【完結】スキルが美味しいって知らなかったよ⁈

テルボン

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第24章 それは世界の救世主らしいですよ⁉︎

356話 バアルゼブル召喚

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 リアナが語る召喚の儀式はこうだ。

 先ず、暴食王の職種を持つ者がと呼ばれ、祭事の責任者となる。信託や神下ろしの際には依代となり、その姿は神の使いへと変貌する。
 尚、神の使いが帰ると、依代は体を戻される。倦怠感等の負荷はあるが命に別状はない。

 召喚する儀式は、祭壇の前にて用意した食べ物や酒で賑やかに食事を行う。この行為が供物となるらしい。

「神は食事をしないから、神のお陰様で我々はこうも幸せだと、感謝をお伝えするんだぞ?…とても大事な食事なんだぞ…」

 確かに。大精霊も食事は必要無かったものな。お供え物って、収穫量を伝える為だったのなら確かに納得できる。
 だから尚のこと、追い詰められたリアナとヤノメが最後に神の使いを召喚することが辛かったかが目に浮かぶ。
 無理して笑い、少ない量の食事をしなければならなかったのだろう。

「良し、俺達も食事をしよう!大事な食事だからね?」

 アラヤは亜空間収納から食べ物を沢山取り出した。その中には調理済みの料理も含まれている。

「オラも…?」

「もちろんだ。但し、笑顔でな?」

「ひ、久しぶりの魚介以外の食べ物だぞ⁉︎お腹がびっくりしちゃうかもだぞ⁉︎」

 リアナはがっつくようにして食べ始める。嬉し涙がスパイスとなって、ちょっとしょっぱいかもしれない。

「さて、食べながら今疑問に感じていることをまとめてみようか?」

 アラヤ達は食べながら意見を次々と出し合った。

 禁呪魔導書。
 それは人間達によって生み出された禁断の書物。
 そこに記される魔法は、属性魔法と悪魔言語を取り入れた呪怨魔法の
 そして、端末に記されるは、大罪を具現化した術の記述。

 つまり禁呪魔導書は、初めからによって崩壊を起こす為に作られた書物だったわけだ。
 しかし、神殿や祭壇は紅月神フレイアを祀る為に建てられたもの。
 おそらく、禁呪魔導書は教団ができた後に作られたに違いない。
 ともすれば、祭壇は使を召喚する為のものであり、悪魔召喚の為のものではなかった。
 では、ナーサキを滅亡させたあの無属性禁呪魔導書の魔法は?
 この神殿から持ち出された書物に、そもそもその禁呪魔導書はあったのか?

「ひょっとして、大罪教が管理していないこの神殿が最古の神殿なんじゃ…」

 アラヤの呟きに、アーパスの表情が変わる。

『その考えは当たってるかもね!私達精霊は、世界が創られた後に誕生した時から、司る属性以外に興味を持たなかった。そもそも生物が生まれたのは、大精霊同士の些細な喧嘩による偶然だったのよ?私の海から生まれた生物に、双月神様達が興味を持たれて加護をお与えになった。それからは瞬く間に生物は進化の道を辿ったのよね。私は相変わらず水の中にしか興味無かったんだけど、地上で時折、神の力を感じた時が幾度かあったわ。それが、神の使いを召喚していたのなら納得できる。…時期的に4~5千年前頃かしら?』

「だ、だとすると、フレイ美徳教団とフレイア大罪教団の設立は、およそ約2000年前程度です。確かに、教団ができる前に双月神様の神殿が各地にあり、先となる信仰があってもおかしくありません。アラヤ様、リアナさんが仰る通り、神殿が本来神の使いを目的とし召喚していたのなら、暴食王を依代とした召喚は可能なのかもしれません」

 ハウンも、より信憑性が高まったと感じているようだ。

「オラは心配だぞ…。おばばを依代として現れた神の使い様は、恰幅が見惚れる程のお姿だったぞ。だけど、ヤノメが依代の時に現れたの神の使い様は、突然、蠅の姿に変わったんだぞ。神殿を沈めた後に、ヤノメがどうなったのか分からないんだぞ…」

