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第六章 ————の場合
六 ◯ ————【 12月30日 午後9時30分 】
しおりを挟む心が落ち着かない。外気温に晒され、吐く息は白い。震えながらも、俺は西街の中を歩いていく。
そういえば明日は久しぶりの休みだったなあと、ふと思い出した。しかしこんな気持ちで、どう休めというのか。年末年始は瑞季と会う予定でもあったが、もはやそんな気分ではいられなかった。どうすれば良い。今後、瑞季とどう接すれば良いのか。
「はぁ」
またその前提として、今俺の心では怒りの感情が全域を支配していた。彼女にもそうだが、一番の矛先はやはり柳瀬川だ。たとえ、俺と瑞季の関係を知らなかったとしても、奴に対する怒りは収まりそうにない。腑が煮え繰り返りそうだった。
今の気分を変えるような、解消できるような方法があれば、誰でも良い。その方法を教えて欲しい。それがどんな方法であっても…犯罪と言えるようなものでも良い。そう思える程に鬱々とした心境であった。
(そう簡単に解消するような問題であれば、ここまで悩まないが…)
情緒不安定なまま、ふらふらと街を歩いていく。と、
「ん?」
目の前の店と店の間の路地に、男が二人入って行くのが見えた。
一人は金髪に派手な真紅のシャツで柄が悪く、もう一人は仕立ての良いスーツを着た、きっちりとした会社員の風貌。二人の表情から、とても友人同士とは言い難い、険悪な雰囲気であった。
警察官の勘というものだろうか。きな臭く感じた俺は、こっそりとその後を付いていくことにした。それが、まさか。自分の目を疑った。彼らのいる路地を覗くと、金髪の男が、会社員の男を刃物で刺し殺しているではないか。
「えっ…」
思わず声が出そうになるところを必死に堪える。大丈夫、気付かれていないようだ。
金髪の男の顔をまじまじと見る。彼からしても想定外の出来事だったらしく、呆然とした表情をして、その場で立ち尽くしている。
ん?待てよ、あの男は。
(さ、鷺沼じゃないか…!)
柳瀬川がアンナというキャバクラ嬢から脅迫され、消せと言われた男。一年前に俺が捕まえた男。鷺沼崇、本人であった。その時、鷺沼が俺の方に顔を向けた。慌てて隠れる。
「よ、よし」
鷺沼は一言呟き、奥へと進んでいった。
——警察官として、彼を逮捕するべきなのかもしれない。しかし俺は、あえて見逃がすことにした。
そう。思いついたのだ。それは、仁義に反することに違いなかった。しかし、今の俺にとって、そんなことはどうでも良かった。この気分を、払拭するための計画を思いついたのだから。
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