【完結】スキルが美味しいって知らなかったよ⁈

テルボン

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第9章 止めろと言うのは振りらしいですよ⁈

119話 職種の変化

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 いつの間にかベッドで寝ていたアラヤが目を覚ますと、朝になっていて部屋には誰も居なかった。
 魔導感知で見ると、どうやら隣の部屋に集まっている様だ。

「みんな、おはよう。集まって何してるの?」

 みんな、テーブルに座って紙に何やら書いている。

「アラヤ君、おはようございます。朝、目覚めたら、ちょっと皆さん大変な事になっていまして…」

「大変な事?」

「はい。実は、カオリさん以外、みんな職種ジョブが変わっていたんです!」

 全員が、鑑定を覚えた事で自分のステータスを確認できるようになったのだ。だから、自分の成長を確認していたのだろう。

「え⁈みんなが一変に?」

「そうなんだよ。私は踊り子から戦舞妃に変わってるんだ」

「ご主人様、私も獣狩人から従獣妃に変わっています」

「アラヤ君、私は伝導師から…強欲王になっちゃいました」

「え⁈強欲王に⁉︎」

 皆んなの変化に驚いたが、まさかの魔王とは考えもしなかった。特殊技能ユニークスキルの【技能与奪】を得た事と、ゴウダが魔王じゃ無くなった事で代替えという事か?

「それに、みんなに固有技能が発現してるんです。私には【感覚強奪】という技能で、軽く試した感じだと対象の一部の感覚を、一時的に奪えるみたいですね。LVを上げれば、時間が増えるか、奪える範囲が増えるかは分かりませんけど。上がったら、いろいろ試してみたいですね?」

 その話で何故、俺を見て笑顔になるんだろう?…それは、椅子に縛る必要が無くなるという事か?ちょっと背中が冷んやりするね。

「アラヤ、私にも【注目加護】って技能が出たんだけど、注目された分だけ能力向上するんだって」

 舞いをする職種だから、意味も分かりやすいね。囮効果も有るかもしれない。

「ご主人様、私が覚えたのは、【従獣連鎖】です。どうやらご主人様と行動した際には、お互いの効果が重複する様です。ちょっと、どういう事かまだ分からないんですけど…」

「ん~おそらく、どちらかにヘイスト掛けたら、お互いにヘイスト効果が現れるみたいな事かな?」

 バフ効果だけじゃなく、デバフも連鎖するかもしれない。これは要検証だな。

「ねぇ、私も鑑定覚えたから自身のステータス分かるようになったんだけどさ。窒息耐性なんて持っていたかしら?前回は無かった気がするんだけど…」

「俺自身の技能には無いから、カオリさんの技能なのは間違いないよ。いつの間にか発現したんだろうね」

 技能を新たに発現するのは、その条件下の体験がきっかけだと思うけれど、窒息って…。つくづくカオリは死に掛ける目に遭いやすいらしい。
 因みに、技能を与奪されてばかりだったカオリには、最後に調教された羅刹鳥に譲渡してから、彼女に譲渡仕直ししているので、コピーしていない状態でも皆んなと同様に技能の数がある。

「これで、仲間が増えても、技能の大量譲渡で直ぐに戦力になりますね?」

 カオリのコピーに、アヤコの譲渡を使うやり方なら即戦力だと言うクララの軽い一言に、他の3人は眉間にシワを寄せてお互いを見て頷いた。

「クララ、これ以上、嫁が増える事は無いと思うわ」

「えっと…ソーリン様の事だったのですが…」

「ああ…ソーリン君ね。彼は社長に就任したから、また一緒に旅する事は難しいと思うわ。ガルムさんみたいに、従業員を従える必要があるでしょうからね」

 それは確かに残念な事だよね。気の合う仲間と旅するのが楽しいのに。今の状態は、言うなれば家族旅行だものね。もう1、2家族居たら、キャラバンみたいな隊商になってしまうけど。

「あの、今回で全属性魔法になった事についてなんだけど、覚えた魔法がカオリさんより少ないのは何故?カオリさんも、与奪され過ぎてLV1にまで落ちたのに」

「カオリさんの場合は、一度見たら覚えてしまうからね。LVが下がっても、一度覚えた魔法は使えるんだよ。ただ、覚える魔法に個人でばらつきがあるのは、サラさんとの話で分かったね。一度、皆んなで全属性魔法の使用できる魔法をおさらいしようか?」