「リアナ、笑顔だよ?ヤノメならきっと大丈夫だった筈だよ。だって、その後にできた大罪教の記録には、暴食の悪魔バアルゼブルの記述だけはあるんだ。つまり、当時姿を見た者が後世に伝えている事になる(見た目だけなら、村を襲ったフレイ蒼月神の信者の可能性もあるけど)。それはヤノメが伝えたんだと思うよ?」

「うん、分かったぞ」

 そもそも、仮想未来の俺は何故、バアルゼブルを最後の希望として探していた?
 あの時の情報源は、俺とベルフェル司教とイトウの3人だ。まぁ、【生命の檻】に他におやつ用の魔物もいたが、関係無いだろう。
 その中で、当然2人は確かに俺よりも大罪教の歴史に詳しく、厄災の悪魔についても色々と知っていただろう。
 だが、バアルゼブルだけは未確認の悪魔だ。しかも厄災の悪魔だぞ?
 世界が終わる前に、新たな厄災を探して何になるんだ?
 …駄目だ、全く分からない。
 だけど、あの未来を避ける為には、今は藁をもすがる気持ちで挑むしかないのが現状だな。

「依代には俺がなるよ」

 料理を頬張るアゲノルがそう告げると、アーパスとハウンが持っていたコップを落とした。

『な、何を言い出すんだアゲノル!』

 アーパスは動揺してアゲノルの肩を揺らすが、ハウンは黙り俯いた。

「アーパス様、俺は死んでも本体であるアラヤから再び生まれる事ができるんです。遺体さえあれば記憶もそのままでしょうし、本体が死ぬよりは危険が少ない」

 ハウンもおそらくそれを理解している。故に、反対したい気持ちを言い出せずにいるのだ。

「何言ってんだよ、アゲノル。依代となる巫女は本体である俺がならなきゃ駄目だろ?そもそも、失敗する前提で考えるのは悪い癖だぞ?」

「だ、だけど本体が死んだら、他の分身体も…」

「ああ、それは大丈夫。今は本体はもう1人居るからね?」

「「「は?」」」

「それにさ、これが失敗したらどのみち世界は終わる訳だし。リアナも巫女なら大丈夫って言ってるんだ。信じようよ?」

「本体がもう1人って何⁉︎」

 分離分身ではなく、増殖分身がいることをみんなにはまだ説明していなかったからね。

「とにかく、俺が依代にはなるよ」

 アゲノルの反対する気持ちは当然だけど、本体が依代になる必要性も俺にはあると思うんだよね。
 神の使いから依代にされている時に、俺は意識を保っているのか?
 神の使いがそもそも止めるすべを持っているのか?
 それを自身で確かめたい。それが本音。

 しかし、協力してくれるかも疑問だからこそ、本当は本体は控えるべきでもあるけどね。

『うん、アラヤがそう決めたなら仕方ないよ!もしもの時は私が責任を持ってあげるわ』

 アーパスがそう宣言した事で、アゲノル達はそれ以上何も言えなくなった。

「さて、お腹いっぱいになったことだし、そろそろ始めようか」

 食事が終わり一息ついた後、アラヤは立ち上がり祭壇の上に上がった。

「おばばは召喚する時に、先ずは自分の名を言った後で、フレイア様に誓いをたてていたんだぞ。えっと……フレイア様のしもべ的なやつを」

「おいおい、そこって重要なやつじゃないんだよね?」

 まぁ、おそらく口上的なものだろう。口下手であろうと、神様には気持ちが伝わるに違いない。多分…

「そ、それから、巫女の血を祭壇に垂らすんだぞ。そうしたら、ブワーッと光が広がって、グォーッって現れるんだぞ!」

「「「……」」」

 少し不安が生まれたが、もう迷っている時間は俺達には無い。

「我が名はアラヤ=クラト!暴食王の職種を持つ者なり。偉大なる紅月神フレイア様、貴女様の眷属たる我等の願い、どうか聞き入れて下さります様、どうかお願い致します!」

 だいたい、こんな感じの口上なら問題無いかな?
 それから軽く指先を切り、血を祭壇へと数滴垂らした。

「「「「‼︎⁉︎」」」」

 アラヤの真下に魔法陣が現れ、その光は徐々に力を増していく。
 そして祭壇の部屋は光に包まれて見えなくなったのだった。
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