イレンシ~壱~

ホージー

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case3 山の熊さん 後編

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与作「だからって、殺さなくたっていいだろ!?」


猟師「殺さなければ俺達が殺られる、そういう世の中だ!甘い考えは捨てろ!」


猟師はそう言い銃の照準を子熊に合わせ、引き金に指をかけた。


与作「!!!(こいつ、本気だ!)」


与作はそう感じとっさに子熊を体で隠すようにした・・・その瞬間。


バァァァァァン!!!


それまで静寂を保っていた森に突然、雷の様な銃声が鳴り響いた。


猟師「・・・!!!・・・な・・・。」


猟師が撃った銃弾、それは与作の体を貫いていた。


猟師「う・・・嘘だろ・・・?お・・・俺知らねぇぞ!!」


その光景を否定するかの様に、猟師は雪の降りしきる山の中を一目散に逃げ出した。


・・・・・・・・・・・・


再び静寂を取り戻した森では、与作と子熊に雪が静かに落ち始めていた。


与作「ぐ・・・まさか・・・、こんな所で・・・。」


撃たれた与作には僅かながら意識があった、だがそれも長くは続かないとも感じていた。


与作「か・・・かはっ・・・、子熊は・・・だ・・・大丈夫か?」


与作は薄れそうになる意識の中で子熊の体をさすり生死を確かめていた。


与作「・・・・・・・・・。」


反応はなかった・・・、どうやら与作に命中した弾が貫通し子熊にも命中していた様だ。


だが・・・その時。


・・・・・・おじ・・・ちゃん・・・。


与作「・・・だ・・・誰・・・だ?」


与作の耳にかすかだが、誰かを呼ぶ様な声が聞こえて来た。


こ・・・ここだよ・・・。


そして与作はまさかと思い子熊に目を落とした。


与作「お前・・・なのか?だが、・・・そんな事が・・・?」


うん・・・でも・・・駄目みたい・・・。


与作「す・・・すまない・・・守れなくて・・・。」


いいよ・・・それに・・・もう、長く・・・無かったから・・・。


与作「それは・・・どういう・・・?」


僕の母ちゃん・・・殺されちゃった・・・。


与作「こ・・・殺された・・・?」


さっきの・・・人間に・・・。


与作「・・・・・・・・・。」


それで逃げてたら・・・、体が・・・動かなくなってきて・・・。


与作「そう・・・だったのか・・・。」


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