【完結】スキルが美味しいって知らなかったよ⁈

テルボン

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第15章 その力は偉大らしいですよ⁉︎

222話 答え合わせ

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 王都の南地区。
 南門入り口は、ラエテマの王国のあらゆる領地へと繋がる大通りに面している。それ故に、王都の玄関とも言える南区には、商業施設や繁華街が栄えている。
 商業ギルドと冒険者ギルドも南区に有り、悪魔出現した際にも、多くの来客や冒険者達が居た。
 両ギルドがある事で、対応はとても早かった。両ギルドのギルドマスターは、即座に避難民受け入れに動き多くの都民を助けた。

「都外に避難する者は引き止めないが、出てからの安全は保証できない。我々が守れるのは今はまだこの地区のみだ」

 冒険者ギルドマスターのトーマスが、新たに来た避難民に対し、区域内でのルール説明をしている。
 現状は、5日で商業ギルドの蓄えもみるみる内に減り、避難民全員の物資は不足し出して、お世辞にも満足な食事は提供はできていない。だから、他領に知人や親戚がいる者達は王都から出て行く事もあった。

「アヤコ夫人、君達が届けてくれた物資で、また多くの都民が助かるよ」

「いえ、これでも足りない事は分かっています。次の物資が届くのもおそらく6・7日後くらいになるかと。やはり、根源である厄災の悪魔を討伐しなければ、打開できないと思いますが…」

「ああ、分かっているよ。でも生憎、うちのギルドを拠点としている高ランク冒険者達は今、他領に出払っていてね。Aランクのパーティーが2組居るが、危険区域の減少と取り残された人命救助で手一杯だ。並大抵の兵士や中ランク冒険者では低級魔物の相手ぐらいで、頑張っちゃいるが中位悪魔には歯が立たないだろうな。俺が出る手も有るが、正直、厄災相手に1人では勝てる気はしない。アラヤ殿の手助けを期待できるかな?」

「…聞いてみない事には何とも言えません。それに、充分過ぎる程に手助けはしていますからね?」

「相応の報酬は出すさ」

 これは見え透いた罠で、報酬を払う為には冒険者ギルドに加入してくれと言う事は目に見えている。
 大体、王妃と王女を救出した事で、王国から報酬は出る事は間違いないので、リスクの大きい討伐依頼を受ける程のメリットは無いのだ。

「…一応、聞いてみますが、期待はしないでください」

 アヤコは一度倉庫へと戻った。倉庫には丁度、ハウンが戻っていて兵士達を連れ帰り寝かしていた。その兵士達をサナエが治療している。

「ハウン、こまめに魔力を回復するんですよ?サナエちゃんもね?」

「私は、魔力電池の在庫があまり無いわ」

 サナエにアヤコが持つ魔力電池を渡し、我慢する傾向があるハウンには見てる前で使わせた。

「そろそろ、カオリさんの仮死状態デスタイムも終わって目覚めてる頃です。私とカオリさんで交代しましょうか」

 アヤコが馬車の寝台を見に行くと、カオリの姿は見当たらなかった。

「カオリさん…?」

 使用した形跡があるベッドを触ると、ほのかに温かい。まださほど時間が経っていない様だ。どうやら、目覚めて直ぐにテレポートで何処かに飛んだらしい。

「…また単独行動を⁉︎もうっ!」

 その当事者であるカオリは、王城の地下墳墓の下にある遺跡に来ていた。では初めての場所なのだが、テレポートは上手く働き彼女を宝物庫へと移動させたのだ。

「散らかっているわね…。こんなに物があった印象は無いけど」

 体験した仮想未来では机の上に魔導書が置いてあるだけの部屋だった。同様の机はあったが、肝心の魔導書は見当たらない。

「物に埋もれているかも」

 散らかっていた部屋の物を一気に亜空間へと入れる。しかし、亜空間収納には、魔導書の表記はされなかった。

「やはり誰かが持ち出したのね。私の魔導書とがしたかったのだけれど…」

 カメラアイで覚えていたとはいえ、仮想未来の記憶だし、初めは読め解けなかった本だ。ちゃんと照らし合わせたかった。

「仕方ないわね。…祭壇はどうかしら」

 開いたままの扉を見つけ、彼女は階段を降りて行く。ライトの光球が先行して足元を照らし、祭壇の部屋へと直ぐに着いた。

「…誰かしら」

 見覚えのある祭壇の前には、見た事の無い大罪教司教の遺体があった。死後数日経っている事は分かる。どうやら悪魔解放に来た1人の様だが、仲間割れでもあったのだろうか?

