【完結】スキルが美味しいって知らなかったよ⁈

テルボン

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第24章 それは世界の救世主らしいですよ⁉︎

346話 手掛かり

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「…カハッ‼︎」

 無呼吸状態にあったのか、アラヤは目を覚ますと同時に強く噎せ込んだ。

「…笑えない未来だな」

 既に結界は解かれているようで、開かれた窓に向かい、イトウはフゥーッとタバコの煙りを長めに吐いている。

「一瞬で星ごとリセットされた…。あんなの無茶苦茶だ。信者のヌル虚無教団の奴等すら、誰一人助からないじゃないか」

「神には、我々と等しく要らない存在なんだろう。なんにせよ、例えこの月の庭モーントガルテンに居たとしても、逃げ場は無いな」

 大地も海も、おそらく大気さえも無い状態にされた。
 つまり、他の創造神達が創り上げた全てを消したのだ。

「アレが召喚されるのは、いつ頃でしょうか?」

「明確には分からないな。今の現状を見る限り、然程遠くない未来だな」

「うぅ、やはり情報量不足というやつですね。知りたい情報を大して得られなかった」

「いや、そんなこともないだろう?魔法陣が創造神を召喚する目的だと分かったし、お前達が暴食の悪魔をフレイア神殿で探している事が分かった。これは、大きな手掛かりとも言える」

 確かに、仮想未来の目的だった魔法陣の狙いは分かった。
 それに、召喚を止める事に関連しているのか、未だその記録が無い厄災の悪魔、暴食の悪魔を探していたということ。
 直ちに取るべき指針として、考えても良いかもしれない。
 それと、別の事も分かった。
 それはヨハネスの事だ。1人現れた彼の側には、契約者パートナーである光の大精霊ミフルが居なかった。
 彼には、正にその助けが必要な場面だった筈だ。
 例え相手が決して敵わぬ神だとしても、ミフルなら立ち向かうと思っていたんだけど。

「ともあれ、後はお前次第だな。協力はしたんだ、俺は必要となるその時までは好きにさせてもらうぞ?」

「はい、ありがとうございました」

 イトウに礼を言ってアラヤは退室した。管制室へと戻る途中、技能スキル【生命の檻】の中を覗く。
 檻の中に居るベルフェル司教は、頭を抱え深く考え込んでいる。

『ベルフェル司教、貴方の体験を聞かせてもらえますか?』

「……アレが、起こる未来だと言うのですか?」

『可能性の1つです。…ただ、貴方を仮想未来で見掛けなかった。つまり、貴方と私は別々の位置であの終焉を迎えた。だから、貴方が見た未来を話して欲しいのです』

 ただ、彼が別の場所で未来を見たのなら、彼を【生命の檻】から出している事になる。

「…私は気が付いた時には、何故か大罪教教皇様と共に居ました」

『教皇様と?という事は、極秘とされている教皇様の居住地ですか?』

 帝国に身を置く美德教教皇ヨハネスとは違い、大罪教教皇はその所在を大司教以外には教えていない。
 古くから対立する美德教団からの刺客を避ける為らしい。

「どうでしょうか。少なくとも、私は一度も見た事の無い場所だと分かりました」

『貴方は、そこで何をしようと?何かをするべきだと言われましたか?』

「……」

 黙るベルフェル司教は、ジッとアラヤを見上げる。

「…ええ、言われました。貴方を殺すようにと」

『えっ⁉︎』

 あの大罪教教皇が、俺の殺害を指示しただって?俺達を認めてくれていたと思っていただけに、ちょっとショックなんだけど。

「…祭壇場所が分からない暴食の悪魔を目覚めさせる為、と言っていました」

『また暴食の悪魔か…。その悪魔が、魔法陣の発動を阻止できる何かを秘めているのかな?それを目覚めさせる?厄災の悪魔召喚には、専用の祭壇で魔王の一部を捧げることが条件なのでは?俺を殺す事で何故目覚めると?』

「確かに、召喚にはその手順が必要です。ですが、暴食の悪魔だけが、未だ祭壇場所が不明なのです。それ故に、大罪の繋がりがある暴食魔王が死亡した際に出る僅かな反応に賭けたかったのでしょう」

