天使のトリセツ

天使の心配

「人間は食べないと、死んでしまうのではないか？」
　座布団を二つ折りに枕にして、毛布にくるまって、目を閉じると、ベッドの上から、天使様に聞かれた。

「ん？うん」
　俺は、むにゃむにゃ、答えた。
　昼間、テレビで、ダイエット特集でも見たかな？


――あれ以来、天使様には、地上の物を、何にも食べさせてない。水分は与えてるけど。


「何にも食べていないで、だいじょうぶなのか？」
　天使様に聞かれて、俺は反射神経で、目を開けて、ぴょこんっと、飛び起きてしまった。

「心配してくれてるっ？」
「心配ではない。確認しただけだ」
　暗闇の中、天使の姿は見えなくて、声だけが聞こえる。ツンデレちゃんなんだからぁ～


　あれ以来、俺は部屋で、メシを食ってない、作ってない。水分は取ってるけど。


「安心して。外では食ってるから。」
「気にしないで、食べてもいい」
「ダイエットしてる人の前で、ばくばく、食えないよ」
　俺は言いながら、寝直す。

「もう飛べるようになった」
　天使様の言葉に、キュウッと、俺の胸は痛くなった。


　ｉＰｈｏｎｅの画面に表示されてる明日の天気予報は、雨なこと、天使様に言えないのは、もし予報が外れたら、ガッカリさせちゃうから…って思ってるのは、言い訳かもしれない。
　ニュースは天使様に見せてないけど、俺が大学行ってる昼間に、見たかもしれない。


「お腹いっぱいでなければ、少しくらいなら食べても」
「それ、ダイエットで、一番、ダメなヤツぅ～」
　俺は、天使様にツッコんで、笑った。