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第1話 追放されて出会いました
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「お前は俺達のパーティーから脱退してもらう」
唐突だった。
目の前に並ぶ皿の上では、焼きたての肉がまだ湯気を立てている。
宿屋で食事中に突然、俺は"解雇通告"を受けた。
「あぁ・・・そうか。わかった」
気の抜けた様な返事が口から出てきた。
それは驚きでもなく、怒りでもなく、ただ「そうゆうことか」と理解した。
ある日、突然複数人の人達と共に俺はある王国の地下で召喚されて早数年。
召喚した張本人である王は何も分からない俺達を選ばれし者"勇者"だと言い、顔も名前も知らない奴らとパーティーを組ました。
そこからは王国に命じられるままドラゴンを討伐したり、狼と何度も殺し会ったり、迫り来る魔王の手先から王国を守ったりと色々とやってきた。
「今まで、ありがとう」
「ま、待って!」
椅子を引く音がやけに大きく聞こえた。
同じパーティーメンバーだった女の子が声をかけてきたが、彼女がどうこう言って解決する問題じゃない。既に決定したことなのだから・・・。
俺は宿屋の扉を開けて外に出ていった。
ーー
それから俺は王国からもパーティーを辞めたことから、用済みとなり追い出されるようにして後にした。
幸い、勇者時代に稼いだ資金が余っていたので、取り敢えずは気ままに各地を旅する事にした。
「こんなにもこの世界の青空は綺麗だったんだな」
どこまでも広がる壮大な空には鳥やドラゴンなどが気持ちよさそうに飛んでいた。
この世界で勇者として戦っていた頃では考えられないくらい心が安らいでいた。
そこからは色んな場所を旅した。
廃れた村や雪が降り続ける地方、龍の寝床に空に浮かぶ島や星降りし草原。神々の跡地に海の中の王国。
時には命の危機に晒されたり、人の優しさに触れたりしながら、俺はとある地方の中心に位置する街の宿屋に腰を下ろす事にした。
それから数日、俺は何をするでもなく、グダグダな毎日を過ごしていた。
「はいりますよ~」
「んっ、ルルカさん、ノックくらいしてくれませんか?」
猫耳としっぽを持ち、三本の毛が左右に跳ねたメイド服の少女は俺が寝床としている部屋に勝手に入ってきた。
「まぁまぁ、私達の仲じゃないですかにゃ」
「出会ってまだ数日ですよ?」
彼女は俺が宿屋として寝泊まりしているまたたぎ屋の看板娘でどうも気に入られてしまったらしく、こうしてよく身の回りの世話をしてくれている。
「それにしても相変わらず、部屋から出ないですにゃー」
「だって、やる事ないし・・・」
「んにゃー、それなら森で山菜でも取りに行ってきてくれないですかにゃ?」
「別に構いませんけど、何で山菜なんですか?」
「あなた様を外に出させる為ですにゃ」
そう言ったルルカさんは俺の服の襟を掴み、宿屋の外に放り投げた。
手ぶらで帰っても追い返されそうだったので仕方なく俺は近くにある森に山菜を取りに行くことにした
ーー
森の中に入ってから三十分が過ぎた頃、ある程度山菜を取り終えた俺は来た道を真っ直ぐに帰っていた。・・・筈だった。
「・・・ここ、どこ?」
来た道を真っ直ぐ戻っていた筈だが、何故か道に戻れなかった。
迷いの森なのだろうか?
