【完結】スキルが美味しいって知らなかったよ⁈

テルボン

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第17章 追う者、追われる者、どっちか分からないよ⁉︎

240話 ドラゴン退治

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 自然洞窟を移動するアラヤ一行。ドラゴン討伐に同行するメンバーは、アラヤ、アヤコ、クララ、アスピダ、オードリー、アフティ、レミーラ、中位精霊のサラマンドラ(火精霊)、ノーム(土精霊)、エキドナ(闇精霊)だ(他の精霊は結界維持の為に留守番)。
 サナエ達は浮遊邸の土いじりの為に残った。

『やっぱり、ドラゴン退治と言ったら俺様だよなぁ~』

 得意気に先頭を進むサラマンドラは、火の玉をライトの様に浮かせながら先を進んでいる。その後を、ノームが通路を作っているので、凹凸や高低差によるアスレチック感は無く、散歩をしている様だ。

「サラマンドラは、ドラゴン退治に詳しいのかい?」

『おうよ!いろいろ知ってるぜ?』

『…そんな訳無い』

 エキドナが冷ややかな目で見ているけど、気にも留めずに語り出す。

『モザンピアにも、小さなドラゴンは居たんだぜ?まだ俺が小さかった頃、火の魔素に誘われて向かった先に、ドワーフの野営地があったんだ。そいつらが、子ドラゴンを狩りに行くって言っててさ、気になって松明に紛れて付いてったんだ』

「へぇ、そのドワーフ達は食材目的でドラゴン狩りを?」

『それは分かんないが、全員が若いドワーフだったな。戦闘経験も大して無いみたいで、他の魔物と遭遇してテンパってる奴も居た。まぁ、ドワーフ特有の力押しで倒していたけどな』

「ひょっとしたら、成人の儀式かもしれませんね」

 レミーラがそう言って、ソーリンの成人式を思い出した。確かにドワーフの古い習わしで、ドラゴン退治が昔はあったと言っていたよね。ソーリンも、子ドラゴンを狩って、その肉を美味しく戴いたからね。あれは美味かったなぁ。

「それで、そのドワーフ達は子ドラゴン退治は上手くいったの?」

『子ドラゴンはな。運悪く、帰り際に親ドラゴンに出会してしまった。後は呆気ないもんさ。あのドラゴンの息吹ブレス、マジで美味しい魔素だったなぁ』

 思い出に浸るサラマンドラを呆れて見るエキドナは、アラヤに小声で耳打ちする。

『…私もサラマンドラも、微精霊時は地下通路の松明付近で過ごしていたの。ドラゴンに遭遇したとか、本当ならとっくに昔から周りに自慢してる。…あれは妄想』

「う~ん、そうかもね。でも、その妄想が彼の原動力になるなら、今は聞いていてあげよう?」

『…アラヤがそれで良いなら、私は構わない』

 ゆっくりと歩き進める事1時間弱。そろそろ目的地だという手前で、一度休憩を挟む。
 あれだけ元気だったサラマンドラが、喋り疲れたのか、やや大人しくなっていた。

『この距離でも、かなりの個体だと分かるな』

 ノームが、地面を触りながら何かを感じ取っている。

「小柄の亜種じゃないのか?」

『いや、今は休んでるみたいだが、地に掛かる体重と体積からして、暴風竜エンリルとさほど変わらない大きさだと思う』

「エンリルと同じくらい?あのオカマ兵長、アラヤ様に曖昧な情報を提供するなど、許せませんね。帰ったら懲らしめましょう」

「オードリー、その時は私も加勢します」

 アヤコまで加わりそうになって、アラヤは慌てて止めた。

「別にそんな事しなくていいよ。彼も部下からの報告を信じただけだろうし。それに、大きいなら獲得素材も多いって事だからね?ただ、洞窟内が狭かった場合はいろいろと厄介だ」

 ドラゴンが棲家に選ぶ様な場所だから、流石に身動き取れない程狭い訳は無いと思うけど、戦闘をするだけの空間があるかが心配だ。
 戦闘中に崩落したとか、洒落にならないからね。

