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6章 鍛冶屋の日常

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加治屋「・・・・・・・・・ZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZ。」


加治屋は木製のベッドでいつもの様に眠っていた。この世界では自分の起きたい時に起きる、

これは加治屋が現世にいた時から切実に願っていた事。加治屋は寝る事が好きで、

睡眠を妨げるのは最も嫌う事でもあった。例えばそれはいつも突然、だが時間きっかりに起きてしまう。


・・・コケコッコォォォォォオオォォォォォォッォォオオオォォォオォオォ!!!!


現世では到底考えられない程の爆音の鶏の鳴き声が、店全体に響き渡り、

それは加治屋の寝室にも容易に届いていた。


加治屋「・・・うぅ・・・うるせぇよ・・・毎日毎日ぃ・・・。少しは休めよぉ・・・。」


加治屋はぶつくさと文句を言いながらも、布団に埋もれた体を唸りながら上半身だけ起こした。


加治屋「あぁ・・・寝てたい・・・でも餌やんねぇと大人しくならないし・・・。

本当に・・・何であんなでっかい鳴き声の鶏買ったんだろうな・・・?」


加治屋は頭をボリボリと掻きながら、布団から足を出し、ヨロヨロと立ち上がった。


加治屋「ふ・・・ふわぁぁぁぁぁぁ・・・。」


小さくあくびをしながら寝室がある階から1階へと、階段をフラフラになりながら降りる。

そそくさにそして裏庭に出て、木の樽から鶏の餌をボウルに適当に掬い取り、

見た目は普通の鶏の小屋へ入って行った。


加治屋「ほら・・・餌だ食え。」


加治屋はそう短く言い放ち、餌を小屋の中心に置いてある木の箱へ無造作に流し込んだ。


鶏「コココッコッコッコッォォォォォォォォォォォオオオオォォォォオォォォオオオ!!!」


それを待っていたと言わんばかりに鶏達は餌に向かって走る、あるいは羽ばたきながら突進してくるものもいた。

そしてその雄たけびにも似た鳴き声は、加治屋に更なる耳へのダメージを与えていた。


加治屋「・・・相変わらず元気だなぁ・・・無駄によぉ・・・。いちいち叫ばなくて良いんだよ・・・。

耳に響くんだよ・・・。」



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