βなんか好きにならない

切羽未依

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OPEN YOUR HEART

恋していたのは、

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 互いに呼び合うように旋律メロディーが繰り返される前奏イントロ

 バイオリンの音を奏でているのは、先生が弾いているキーボードだ。
 いわおが弾くキーボードは、オーケストラの音を奏でている。

 電子音シンセサイザーの再現力に、笙悧しょうりは驚く。


 笙悧は、2階席、最後列の端から2番目の席から、ステージを見下ろしていた。一番端の席はけている。

 市内の小学校・中学校・高校の吹奏楽部の発表が終わり、ぎっしり、客席を埋め尽くしていた児童、生徒、保護者が出て行って、これから始まるバンド演奏を見に来た人たちが、まばらに1階席を埋めている。2階席は、最前列に、ばらばら、座っているだけだ。


 キャアアアアアと悲鳴の渦が巻き起こる中、ライトもとに、宇宙そらが歩み出た。


 席に座っていた笙悧は立ち上がっていた。

 宇宙が右手でマイクを握り、スタンドの半ばに、左手を添えて、歌い出す。

 一番遠い客席ここまで、真っすぐに届く歌声。
 白い、ふわっとした感じのジャケットとズボン。すらりとした立ち姿。
 キラキラ、全身から輝きがこぼれ出ている。


 笙悧のうなじの噛み跡が痛んだ。
――Ωの体は、宇宙に恋していたのかもしれない。

 でも、ぼくの心は、ずっと暖が大好きだ。
 そう思うと、痛みは消えた。


 笙悧は瞬きをした。
 宇宙の髪が短くなっている、ような気がした。後ろ髪を結んでいるか、背中に流しているだけかもしれないけど…


 サビで、歌に合わせて、宇宙が振り上げる手に、客席でも、一斉に手を上げて振る。
『ライブ』というものを初めて見る笙悧は驚いて、1階席を見下ろす。あの中に、母親と妹も、いるんだろうな…と思う…

 1曲目が終わり、宇宙の名前を呼ぶ悲鳴を黙らせる、静かなピアノの音が響く。
 先生がキーボードを弾いている。

 また電子音の再現力に、笙悧は驚く。音だけ聴いていたら、ピアノだと思ってしまう。

 巌のアコースティックギターが、やさしく両手を差しのべて、包み込むように響く。

 2曲目は、バラードだった。
 あたたかな歌声が、客席に満ちる。
 宇宙の微かな息遣いさえが、ここまで聴こえて、マイクの性能に、笙悧は驚く。

 ピアノの音とアコースティックギターだけのシンプルな伴奏が、宇宙の歌声を際立きわだたせる。
 1曲目の、たくさんの音の中でも決して埋もれない、ことばがはっきり聴こえていた宇宙の歌声の強さに、今さら、笙悧は気付かされた。

 全身から輝きがこぼれ出ていると思ったキラキラも、ジャケットとズボンに、ひらひら、細長いリボンが、いくつも、付けられていることに、笙悧は気付く。


 キラキラドーピングじゃん。
 見間違えた自分が恥ずかしくて、笙悧は心の中で、つぶやく。


 宇宙の歌が終わり、先生と巌がアイコンタクトして、ピアノとギターの音を重ね合わせ、最後の一音いちおんを奏でると、静寂の後に、クレッシェンドで段々と大きくなってゆく拍手が起こる。

 今度は、巌がキーボードで、ピアノの音を奏で始める。
 聴いているだけで胸を締め付けられるような、切ないエレキギターの音は、先生が弾くキーボードから奏でられている。

 笙悧は目を見開く。
 巌さんが、ギター弾くんじゃないの?

 宇宙が歌い出したのは、無邪気な少年みたいな彼に振り回されても、別れることができないあきらめを歌った曲で、そんなこと、自分で歌う?と思って、笙悧は笑ってしまった。
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