「そうですね。1番多く使えるのはカオリさんでしょうから、知っている魔法を紙に全て書いて下さい」

「分かったわ」

 カオリは万年筆を受け取ると、得意気に次々と魔法を書いていく。


○火属性魔法

フレイ(火)  フレイム(火炎)  ヒートアップ(加熱)   誘爆性付与(誘爆化)    フレイムフォール(火炎の滝(中級魔法・直線上の範囲攻撃魔法))

○水属性魔法

ウォータ(水)  ウォータム(水流)  バブルショット(泡玉)   アイス(氷結)    氷河期アイスエイジ(氷結の風吹(中級魔法・術者から扇状の範囲攻撃魔法))

○風属性魔法

ウィンド(風)   エアカッター(空気の刃)   ホットブロー(温風)   サクション(吸引)    トルネード(竜巻(中級魔法・縦柱状の範囲攻撃魔法))

○土属性魔法

ウェザリング(風化) アースクラウド(土操作)   サンドストーム(砂嵐(初級魔法・横円状の範囲攻撃魔法))   オーラゼーション(鉱石化) アッシドミスト(溶解の霧(中級魔法・術者から扇状の範囲攻撃魔法))

○光属性魔法

ライト(光球)   クリーン(除菌)   ヒール(小・中回復)   サンダーランス(雷の槍)   ホーリーレイン(回復・状態異常回復の雨(中級魔法・術者を中心に方円状の範囲回復魔法))   マイディガード(個体の耐久力・精神力・俊敏を短期間2倍にする(中級魔法・身体強化魔法))

○闇属性魔法

ポイズンドロップ(毒の滴(LV1麻痺毒  LV 2  遅効性神経毒  LV3即効性神経毒  LV4遅刻性猛毒   LV5即効性猛毒))  ダークブラインド(盲目効果の煙(初級魔法・術者から扇状の範囲異常魔法))   コラープス(虚脱効果)   ジャミング(視聴覚妨害)   デス(対象を確率で即死させる(中級魔法・対象と距離が1m未満で使用可能の呪殺魔法。平均成功率は15%。対象の耐性と運に影響される))  ベルセルクル(狂戦士化(中級魔法・術者の生命力が2%になるまで全てのステータスが3倍になる身体強化魔法。同時に効果期間中は自我が無くなる))

○無属性魔法

グラビティ(重量操作)   ヘイスト(瞬間加速)   ムーブヘイスト(移動加速)   アンロック(開錠)
バーサーク(狂戦士化(初級魔法・術者の生命力が10%になるまで腕力・俊敏が1.8倍になる身体強化魔法))   


「意外に知らない魔法が多いなぁ。このポイズンドロップはカオリさんはLV5まで使えるの?」

「私はLV3までだね。司教でLV5まで使える人が居ると聞いた事があるだけよ。私の魔法は大罪教の構成員だったアームズに教わったから、一般には知られていない魔法もあると思うわ。後は魔導書を買って覚えたのも有るわね」

「魔導書?」

「そう。魔法が記された指導書よ。購入者以外が読むと内容が消えるというトラップ付きの本なの。私が買ったのはホーリーレインだけど、価格は大白金貨2枚だったわ。私の本の売り上げ利益のほぼ全額だったけど、その価値はあると思うわ」

 大白金貨2枚は高過ぎるでしょ⁉︎魔導書高いなぁ。しかも、転売できない仕様なんて。

「そう言えばサラさんて、美徳教団の構成員みたいだったよね?勇者側にも、配下として構成員が付いてたんなら、彼女はその1人なのでしょうけど。彼女、魔術士だったから、美徳教だけが知っている魔法も使えるんじゃないかな?私が覚えれたかもだけど」