「まさか、こんな近くにそんな危険な森があったら既に調査されてるか、閉鎖されて、ん?あれは・・・」
諦めずに道を歩いていると淡い光を放つ光の玉のようなものが道先に沢山浮かんでいた。
「これは、魔力?」
明らかにおかしかった。この森には偶に入る事はあるが、こんな事は今まで一度もなかった。
異変に気がついた俺は走ってその道を突き進んだ。そして一本の大樹が中心に位置する少し広い空間にでた。
「ん?女のひ、」
ーー息を呑んだ。
風になびく、深い森のような緑色の髪。睫毛は長く、影を落とし、肌は透き通るかのように白かった。形のいい唇はほんのり赤く、雲の上に一滴の紅を落としたかの様だった。
この世のものとは思えない美しさを持った彼女は静かに眠っていた。まるでこの森の主かのように、彼女の周りには花々が咲き誇り、光の粉が舞い踊っていた。
「あのーこんな所でって、ツノ?」
近づいて肩をゆすった時に目に入った。緑色の髪からツノの様なものが生えていた。
「まさか・・・魔族?」
そう。これは魔族特有のものだった。
まさかさっきからこの森を出れないのも彼女の力なのだろうか?更に彼女を見てみると、服はボロボロで所々怪我しており、寝ていると思ったがどうやら気を失ってしまっている様だった。
「何で魔族がここに・・・はぁ、考えても分からないよな」
怪我してるし見つけてしまった以上、このままにしているわけも行かないので、気絶している彼女を抱き抱え森を出るために歩き出した。
「おや?何してたんですかにゃ?ってその方は?」
「ぜぇ…ぜぇ…。も、森で倒れてて・・・」
「女の人が、ですか?」
ルルカさんは明らかに信じていなかった。まぁそれもそうだ。俺が逆の立場だったら絶対に信じてない。
「まぁいいですにゃ。貴方が面倒見てくださいね?私は手伝いませんので。・・・犯罪には」
最後に小さくこの猫は何か言いやがったけど、今は取り敢えず彼女を寝かせるために自室に行き、ベッドに寝かせた。
彼女は未だ眠ったままであったが、先ほどまであった傷は完全に癒えていた。
「んっ・・・ここ、は?」
「あ、目覚ましましたか?」
「・・・ぬわぁぁぁぁ!!!」
「おおう」
彼女は俺と目があった瞬間、飛び上がる様に起き上がり自分の体を確認した。どうやら襲われたのだと思ったらしい。
「ふぅー。どうやら手を出す事も出来ないヘタレに助けられたようだな」
「オイコラ、助けてあげた人に向かって今何つった?」
「私はそんなもの頼んでいないぞ?」
ベッドに座り込んで、足を組んだこの女は偉そうに髪をたなびかせながら俺を睨みつけた。
「貴様、何故私を助けた?」
「倒れてたんだ助けるでしょ」
「それだけか?」
「?、はい」
彼女は心底驚いたといった表情を見せてきた。
「・・・まぁよかろう。我が名は"美麗の 緑魔アンリ・マンラだ」
唐突だった。
目の前に並ぶ皿の上では、焼きたての肉がまだ湯気を立てている。
宿屋で食事中に突然、俺は"解雇通告"を受けた。
「あぁ・・・そうか。わかった」
気の抜けた様な返事が口から出てきた。
それは驚きでもなく、怒りでもなく、ただ「そうゆうことか」と理解した。
ある日、突然複数人の人達と共に俺はある王国の地下で召喚されて早数年。
召喚した張本人である王は何も分からない俺達を選ばれし者"勇者"だと言い、顔も名前も知らない奴らとパーティーを組ました。
そこからは王国に命じられるままドラゴンを討伐したり、狼と何度も殺し会ったり、迫り来る魔王の手先から王国を守ったりと色々とやってきた。
「今まで、ありがとう」
「ま、待って!」
椅子を引く音がやけに大きく聞こえた。
同じパーティーメンバーだった女の子が声をかけてきたが、彼女がどうこう言って解決する問題じゃない。既に決定したことなのだから・・・。
俺は宿屋の扉を開けて外に出ていった。
ーー
それから俺は王国からもパーティーを辞めたことから、用済みとなり追い出されるようにして後にした。
幸い、勇者時代に稼いだ資金が余っていたので、取り敢えずは気ままに各地を旅する事にした。
「こんなにもこの世界の青空は綺麗だったんだな」
どこまでも広がる壮大な空には鳥やドラゴンなどが気持ちよさそうに飛んでいた。
この世界で勇者として戦っていた頃では考えられないくらい心が安らいでいた。
そこからは色んな場所を旅した。
廃れた村や雪が降り続ける地方、龍の寝床に空に浮かぶ島や星降りし草原。神々の跡地に海の中の王国。
時には命の危機に晒されたり、人の優しさに触れたりしながら、俺はとある地方の中心に位置する街の宿屋に腰を下ろす事にした。
それから数日、俺は何をするでもなく、グダグダな毎日を過ごしていた。
「はいりますよ~」
「んっ、ルルカさん、ノックくらいしてくれませんか?」
猫耳としっぽを持ち、三本の毛が左右に跳ねたメイド服の少女は俺が寝床としている部屋に勝手に入ってきた。
「まぁまぁ、私達の仲じゃないですかにゃ」
「出会ってまだ数日ですよ?」
彼女は俺が宿屋として寝泊まりしているまたたぎ屋の看板娘でどうも気に入られてしまったらしく、こうしてよく身の回りの世話をしてくれている。
「それにしても相変わらず、部屋から出ないですにゃー」
「だって、やる事ないし・・・」
「んにゃー、それなら森で山菜でも取りに行ってきてくれないですかにゃ?」
「別に構いませんけど、何で山菜なんですか?」
「あなた様を外に出させる為ですにゃ」
そう言ったルルカさんは俺の服の襟を掴み、宿屋の外に放り投げた。
手ぶらで帰っても追い返されそうだったので仕方なく俺は近くにある森に山菜を取りに行くことにした
ーー
森の中に入ってから三十分が過ぎた頃、ある程度山菜を取り終えた俺は来た道を真っ直ぐに帰っていた。・・・筈だった。
「・・・ここ、どこ?」
来た道を真っ直ぐ戻っていた筈だが、何故か道に戻れなかった。
迷いの森なのだろうか?
