【完結】スキルが美味しいって知らなかったよ⁈

テルボン

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第24章 それは世界の救世主らしいですよ⁉︎

348話 大精霊と神殿探し

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 風の大精霊エアリエルと共に上空を飛ぶアラヤは、大気感知にハウンとアゲノルの反応を捉えた。

「見つけた。パガヤ王国の北西沖に居るよ」

『分かったわ』

 グラビティで軽くなったアラヤを更に強く抱き抱えて、エアリエルは速度を上げた。
 前もって海底遺跡には、会いに行く事を連絡しておいたのだ。

 2人がその海上に着くと、海面に遺跡の入り口が浮上した。
 その中から、アゲノルとハウンが姿を見せて手を振っている。

「ようこそ、エアリエル様」

「アラヤ様、ようこそおいでくださいました」

「2人共、急にごめんね?」

 出迎えた2人の下に降りたアラヤ達は、2人に案内され遺跡内へと入る。
 入り口は閉められ、再び海中へと沈んだ。

『ほぉ、以前来た時とは見違える程に、生活感があるな』

 内装は、以前のただ古い遺跡感は無く、壁は淡い水色の珪藻土でトラバーチンの縞模様を再現している。
 所々に壁花壇もあり、地上の花も植えてある。
 天井にはライトの魔鉱石が設置されていて明るい。
 そもそも、全体的に明るい色が多いのは、日光が当たらない場所だからこその配色だろう。

「俺は初めて来たけど、凄く良い感じだね。まるでリゾートホテルだよ」

「だろう?前世界でも実際には行った事無いんだけどね」

 用意したお土産を亜空間収納から取り出しアゲノルへと渡す。

「おっ?ありがとう!調味料と肉類はマジで助かるよ」

 結局、アーパスへと土産物を渡すよりも、仕えるアゲノル達に何か渡すべきだとエアリエルが決めたのだ。

 遺跡内は水精霊達も多く、来客のアラヤに興味津々でついてくる。
 やがて行列になりかけたので、アゲノルがこれ以上は邪魔になるなと、小さな魔力玉をばら撒いて散らした。

 最奥にある大広間を、水の大精霊アーパスの寝床として改装してあり、水苔の絨毯の上に置かれた保護粘膜張りのウォーターベッドに、ゆったりとくつろぐアーパスが居た。

『貴女まで来たのね?』

『大したお出迎えだな?』

 エアリエルとアーパスは、出会いの挨拶と言わんばかりに睨み合ったが、直ぐに表情を戻して笑顔を見せた。

『辛気臭かった場所が、中々に良い住居となったではないか』

『当然よ。アゲノル達が要望通りにしてくれるからね。ブーちゃんにも受け入れられる様に、地上の木や花もあるのよ?』

 アーパスもこの変化を、かなり満足しているようだ。アゲノル達も頑張っているんだね。

「アーパス様、この度はお願いがあって参った次第です」

『…聞いてた魔法陣の件とは別の案件ってこと?』

「はい。実は、新たに厄災の悪魔の遺跡を探してまして。アーパス様の力で、海底や大河に遺跡がないか調べたいんです」

『遺跡?つまりは、この住処みたいな建造物?』

「はい。アーパス様なら、世界中の水中を感知できるんじゃないかなと思いまして…」

 エアリエルの加護により常時回復するアラヤでも、1日に2回が限度なほど、あり得ない大量の魔力を消費する大気感知だが、その制度は密閉されていない地上の全てを感知できる。
 ただ、情報量が多過ぎる為に、頭がパンクしそうになる。なので、念写で記録するのが一番無難だと分かっている。

