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二時限目
しおりを挟む「お前らなんで椅子にも座らんとたっとん??」
丸く小さな輪になって話をしていた私たちに、教室に入ってきた先生が声をかけてきた。
水谷川(みやかわ)先生
坊主頭が特徴的な背の高い30代の先生。
うちの高校に転勤になった際に奥さんと子供を連れて島で家を借りたらしい。
愛妻家で子煩悩。
一年時にも生物学を教えてくれていた先生。
どうやら彼が理系の担任?的なのになるらしい。
「やってどこ座ったらええかんからんかったし」
先生が入ってきたと同時に近くの机に座っていた岩永が笑い混じりに言う。
岩永が机に座っていることに対し少し眉を寄せた気もするが、すぐに笑みを作って私たちを適当な席に座らせる。
と言っても5人しかいないので一番前列の窓際2列に男子が固まり一列空けて廊下側に女子が横並びで座る形になった。
「...にしても5人って少ないな??
今までに例をみん少なさやで」
と茶化したように教卓に立つ先生が言う。
本当にその通りだと思う。
偏りすぎじゃないか?
と思うが、理系はまあ、文系に比べて化学や数学が難しくなるって考えると、偏差値の低いうちの高校じゃ妥当だろう。
誰だって勉強が好きなわけじゃないし。
私は数学や化学と言った明確に答えが出る授業が嫌いではないので、きっと楽しいはずだ。
「今日はまあ、授業じゃなくて、自己紹介にしよか」
カツリと黒板にチョークで何かを書き始める水谷川先生。
今更自己紹介?一年一緒に授業を受けてきたのに?と全員が首を傾げていると、文字を書き終えたらしい水谷川先生が私たちの方を向く。
「ただの自己紹介ちゃうで。言うてもらうんはこれな」
と黒板が見えるように教卓から体をずらす。
黒板には
"名前"
"血液型"
"好きな芸能人"
"好きな教科、嫌いな教科、その理由"
"好きに一言"
と書かれていた。
名前と好きな教科、嫌いな教科はわかる。血液型?好きな芸能人??なんで???
全員がそれぞれ困惑したように顔を見合わす。
水谷川先生は変わらずにこにこと笑っている。
「名前とある程度の性格は大体わかってるやろ?普通の自己紹介じゃつまらん。普段聞かへんことにしようや」
まあ確かにそうだが、だからって血液型と芸能人って...
まともな先生だと思っていたのに急にぶっこまれてもなぁ...と首を掻いていると、ガタリと岩永が立ち上がる。
「名前は岩永進。んで血液型はAB型。
好きな芸能人はマリリンモンロー!
好きな教科は体育で嫌いな教科は生物と化学!その理由は難しいから。好きに一言って言われてもな..まあ、よろしく!」
と勢いよく言うとそのまま椅子に座る。
みんな唖然としていた。...先生を除いて。
「流石岩永やな。先陣ありがとう。でも生物担当の俺の前で嫌いな教科が生物とは...卒業するまでには楽しかったいわしたるさかい楽しみにしとけよ」
パチパチと拍手をする先生につられて私たちも拍手をする。
得意げに椅子に座る岩永を見て次は奥村が立ち上がる。
「ええっと..名前は奥村将士。血液型はO型...。好きな芸能人は、お笑い芸人のジャルジャルで、...好きな教科は体育、嫌いな教科は数学。...理由は公式覚えるのが大変やから...?あーっと...勉強頑張ります?」
「木下優。血液型はB型で、好きな芸能人は居ません。好きな教科は世界史で嫌いな教科は体育。理由は団体競技が苦手やからです。ほどほどに頑張ります。」
「川端歩です!血液型はB型。好きな芸能人は..うーん誰やろ?竹内涼真くんとか?好きな教科は体育で、嫌いな教科は社会科系全般と英語!英語はまじ無理!!これからよろしく~!」
ポンポンとテンポよくみんなの自己紹介が終わっていく。
...人前で話すのって苦手なんだよな...。
カタリと小さく音を鳴らして立ち上がる。
じっと5対の目がコチラを見つめる。一瞬膝が震えたがなんとか持ち直す。
「三神真。血液型はB型。好きな芸能人は..ゲイリー・オールドマン。海外の俳優です。好きな教科は国語。嫌いな教科は英語...理由は日本から出る予定がないのと英単語覚えられる気がしんから。適当によろしく...」
小さな声になってしまったが、先生を入れても6人しかいない教室だ。十分聞こえただろう。
小さくため息を吐きながら椅子に座る。
どうにかして、人前で話すの、慣れないとな..とは思うものの、なかなかうまくいかないのが現実だ。
「はいはい、みんな自己紹介ありがとう!」
にぱーっと水谷川先生が笑って言う。
そういえば先生から自己紹介はしてもらってないがそれはどうなんだろうか?
大体の先生は見本だと言わんばかりに最初に言うが...
「せんせーは自己紹介してくれへんの?」
ニヤニヤと岩永が言う。
みんな思っていたのか残りの3人も確かに...と小さく頷いている。
「ええ?...しゃーないなぁ。名前は水谷川俊。血液型は秘密。好きな芸能人も秘密。好きな教科はもちろん理科..特に生物やな。嫌いな教科は秘密。あーそうやなぁ。とりあえず岩永は卒業するまでには生物がめちゃくちゃ面白い事を叩き込んだるわ!まあ、楽しんで授業しよな」
...いや秘密多すぎんか?
私たちは全員白い目を向ける。
木下は小声で「これなら聞かんでもよかったな...」とこぼしてる。
思ったけど言っちゃダメだろう...。
「と、とりあえず!これからは先生入れてこの6人、あと化学担当の先生と、数学Ⅱ担当の先生入れてこの8人が理系コースのメンバーや」
先生入れても少ないね???
まあ、なにはともあれ、私の高校2年の生活がスタートした。
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