「調査結果の地図では、わりと広い空間と通路ではあるけどね」

「ご主人様、私とオードリーで先に下見をしてまいります」

 クララは人狼ヒューウルから銀狼に姿を変え、オードリーを背中に乗せた。

「うん、寝ている場合もあるから、慎重にね?」

「「はい」」

 魔導感知にも、大きな魔力の塊が続く洞窟の先にある。これは気合いを入れて挑まなきゃね。
 しばらくして斥候の2人が戻って来る。

「アラヤ様、大変です!」

「落ち着いて。いったいどうしたの?」

「ドラゴンは1匹ではありませんでした!3匹の小柄なドラゴンが重なる様に寝ています」

「なるほど、一箇所に寝ていたから大きな個体に感じた訳か」

「はい。しかもそのドラゴンは装甲竜という名のドラゴンでして、竜鱗が硬過ぎて討伐ランクはSに該当するんです!」

「つまり、S級討伐対象が3匹。まぁ、ドラゴンは皆S級みたいなものでしょ?それで、冒険者はどう対処しているのかな?」

「装甲竜の腹部側は柔らかいらしく、そこを集中的に狙うか、奴等が餌にしているものに毒を入れるかです」

「毒か…。耐性無い皆んなには肉が食べれなくなるからなぁ」

「アラヤ君、とりあえず見てから考えませんか?」

「そうだね」

 全員でゆっくりと広場を覗くと、体を丸めて眠る装甲竜の姿が確認できる。
 あれだ、アルマジロじゃなくて、刺状の角が多くある恐竜の…アンキロサウルス?に見た目似ているな。
 装甲竜が寝ている近くに、ヒヒイロカネの鉱脈らしき場所が見えた。他にも、広場にはそれっぽい場所が分かる。レミーラがソワソワしだしたが、まぁ、今は後回しだ。

「硬いって、どれだけ硬いのかな?」

「噂だと、アダマンタイト並みだとか。通常の物理攻撃では歯が立たないかもですね」

「う~ん、いっその事、竜鱗溶かしちゃう?」

 竜鱗さえ溶かせば、物理攻撃も簡単に通るだろう。むしろ全身が弱点になるんじゃないかな。

「アラヤさん、それは勿体ないですよ。竜鱗も立派な素材になる…あっ、そうだ!以前頂いた、あの竜鱗で作った作品があるんです!試し斬りして欲しかったんでした。と言っても、短剣が5本なんですけど」

 レミーラが、ゴソゴソと素材回収用の袋から短剣を取り出す。短剣を鞘から抜くと、刀身が角度で色が変わる不思議な短剣だった。

「初めて見せてもらった時も、普通の竜鱗じゃないって思ってたけど、浮遊邸に暴風竜エンリル様が居て納得だった。錬成するのも難しかったけど、私ができる最高のものになったよ。加護っぽいのも付いてる感じだし」

 渡したのはアラヤの脱皮竜鱗なんだけど、レミーラには一応エンリルから貰ったと言ってあるんだよね。
 鑑定で見ると、確かに付いてるね加護が。

 名無しの短剣 【業物】

 【精霊達の祝福】熱・冷・硬・斬・浄・染・重に優れた効果を発揮する。

「良いね、試し斬り。どっちの竜鱗が優れた素材か比べてみよう」

 アラヤは、クララ、アスピダ、オードリーに短剣を渡す。

「「ええっ⁉︎良いんですか?」」

「3匹居るからね。それに、短剣コレはまだ試作品だから、後で返してもらうけど」

「「はい!」」

 正直、試作品って段階じゃない気もするけどね。それでも、アスピダとオードリーは、試し斬りに参加できる事に感激している。
 アフティは残念そうにしているが、彼女は従魔は使える様になっているが、まだまだ戦闘向きじゃないからね。

「アフティには、レミーラを守ってもらわなきゃね」

 一応、彼女にも短剣を渡しておく。これは試し斬り用ではなく、ただ安心させる為だ。いざとなったらアヤコが何とかしてくれるだろうからね。

「じゃあ、始めようか!」

 アラヤ、クララ、アスピダとオードリーの3手に分かれて、それぞれが1匹ずつを狙う。

「せーのっ‼︎」

 装甲竜の背中に飛び降りる様にして短剣を突き立てる。
 サクッと抵抗感があまりにも無さ過ぎて、アラヤは思わず飛び退いた。刃先にはしっかりと装甲竜の血が付いている。

「斬れ過ぎ⁉︎」

 クララの方を見ると、彼女も楽々と刺さったみたいだ。しかし、アラヤよりは硬さを感じた様だ。

「斬れます!だけど、やっぱりまた硬いです!」

 オードリーとアスピダの方は、斬る事はできるが、竜鱗を貫くまでには至っていない。

「アラヤ君、おそらく魔力量が影響あるかと思います!」

 観察していたアヤコが、斬れ方の違いにいち早く気付いた。言われてみれば、僅かだが魔力を吸われているな。

 グォォォォッ‼︎(痛いだろぉぉっ‼︎)

 寝ているところを一方的に刺された装甲竜達が、アラヤ達に突進して来た。アラヤとクララは難無く躱すが、アスピダとオードリーはそうはいかない。

「くっ!」

 アスピダが素早く盾を構えて衝撃を逸らして乗り切る。ところが、怒りが収まらない装甲竜は、2人目掛けて火の息吹ブレスを吐いた。

『頂きぃっ‼︎』

 2人の目前にサラマンドラが飛び出て、息吹をそのまま吸収した。

『こっちは俺達が手伝うぞ!』

 2人の前に並ぶ精霊達。うん、あっちは大丈夫そうだ。サラマンドラも、妄想ではなく実際のドラゴンとの対峙に活き活きしている。

「短剣だと深くは刺さらない。各自、工夫して攻略しよう!さぁ、戦闘訓練開始だ!」

 アラヤ達の、半分は訓練みたいな装甲竜退治が始まったのだった。
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