「確かに。でも、今更魔法を全て見せて下さいとは頼めないよ」

 魔法を見ただけで、その術式が分かり覚えれるというカオリなら、将来的に全ての魔法を会得できるのではないだろうか。

「それに、なるだけ早くこの街から出たいからね。道中で、みんなにもまだ覚えてない魔法を感覚共有で習得できるようにしたいね。カオリさん、頼りにしてるよ?」

「ふ、フフッ。任せなさい!みっちりと教えてあげるわ!」

 頼られて、俄然やる気を見せるカオリ。皆んなも早く覚えたいと、着々と出発の準備を進めた。


       ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 地盤崩落により崩壊した美徳教団の施設。仮の施設は、生き埋めにしたベヒモスの直ぐ近くに建てられている。

「ベヒモス象牙の、粉末の魔力量の解析を頼む」

 1人の団員が、粉の入った布袋をフラスコやビーカーなどが並ぶ机の上に置いた。ここは、教団内部に設けられた実験室みたいな部屋で、ベヒモスの様々な検査を行なって行く予定である。

「セパラシオン司教様は?」

「司教様は、教団跡地に向かわれた」

「ああ、咄嗟に脱出したから、荷物がそのままだったからなぁ。司教様の所持していた魔導書も埋もれてしまったままらしい」

 魔導書だけでなく、大事な品物を掘り起こしに来ていた司教達は、広げた大ふろしきに次々と品物を並べていた。

「ん?…すまない、私は少しだけ出てくる」

 セパラシオンは、部下達に後を頼むと教会跡地に向かった。そこには、瓦礫に腰掛ける1人の同年代の老人がいた。

「相変わらず、気配を完全に消しているな。ベルフェル司教」

「これは最早、私の生活の一部なのだよ。セパラシオン司教」

 セパラシオンも、対面する位置の瓦礫に腰掛ける。此処で争う気は無いと判断したのだ。

「それで?此処に来たのは話があるからだろう?件の魔物は大罪教そちらが関与していたと認めるのかね?」

「ハハ、まさか。今回の件は其方の勇者が招いた事と大罪教我々は見ている。それに、私の話はこの件とは関係は薄い」

「どういう事かな?」

「興味深い人材を見かけたのだが、私は鑑定が不得意なものでね、名を調べ損ねたのだよ。ベヒモス戦でも活躍していた少年なのだが、美徳教そちらは把握していないかなと思ってね」

「ああ、私はあの戦いの際は、団員の蘇生に忙しくてね。それに、私自身も鑑定はまだ教団内では凡人止まり。己の分野でも無いからね。ただ、その少年については、分別の勇者から幾つかの情報はあるが、名は確か…アラヤだったかな…?」

 セパラシオンは、何故ベルフェルがその少年を気になるのか、探りを入れようと考える。しかし、その反応を見てか、ベルフェルは似合わない笑顔を見せて立ち上がる。

「いや、名さえ知れれば良いんだ。後はこちらで探すとしよう。しかしタダで情報を貰うにはいかないな。そうだな、この借りはこれでどうかな?」

 ベルフェルはそう言うと、片足で地面を軽くタップした。すると、水の波紋の様な波動が辺りに広がっていく。そして、教団跡地の下を通過した時に光る箇所が数箇所現れた。

「探し物の場所を分かりやすくしておいた。では、続きを頑張ってくれ」

 そう言ってその場を立ち去る。自然と彼の口からは笑いが込み上げてくる。奴から知りたかったのは名前だけではない。美徳教団側が知っている人間かどうかだった。
 鑑定技能が低い自分だが、技能無しでも大抵の事は感覚で分かる。ステータスが見えても、ジャミングによる偽物か本物かも。
 あの少年は、普通ではない。直感でそう感じた。だから、疑った。案の定、分別の勇者とも共闘していた。
 だが、セパラシオンと分別の勇者は把握していなかった。つまり、美徳教団の勇者達の誰でもないという事だ。

「クククッ、そうか…あの少年が。既に死んだもの聞いていたが、生き延びていたとは。これは直ぐにでも報告せねばならないな。暴食王が生きていたと…」

 先ずは商業ギルドで居場所の特定だと、ベルフェルは杖を取り出して直ぐ様向かった。
 しかし、彼が商業・冒険の両ギルドから居場所の情報を得る事が出来なかった。ようやく彼が、アラヤの宿泊している宿屋に辿り着いた時には、アラヤ達はこの街から出たと聞かされたのだった。
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