのだった。
    もちろん、ジャミングによる防音処理と、ドアノブは魔力粘糸で固定したけどね。
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