「まさか、こんな近くにそんな危険な森があったら既に調査されてるか、閉鎖されて、ん?あれは・・・」
諦めずに道を歩いていると淡い光を放つ光の玉のようなものが道先に沢山浮かんでいた。
「これは、魔力?」
明らかにおかしかった。この森には偶に入る事はあるが、こんな事は今まで一度もなかった。
異変に気がついた俺は走ってその道を突き進んだ。そして一本の大樹が中心に位置する少し広い空間にでた。
「ん?女のひ、」
ーー息を呑んだ。
風になびく、深い森のような緑色の髪。睫毛は長く、影を落とし、肌は透き通るかのように白かった。形のいい唇はほんのり赤く、雲の上に一滴の紅を落としたかの様だった。
この世のものとは思えない美しさを持った彼女は静かに眠っていた。まるでこの森の主かのように、彼女の周りには花々が咲き誇り、光の粉が舞い踊っていた。
「あのーこんな所でって、ツノ?」
近づいて肩をゆすった時に目に入った。緑色の髪からツノの様なものが生えていた。
「まさか・・・魔族?」
そう。これは魔族特有のものだった。
まさかさっきからこの森を出れないのも彼女の力なのだろうか?更に彼女を見てみると、服はボロボロで所々怪我しており、寝ていると思ったがどうやら気を失ってしまっている様だった。
「何で魔族がここに・・・はぁ、考えても分からないよな」
怪我してるし見つけてしまった以上、このままにしているわけも行かないので、気絶している彼女を抱き抱え森を出るために歩き出した。
「おや?何してたんですかにゃ?ってその方は?」
「ぜぇ…ぜぇ…。も、森で倒れてて・・・」
「女の人が、ですか?」
ルルカさんは明らかに信じていなかった。まぁそれもそうだ。俺が逆の立場だったら絶対に信じてない。
「まぁいいですにゃ。貴方が面倒見てくださいね?私は手伝いませんので。・・・犯罪には」
最後に小さくこの猫は何か言いやがったけど、今は取り敢えず彼女を寝かせるために自室に行き、ベッドに寝かせた。
彼女は未だ眠ったままであったが、先ほどまであった傷は完全に癒えていた。
「んっ・・・ここ、は?」
「あ、目覚ましましたか?」
「・・・ぬわぁぁぁぁ!!!」
「おおう」
彼女は俺と目があった瞬間、飛び上がる様に起き上がり自分の体を確認した。どうやら襲われたのだと思ったらしい。
「ふぅー。どうやら手を出す事も出来ないヘタレに助けられたようだな」
「オイコラ、助けてあげた人に向かって今何つった?」
「私はそんなもの頼んでいないぞ?」
ベッドに座り込んで、足を組んだこの女は偉そうに髪をたなびかせながら俺を睨みつけた。
「貴様、何故私を助けた?」
「倒れてたんだ助けるでしょ」
「それだけか?」
「?、はい」
彼女は心底驚いたといった表情を見せてきた。
「・・・まぁよかろう。我が名は"美麗の 緑魔アンリ・マンラだ」
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