8 / 14
第2章
変わった男の子(2)
彼に手を引かれながら階段を上る。
それが思ったよりもキツくて、体育の時以外ほとんど運動をしない私は息が切れそうになった。
彼がどこに行くのかどこに向かっているのかわからないまま、着いていくだけ。
「…はぁ…っ……ねえ、どこまで行くの?」
そう聞いても彼は笑うだけで、はっきりとしたことは教えてくれない。
もう少しだから、と言って、私の歩幅に合わせてゆっくり歩くだけ。
強引なくせに、こういう何気ない優しさを向けられるとなにも言えなくなる。
どれくらい上っただろうか、長く感じた階段を上り切ると高台に出た。
そこからはこの小さな町が一望でき、輝くネオンがとても眩しくて感嘆の声が漏れた。
「俺のお気に入りの場所なんだ、ここ」
今まで見たなによりもそれは綺麗で、まるで一人占めしてるような気持ちになる。
自分の存在がとてもちっぽけで、抱えている悩みがバカみたいに思えるから不思議だ。
なにも解決していなくて、そんな簡単なことでもなくて、それでも少しだけ気持ちが楽になった気がした。
「……どうして、ここに連れてきたの?」
たまたま会っただけで知り合いでもない。
ナンパという感じでもないのに、どうしてわざわざ連れてこられたのか考えてもわからない。
「んー、可愛いと思ったから?」
「は?」
「嘘、冗談。あのまま帰ったら君がまた薬飲むんじゃないかと思って」
「……なんでそう思ったの」
ずっと前に一度だけ、ODをしていることを両親に知られたことがある。
でも、やめた、もうしない、と約束してからは私がまたしていることに気付かなかった。
高校生になって自分のお金で買えるようになるまで自分を傷つける違うことで気持ちを紛らわせ、薬を飲むこともしなかったから。
初めてバイト代を手にした日、大丈夫だと思ったのに一度でも口にしてしまったら無理だった。
「…その手」
「手?」
「吐きダコだろ、それ」
指を差しながらそう言われ、私は思わず両手を後ろに隠して見られないようにした。
彼の言うとおり、私の指や手の甲に吐きダコと言われるものができている。
毎日のように薬を大量に飲んで吐き、その度に歯が当たるためだ。
他の人にはないものができているのが嫌で、何度もやめようと思ったのにやめられない。
やめたところで、どうせまた違うことをしてしまうに違いないんだ。
そうーーリストカット、とか。
「ODってやつ? それをしなきゃいけない理由がなんかあんの?」
理由ーー両親のこととか涼夏のこととか、上げ出したらきっとキリがない。
それも明確なものじゃなく、はっきりしているようでどれも曖昧だ。
それとODをするのがイコールで繋がれているかと言われたら、それもわからない。
そうすることで楽になる気がして、ただ逃げてるだけかもしれない。
「ま、言いたくないなら言わなくてもいいけど」
それは突き放したような言い方なのに、両親に向けられるものとは違う。
思いやりを感じるような言葉で、それに安心すると同時に嬉しくなった。
だからか、彼になら話してもいいかもしれない、とも思ってしまった。
彼を信頼してるわけじゃない、知らない人だからこそ言えることもあるかもしれないって。
もし悩みをすべて話して引かれたりされても、会ったばかりだからなんて思われても気にしない。
それが思ったよりもキツくて、体育の時以外ほとんど運動をしない私は息が切れそうになった。
彼がどこに行くのかどこに向かっているのかわからないまま、着いていくだけ。
「…はぁ…っ……ねえ、どこまで行くの?」
そう聞いても彼は笑うだけで、はっきりとしたことは教えてくれない。
もう少しだから、と言って、私の歩幅に合わせてゆっくり歩くだけ。
強引なくせに、こういう何気ない優しさを向けられるとなにも言えなくなる。
どれくらい上っただろうか、長く感じた階段を上り切ると高台に出た。
そこからはこの小さな町が一望でき、輝くネオンがとても眩しくて感嘆の声が漏れた。
「俺のお気に入りの場所なんだ、ここ」
今まで見たなによりもそれは綺麗で、まるで一人占めしてるような気持ちになる。
自分の存在がとてもちっぽけで、抱えている悩みがバカみたいに思えるから不思議だ。
なにも解決していなくて、そんな簡単なことでもなくて、それでも少しだけ気持ちが楽になった気がした。
「……どうして、ここに連れてきたの?」
たまたま会っただけで知り合いでもない。
ナンパという感じでもないのに、どうしてわざわざ連れてこられたのか考えてもわからない。
「んー、可愛いと思ったから?」
「は?」
「嘘、冗談。あのまま帰ったら君がまた薬飲むんじゃないかと思って」
「……なんでそう思ったの」
ずっと前に一度だけ、ODをしていることを両親に知られたことがある。
でも、やめた、もうしない、と約束してからは私がまたしていることに気付かなかった。
高校生になって自分のお金で買えるようになるまで自分を傷つける違うことで気持ちを紛らわせ、薬を飲むこともしなかったから。
初めてバイト代を手にした日、大丈夫だと思ったのに一度でも口にしてしまったら無理だった。