 そういえば、今までの暴食魔王は転移後、死亡が早かったと聞いたな。
 しかし、見つかっていないということは、魔王として未熟な時期に死亡したので、厄災の悪魔には影響は出なかったのだろう。

『…俺の殺害を指示するなんて、教皇も切羽詰まる状況だったんですね』

「教団が把握するフレイア神殿は、世界に約200あまり。当然、全ての神殿の調査は済んでいます。ですから、新たに神殿らしき場所を探すほかないのです」

『分かりました。暴食の悪魔探しは、大精霊達にも協力を要請します』

「なんと、大精霊達に⁉︎」

『ええ、大丈夫だと思います。後は、暴食の悪魔が何を成せるのかを調べなければいけませんね』

「……アラヤ殿、私に暴食の魔王の詳細を調べさせていただけないだろうか?」

『…ベルフェル司教、貴方はヌル虚無教団側の人間ですよね?貴方を出したら、新たに得た情報を教団に報告するかもしれない。それなのに、俺が許可すると思いますか?』

 そもそも、彼はヌル虚無教団教皇のダクネラ=トランスポートと友人の関係を持つ。
 流石に野放しにするには危険だと思う。
 
「…都合が良いと思われるかもしれませんが、仮想未来アレは私の望む浄化ではありませんでした。ダクネラと昔に語りあった世界浄化は、全てを零にするものではなかった。私は、彼の真意を確かめたい」

『それは、ダクネラに直接会いに向かうということですか?』

「難しいのは重々承知しております。ただ、ヌル虚無教団内の暴食の悪魔に関する情報は、必ず入手し報告する事を誓います。お願いです、私を彼の下へ向かわせていただけませんか?」

 ベルフェル司教は、檻の中で土下座をし懇願する。とても欺いている様には見えない。

『分かりました。但し、誓いの呪文を受けてもらいます。それと、監視を付けて定時報告させます。監視は精霊を付けますので、周囲を気にする必要はありません。それでよろしいですか?』

「はい、ありがとうございます。必ずや、有益な情報を仕入れてみせます」

 元々、気配を消すことに関しては彼は凄腕だ。それはアラヤ自身も分かっている。
 彼ならば、ヌル虚無教団側に敵視されたとしても、簡単には捕まらないだろう。

『あんな未来にしない。そこだけは絶対に裏切らないでください。お願いしますよ?』

 共通する目的は同じ。それ以外の考えまでアラヤは抑えつける気はなかった。
 彼を信用しているわけではない。だが行動を規制し過ぎると、かえって教団に疑われるかもしれないという不安があった。

「もちろんです」

 アラヤは誰も使用していない空き部屋に入ると、契約無精霊スカルゴを呼び寄せた。

『何か用なんだな?』

「ああ、君に特別任務を頼みたいんだ」

『特別なんだな?任せるんだな!』

 アラヤは、やる気を見せるスカルゴに、【生命の檻】から出したベルフェル司教との作戦を伝えた。

『敵地潜入…なんだな?』

「よろしくお願いしますね、スカルゴ君」

『うぅ、何だか苦手な匂いなんだな?』

 やはり、彼は精霊視認と精霊言語の技能を持っていた。
 ただ、悪魔の血も流れる彼の魔力の匂いは独特らしく、契約者は今まで作れなかったらしい。

 彼に、月の庭モーントガルテンの情報漏洩禁止の誓いの呪文を掛ける。

「アラヤ殿、私を信じてくれてありがとう」

 ベルフェル司教は深々と頭を下げると、スカルゴを肩に乗せ、魔人国家ソードムへとテレポートしたのだった。

「う~ん、俺も神殿探しに取り掛からないとな」

 未発見の神殿の捜索。協力を頼むとしたら土の大精霊ゲーブ水の大精霊アーパスだろうか。
 大地の事ならゲーブ。海の事ならアーパス。この2大精霊なら、必ず見つけることができるだろう。
 先ずは、妻である風の大精霊エアリエルに詳細を伝えて、大精霊の御宅訪問をするとしよう。
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