βなんか好きにならない

切羽未依

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#練習

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 ずるゅんっと、笙悧しょうりの中から、だんは、自分の物を引き抜いた。

 笙悧は、まない快感に締まったままの中を、暖の物に逆撫さかなでられて、
「ぁああ、っ、ん、っ、」
 声を上げ、体を震わせて、ぴゅくっ、ぴゅっ、また射精してしまった。


 暖は、ずっと両手で掴んでいた笙悧の太腿を横へ引き、腰を横倒しにして、ベッドの上に下ろした。うつ伏せでベッドに落ちれば、笙悧の物が体の下敷きになってしまうからだった。

 ベッドの上、崩れ落ちた笙悧は、はふはふ、全身を揺らして、呼吸を繰り返す。

 膝立ちしていた暖は、座り込むと、笙悧を見下ろして、独り言をつぶやいた。
「やっぱり、ぼくの名前、呼んでくれないんだね…」

 暖は両手を着き、よろよろと、ベッドの端の方へ体を向けた。
 サイドボードのティッシュを何枚も取ると、笙悧の愛液まみれで、ぬるぬるしているゴムを、息を詰めて、拭う。
 まるでしごくようで、まだ勃起している物は、イキそうになる。でも、外す前に、愛液を拭わないと、指が滑って、ゴムを結べないのだ。

 拭ったティッシュは、サイドボードの下からゴミ箱を引き出して、捨てた。勃起したままの自分の物から、ゴムを引き剥がすように外し、結ぶと、ゴミ箱に捨てた。ゴムが入っていた袋も、捨てる。
 枕元に置いていたゴムの箱から、ひとつ、取り出すと、

だん、番にして」

 Ωのフェロモンで、くらくらして、幻聴まで聞こえる自分に、暖は、鼻で小さくため息をついた。
 袋を切って、ゴムを出し、

「って、後ろから、突いてる時に、言おうと、思ってたのに、」

 暖は振り返った。

 はふはふ、笙悧は、かすれた声で、言葉をつなぐ。
「お兄ちゃ、あ、暖が、いっぱい、突くから、言えなかった」

 ワイシャツの乱れたすそから、くの字に折れて重なる剥き出しの笙悧の両脚の先、靴下を履いたままの足が、小さくじたばたする。
くちが、勝手に、『お兄ちゃん』って、言うんだよ」
「ふふっ」
 暖は笑う、笙悧のじたばたする足が、かわいすぎて。

 笑んだ唇のまま、暖は向き直ると、新しいゴムを勃起している自分の物に着ける。ティッシュを何枚か取り、一本ずつ指を、手を拭うと、ゴミ箱に捨てた。

 暖は、笙悧と向かい合って、添い寝する。
 サイドボードのライトに照らされて、涙と、鼻水と、よだれまみれの笙悧の顔は陰になって、赤らんだ頬も、うるんだ黒い瞳も、まだ呼吸が整わないいた唇と、くちの中の赤さも、並ぶ歯の白さも、色は見えない。

 暖は指先で、笙悧の唇に触れた。熱い息にも触れる。
「このくちが、ぼくを『お兄ちゃん』って、呼んじゃうんだ?」
「うん」
 ちいさくうなずく笙悧の唇が、暖の指先に押し当てられる。

「じゃあ、ぼくを『暖』って呼ぶ練習しなきゃね」
 暖は、笙悧のワイシャツの肩を手のひらで包み込んで、そっと押し、仰向あおむけにした。

 仰向けにされた笙悧は、いやいやと、首を横に振る。
「後ろからシて。番にして。うなじを噛んで。」
「ムリだよ」
 暖は、笙悧の両脚を開かせて、その間に入る。ワイシャツの乱れた裾から、笙悧の物は勃ち上がっている。

「今、笙悧は、発情期じゃないから、うなじを噛んでも、番になれないんだよ」
 まるで勉強を教えるような口調で、暖が言う。
「わかってるけどぉ~」
 言い返す笙悧の両脚を、暖は自分の両肩に掛ける。汗に濡れた笙悧の肌は、しっとりと、冷たい。

「んぁっ」
 ぬゅぷっと、暖の物が、笙悧のアナルに押し当てられた。

 笙悧の濡れたアナルが、ちゅぱちゅぱ、先端を吸い上げるのを、暖は感じる。それだけでイケそうだった。でも、それだけでイキたくなかった。

「挿れるね…」
 暖は言って、腰を押し出す。

「ゃぁ、あ、っあ、っん、ぅんっ、」
 挿入はいって来る暖の物を、自分の中がうねって絡み付きながら、呑み込んでゆくのを、笙悧は感じる。

「今度は、いっぱい、こすってあげるね」
 そんなことを暖に言われただけで、キュウッと、笙悧の中は締まってしまう。

 暖は笑う。
「ふふっ。そんなに締め付けないで。お兄ちゃん、イッちゃうよ?」
「イッて。お兄ちゃんの精子、いっぱい、ぼくの子宮に、どぴゅどぴゅ、ちょうだい」
「自分でも、『お兄ちゃん』って言っちゃったな…」
 苦笑して暖は、自分の物をなかばまで挿れただけで、腰を、ゆっくりと、退き始める。

