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第20話

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 もちろん信じられる! 危険な場所に行ってまで、困っている人達のために尽くすなんて、医者としても人間としても素晴らし過ぎるんだから!

 ……でも、簡単にハイ! とか答えるのも軽率かなぁ?

 え? LINEのやりとりだけで愛とか信じるとか言っている方が軽率だって?
 
 そんなの仕方がないでしょ。相手は遠く離れたウクライナにいるんだから、簡単に会いに来られないんだよ。
 
 遠方の会ったこともない人とコミュニケーションを取れるのがSNSの利点なの。それがきっかけでお友達になったり、結婚までしちゃったりすることもあるって、よく聞くでしょ。
 
 チョロい女性だとか思われないように、ちょっとはぐらかしてみるね。

 〖ローランド、あなたがどれほど誠実で優しい人か、改めて理解することができました。欧米の方は皆あなたのように情熱的なのですか? 日本では、あなたのような方には会ったことがありません〗
 
 【よく分かるよ。近い将来、最愛の人として、心から僕を受け入れてくれる??】
 
 ええええっ!? どうする、そうちゃん? なんて答えればいい? 
 
 どうせ嘘なんだから、テキトーに答えておけって?
 
 失礼な! ローランドはわたしの魅力に気付いたんだよ。こんなに美しくて知的でユーモアのセンスがある女性なんて、世界中どこを探してもいないんだから。
 
 少なくとも、自宅に放火未遂して自分で通報して現行犯逮捕された、どこかのクソ男より、何万倍もわたしの素晴らしさを理解してるよ。見る目あるよね~♫

 迷う理由なんかないって。

 〖もちろんです。でも、ローランド、あなたにとってわたしは本当にベストな女性ですか?〗

 受け入れつつ、それでも謙虚にね。

 【人生における愛の素晴らしさを経験させてくれて、本当にありがとう。君は僕をとてもハッピーにしてくれる。君と僕は互いに愛という強い運命で結び付いた二つのピースだ】
 
 よく何の臆面もなく、こんなことを活字にできるな、とか言わないでよ。
 
 何度も言ってるけど、基本的に欧米人はオープンなの。自分の気持ちを相手に率直に伝えるのが普通なんだから。

 【愛は愛の頂点へ到達するために不可欠な活力だ】

 意味不明……。
 
 そうちゃん、しっかりしてよ。わたし達の翻訳が上手くできていないだけだよ。……たぶん。

 【真実で誠の愛がなければ、大切な女性のために完璧で正しい人間では決していられない。僕は全身全霊で心から君を信じ愛している。君は愛を分かち合いたいたった一人の相手だ。身も心も全てをかけて愛したい。どうか忘れないでほしい。僕は深く君を愛している。君は僕にとって特別な存在だ】

 さて、この中に『love』という単語は幾つあるでしょう?
 
 ……って、そうちゃん、勝手にクイズなんか作って遊ばないで。

 何て返信しようかなぁ? ここまでグイグイ迫るようにされると、いくらただの活字でも戸惑うよね。わたしシャイだし。

 〖ローランド、あなたにとって特別な存在になれて、わたしは凄く幸せです。嬉し過ぎて、今夜は眠れないかもしれません〗

●翌朝

 わぁ、ロマンティック♥ 男性が二本のバラを女性に手渡してる画像だよ。渡しながら、女性の手をしっかり両手で握り締めてる。

 うんうん、そうだよねぇ。お互いこんなに遠く離れていなければ、ローランドだってこんなふうにしたいんだろうね。
 
 でも、ローランドも戦争が終わるまでは日本に来られないし、切ないなぁ。
 
 あ、画像の後にLINEが来てる。

 【なぜ、そしてどれほど君を愛しているか、説明をするのは不可能だ。それは、水がどんな味かを説明することが不可能なのと同じなんだ】

 この言い回し、次の小説で使えそうだって?

 何言ってんの。ローランドは真剣なのに。

 まったく、そうちゃんってホントに何でも小説のネタにしたがるよね。迂闊うかつに変な事を話せないわ。

●その夜

 〖わたしでも理解できる、分かりやすい例え話をありがとうございます。あと、今朝の美しいバラの画像もありがとうございます〗

【当然さ。僕は君を愛している。今日はどんな一日だった??】

 さて、問題です。ローランドは今日一日で、『love』という単語を何回使うでしょう?

 ……って、だからぁ、そうちゃん! クイズなんか作って遊ばないで!
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