 そんなエアリエルの大気感知と同様に、アーパスも水の感知ができると考えたのだ。

『もちろんできるわよ?だけど、せっかくだから3人でしましょうか』

「3人?」

『私と、アラヤとアゲノルの3人でよ。自分で使えた方が後々便利でしょう?感覚さえ掴めば簡単よ?』

 ああ、これは早く覚えさせて楽しようと考えているな。
 まぁ、感覚共有があるから覚えるのは確定だろうけど。

 アラヤとアゲノルはアーパスと手を繋ぎ、瞑想に入る。

『良い?始めるわよ?』

「「はい、お願いします」」

 繋がるアーパスの手へと、大量に水の魔素が集められ、3人の魔力が一気に消費される。

「「…っ⁉︎」」

 エアリエルの大気感知は、果てしない視界の拡張感覚があったが、アーパスのその水域感知はどっぷりと水中に沈んだ感覚で、360度周囲に海や川の展開図が映る。

「ウプッ…」

 やはり、突然の多大な情報量に酔い吐き気を催す。
 何とか堪えた2人は、無地の羊皮紙に急いで念写を始める。
 情報を早く写して吐き出す(消去)為だ。

『フム…面白いものだな。私の感知と違い、海図中心の世界地図とは…』

『私から見ても、子等の視点は面白いと言えるね。あ、これってガルグイユ?』

 流石だ。見ただけで、アーパスの眷属竜ガルグイユの魔力反応に気付いた。

「はい。今はハフナルヴィークの海域に居ますね」

『それで?目的の遺跡は見つかったのか?』

「…1箇所、怪しい建造物を見つけました」

 アラヤは地図にマークを付ける。

『なるほど、大河の中か…。確かに人には見つけられないな』

『それだけじゃないよ、この大河の水流は船で横断が困難な程に速いからね。潜るなんて考えないさ。まぁ、私なら流れを緩めるのも止める事もできるわよ?』

「流石アーパス様です。ですが、まだ待っていてください。先に、他に神殿がないかを土の大精霊ゲーブ様にも尋ねる必要がありますので」

『ブーちゃんにも会いに行くの⁉︎』

 途端に目を輝かせるアーパス。本当に好きみたいだよなぁ。大精霊同士で恋人にはなれないのだろうか?まぁ、ゲーブの気持ちがどうかも分からないけど。

「はい。大地に埋もれた地下遺跡が無いかを確認したいし、召喚に必要な供物も必要ですので」

『そ、そう?なら、私もついて行こうかしら?』

『なんで貴女も来るのよ?』

『ほ、ほら、ご飯よ!食べる感覚をブーちゃんも気に入ってたじゃない』

『それは、アラヤが居れば充分だ。わざわざ貴女とアゲノルがついて来る必要は…』

「そうですね、みんなで行きましょうか!」

 エアリエルの言葉を遮り、アラヤは同行を許可した。エアリエルはなんで?と首を傾げている。
 どうやら、彼女はアーパスがゲーブに好意を持っている事を理解していないらしい。

「エアリエル、せっかくだからこの海底遺跡で送ってもらおうよ?」

『そう?しかし、私の移動よりかなり遅くなると思うぞ?』

『き、聞き捨てならないわね!見てらっしゃい、海流の速さも中々に速いんだからね?』

 移動速度は明らかにエアリエルの方が早いだろうけど、負けず嫌いな一面を出したアーパスは、海流を一気に変化させた。
 ガクンと遺跡が揺れ、凄い力で方向転換しているのが分かる。

「ちょっ、アーパス様⁉︎」

「アラヤ様、この遺跡なら耐久性は大丈夫ですよ。今のうちに、ゲーブ様に連絡を入れましょう」

「そうそう、この遺跡は水圧に耐えれる様に頑丈且つ軽くしてある。思っている以上に早く着くから心配ないさ」

 慣れているのか、アゲノルとハウンは慌てる様子はない。
 確かに、防音処置も済んでいるようで、壁から伝わる筈の振動も音も、極めて少ないようだ。

「ああ、ゲーブ様、俺です、アラヤです。いきなりで申し訳ないのですが、今からお会いできますでしょうか?」

 とりあえず連絡を入れてみると、ゲーブから眷属竜アダモスを迎えに向かせると言われた。

『迎え?海中でか?』

「うん、ズータニア大陸を東沿いに南下しろとだけ」

『聞こえたかアーパス。アダモスが迎えに出ているらしいぞ?』

『ええ、わ』

 先程の感知で大体の今の位置は把握しているけれど、遺跡内からは外の状況は全く分からない。
 常時視えているアーパスと感覚共有すると、遺跡の外の視界がクリアになった。

「大陸に横穴が⁉︎」

 ズータニア大陸の壁にポッカリと大きな穴が開いていて、その入り口で待つアダモスが見えた。

「どうやら、遺跡ごと入れるようにしてくれたみたいですね?」

『流石、気が利くなゲーブは』

『わ、私専用の出入り口って事よね?嬉しいわ!』

 速度を落とした海底遺跡に、アダモスも併泳して奥へと向かう。
 横穴は、更に開けた場所へと繋がっていた。
 そこには空気が溜められてあり、遺跡を止めて上陸することにした。
 アラヤ達が浮上した遺跡入り口から出てくると、地面からゲーブがその姿を現した。

『よく来たな。フフッ、先ずは食事にしようではないか?』

 ゲーブが手を上げると、次々と狩られた魔物達が地面から浮き上がってきた。
 どうやらゲーブも、前回の感覚共有で味わった味覚の快楽が待ち遠しかったらしいね。
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