「ゃあああああああ」
 笙悧は声を上げる――ゆっくりと、中を逆撫でられる快感と、奥に触れずに暖が離れてゆくのが嫌で。

 ……抜ける。と笙悧が思ってしまうほど、暖は、腰を退き、そして、ゆっくりと、また挿れてゆく。

「ぃあああああああ」
 ゆっくりと、中を撫で上げられる快感に、笙悧は声を上げる。

 半ばで止めて暖は、笙悧に言った。
「『暖』って、呼んで。」
「だ、ん」
 甘く鳴くような声で、笙悧に呼ばれて、暖は後悔した。


 ヤバイ。名前を呼ばれただけで、イきそうになった。


「いっぱい、ぼくのこと、呼んで。」
 暖は言うと、ゆるやかに腰を振り、笙悧の中をこすり始める。

「だぁん、だんっ、だっんぅ、だんぅ、だぁんっ、だんっ、だっん、」
 名前を呼びながら笙悧は、暖の物に、自分の中を、ずゅるゅるゅるゅるゅ…撫で上げられ、ずゅるゅるゅるゅるゅ…逆撫でられて、ずゅるゅるゅるゅるゅ…撫で上げられ、ずゅるゅるゅるゅるゅ…逆撫でられて、じゅわじゅわ、全身に広がる快感にろける。

「た゛ん゛ぅ゛う゛う゛、き゛も゛ち゛い゛ぃ゛、き゛も゛ち゛ぃ゛い゛、き゛も゛ち゛ぃ゛い゛、き゛も゛ち゛い゛ぃ゛、」
「ぼくも気持ちいいよ、笙悧」
「た゛い゛す゛き゛い゛、た゛い゛す゛き゛い゛、た゛ん゛ん゛ん゛、た゛い゛す゛き゛い゛、」
 笙悧は、暖の両肩に掛けられた両脚を、背中で交差して、ぎゅうっと抱き寄せる。


 抱き寄せられて暖は、笙悧の体の両脇に両手を着き、体を重ねる。

「ぁふっ」
 ぬちょっと、笙悧の物が、暖の体に押しつぶされた。暖が、ゆるやかに腰を振ると、笙悧の中も、物も、撫で上げられ、逆撫でられる。
「た゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、た゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、た゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、た゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、」

「もう、名前、呼ばれてる気がしないな…」
 ぼやいて暖は、笙悧に腰を打ち付け始め、笙悧の物も、重ねた体で、こすげる。

 先端から熱くろける笙悧の物は、ぬ゛ち゛ゅ゛ぬ゛ち゛ゅ゛、暖の体の下で、音を立てる。
 やさしく撫で続けられて、とろとろに溶ろけた笙悧の中は、暖の物に、く゛ち゛ゃ゛く゛ち゛ゃ゛に、かき混ぜられる。

「ら゛ぁ゛ぅ゛ん゛っ゛、あ゛ぁ゛ん゛ん゛、っ゛ふ゛ぁ゛う゛、ら゛ぁ゛ん゛っ゛、」
 笙悧の瞳孔ひとみひらき、涙をこぼして、いた口は、よだれを垂らして、暖の名前を呼び続ける。

 お腹いっぱい、暖の物の、動きを、かたちを、太さを、長さを、熱を感じてしまうのは、笙悧の中が、ぎゅうぎゅう、締め付けているせいだった。

 暖は、笙悧の両脚を両肩に掛け、体の両脇に両手を着いて、繰り返し繰り返し、腰を打ち付け、退く。
「は、ぁっ、っふ、っん、んぁっ、」
 暖の開いた口からも、声がこぼれる。

 ますます、笙悧の中は、暖の物を締め付けて、

「は、あっ、あんっ、あ…」
「う゛う゛う゛、う゛、う゛う゛う゛う゛う゛…」
 暖と笙悧の声が混ざり合う。

 笙悧は、自分の中で、暖の物が、びゅくっ、びゅくん、びゅくくっと、射精するのを感じながら、暖の体の下で、全身を震わせて、自分の物も射精する。


 ぼくを、Ωとして、暖は、愛してくれる。


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