「祭壇には供物を置いた形跡があるわね。…魔王の誰か?…いや、血族かしら」

 魔導書を解読できた事で、魔王を贄とした供物(媒体)が必要だと分かったのだが、仮想未来では自分は間違った供物を置き酷い目にあった。思い出すだけで、自分の迂闊さが腹立たしい。

「思えば変だったのよね」

 悪魔解放には魔王の供物が必要と知っている人物が居て、それは当然、大罪教団の誰かな訳だけど。
 教団そのものが悪魔を解放したいのであれば、異世界転移の時点でクラスメイト達の様に皆殺しにした後で遺体を回収すれば良い。
 だが教団は魔王だけを擁護し、自由にさせている。故に教団ではなく、1部の人物の犯行という事だ。

「…にいやは故意に分けられた?いや、それは無いわね。多分、初めの狙いは私だった」

 美徳教団への情報漏洩。強欲魔王のゴウダにも息が掛かっていた可能性もある。そして、寛容の勇者を私に差し向けた。

「結果は、ミネルバ様に救われたのよね」

 殺された直後、王女に私は回収された。おそらくは、その人物は私の遺体を回収する予定だったのだろうけど失敗した。

「だとすると、今回使用された供物は…香坂さん?…それとも、ゴウダかしら?」

 私以外に死亡が確認された魔王は、この2人である。嫉妬魔王である香坂の死亡は、計画的とは限らないが、遺体は当初移動する予定だった国に護送されて、アンデッド化したと聞いた。しかも、彼女の死亡は数ヶ月前の話だ。だとすると、最近、監獄を襲ったに殺されたというゴウダが当てはまる。

『カオリさん!今何処ですか⁉︎』

 突然、脳内にアヤコの念話が届いた。どうやら抜け出したのがバレた様だ。声的にだいぶ御立腹らしい。

『ち、ちょっと調べ物があって…』

『まさか1人で悪魔に向かおうなんて考えてませんよね⁉︎今すぐに帰って来てください!』

『わ、分かったわよ』

 確かに、もうこの遺跡で調べるは無い。帰ろうとした時、ふと視界に映った遺体に目が止まる。
 確かに此処は墓の下ではあるが、埋まっているとは言い難い。何者かは分からないが、この場所に放置したままでいるのも可哀想に思えた。
 カオリは遺体を亜空間収納に入れて、アヤコの下にテレポートをした。

「あ、帰って来たわ」

 馬車の前に現れたカオリを、アヤコとサナエだけでなくアラヤも待っていた。

「心配になって、私がアラヤ君を呼びました」

 アヤコとサナエは見るからに怒っているのが分かる。まぁ、心配させた自分が悪いから謝るしか無い。

「まぁまぁ、2人共それくらいで。それで、調べて何か分かったのかい?」

「にいや…」

 アヤコ達を宥めるアラヤは、カオリを怒るでも無く、やりたかった事が出来たかだけを聞いてきた。その目は、自分の事だけを考えて行動したのでは無いと、カオリを信じてくれている目だ。
 嬉しい。やっぱり好き!こんな私を分かっていてくれる。信じてくれている。

「もちろんよ!」

 その期待に全力で応えなければいけない。私は彼の伴侶パートナーであり、頼れる相棒パートナーでありたいから。

「今から分かった事を説明するわ!この遺跡にあった魔導書…偉大なる古代魔法【禁呪】と、悪魔アスモデウスの対処法をね!」

 カオリは自作の魔導書を取り出し、皆んなに今まで調べた事と、自身の見解を語り出すのだった。
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