「…その手」
「手?」
「吐きダコだろ、それ」
指を差しながらそう言われ、私は思わず両手を後ろに隠して見られないようにした。
彼の言うとおり、私の指や手の甲に吐きダコと言われるものができている。
毎日のように薬を大量に飲んで吐き、その度に歯が当たるためだ。
他の人にはないものができているのが嫌で、何度もやめようと思ったのにやめられない。
やめたところで、どうせまた違うことをしてしまうに違いないんだ。
そうーーリストカット、とか。
「ODってやつ? それをしなきゃいけない理由がなんかあんの?」
理由ーー両親のこととか涼夏のこととか、上げ出したらきっとキリがない。
それも明確なものじゃなく、はっきりしているようでどれも曖昧だ。
それとODをするのがイコールで繋がれているかと言われたら、それもわからない。
そうすることで楽になる気がして、ただ逃げてるだけかもしれない。
「ま、言いたくないなら言わなくてもいいけど」
それは突き放したような言い方なのに、両親に向けられるものとは違う。
思いやりを感じるような言葉で、それに安心すると同時に嬉しくなった。
だからか、彼になら話してもいいかもしれない、とも思ってしまった。
彼を信頼してるわけじゃない、知らない人だからこそ言えることもあるかもしれないって。
もし悩みをすべて話して引かれたりされても、会ったばかりだからなんて思われても気にしない。
あなたにおすすめの小説
白椿の咲く日~ひそかな恋、遠い日の思いは
紫さゆり
恋愛
結婚を控えた真由子は、久しぶりに異母姉の稚子(わかこ)と会う。
真由子の母の雪江は、大学教授であり著名な歌人の水上実之(みなかみさねゆき)の後添いとして水上家に嫁いだ。
婚約者の諒人(りょうと)のことなど、真由子は稚子と色々語り合ううち、庭の白椿の木は真由子がなついていた異母兄、靖之が植えたものだと知る。
白椿の木をめぐっての、ひそかな大人の恋物語です。
戦いの終わりに
トモ
恋愛
マーガレットは6人家族の長女13歳。長く続いた戦乱がもうすぐ終わる。そんなある日、複数のヒガサ人、敵兵士が家に押し入る。
父、兄は戦いに出ているが、もうすぐ帰還の連絡があったところなのに。
家には、母と幼い2人の妹達。
もうすぐ帰ってくるのに。なぜこのタイミングで…
そしてマーガレットの心には深い傷が残る
マーガレットは幸せになれるのか
(国名は創作です)
たのしい わたしの おそうしき
syarin
恋愛
ふわふわのシフォンと綺羅綺羅のビジュー。
彩りあざやかな花をたくさん。
髪は人生で一番のふわふわにして、綺羅綺羅の小さな髪飾りを沢山付けるの。
きっと、仄昏い水底で、月光浴びて天の川の様に見えるのだわ。
辛い日々が報われたと思った私は、挙式の直後に幸せの絶頂から地獄へと叩き落とされる。
けれど、こんな幸せを知ってしまってから元の辛い日々には戻れない。
だから、私は幸せの内に死ぬことを選んだ。
沢山の花と光る硝子珠を周囲に散らし、自由を満喫して幸せなお葬式を自ら執り行いながら……。
ーーーーーーーーーーーー
物語が始まらなかった物語。
ざまぁもハッピーエンドも無いです。
唐突に書きたくなって(*ノ▽ノ*)
こーゆー話が山程あって、その内の幾つかに奇跡が起きて転生令嬢とか、主人公が逞しく乗り越えたり、とかするんだなぁ……と思うような話です(  ̄ー ̄)
19日13時に最終話です。
ホトラン48位((((;゜Д゜)))ありがとうございます*。・+(人*´∀`)+・。*
【完】ベッドの隣は、昨日と違う人
月村 未来(つきむら みらい)
恋愛
朝目覚めたら、
隣に恋人じゃない男がいる──
そして、甘く囁いてきた夜とは、違う男になる。
こんな朝、何回目なんだろう。
瞬間でも優しくされると、
「大切にされてる」と勘違いしてしまう。
都合のいい関係だとわかっていても、
期待されると断れない。
これは、流されてしまう自分と、
ちゃんと立ち止まろうとする自分のあいだで揺れる、ひとりの女の子、みいな(25)の恋の話。
📖全年齢版恋愛小説です。
しおり、いいね、お気に入り登録もよろしくお願いします。
📖2026.2.25完結
本作の0章にあたるエピソードをNOTEにて公開しています。
気になった方はぜひそちらもどうぞ!
蝋燭
悠十
恋愛
教会の鐘が鳴る。
それは、祝福の鐘だ。
今日、世界を救った勇者と、この国の姫が結婚したのだ。
カレンは幸せそうな二人を見て、悲し気に目を伏せた。
彼女は勇者の恋人だった。
あの日、勇者が記憶を失うまでは……
龍は唄う 神子と子守唄を
イチイ アキラ
恋愛
『神子が御実家より帰宅される途中、事故に遭い――片目を失った。』
入院していた病室で、さおりはその新聞を読んで「え?」と混乱していた。
何故なら片目を失ったのはさおりであり――さおりは神子ではない。
神子はさおりの双子の妹の、しおりであるからだ。
しかも「しおり」は第三皇子の婚約者であるという。
さおりは片目と記憶を失い、神殿で暮らす事となる。
しおりと皆に勘違いされたまま。