ゾンビ世界侵略

みかん

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一話 ゾンビ発生 避難所

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 世界中でウイルスによる感染症が流行した。
 そのウイルスは人を凶暴化させる。
 またその、凶暴化した人たちを通称「ゾンビ」と呼ぶ。
 ゾンビは世界中で突如、発生した。

 部屋にゲームの音声だけが響く。
 十七歳の野崎浩は、二階の自分の部屋でゲームをしている。
 最後に家を出たのはいつだったであろうか。もう覚えてもいない。
 すると突然、下の階からドンという大きな音がした。
(なんだ?)
 浩はめんどくさいと思いながらも部屋を出て、階段を降り、一階まで来た。
 リビングから唸り声のような音がする。
 浩はリビングの扉を開けた。
 そこには母を食っている、人型の何かがいた。
 人ではないのはわかる。
 だが、知らないわけではない。
 これはゲームでも映画でも一度は見たことがある、まぎれもないゾンビの姿であった。
「えっ……」
 すると外からは緊急車両のサイレンが聞こえてきた。
 ついていたテレビに目を移す。
『緊急事態 全国各地で発生している人の異常行動』
 そんな言葉がテレビから読み取れた。
 目の前の光景に、再度視界を移した。
 するとゾンビは、自分のほうを見ていた。
「ひっ」
 腐ったような色の肌。むき出しになった歯、そして口にはべっとりとついた血……
 浩は逃げ出したくても体が動かない。
 ゾンビが浩にとびかかった。
 その時だった。
 ガチャ! バン!
 大きな音が耳に響いた。
 自衛隊であろうか。装備を付けた人が複数人、家の中に入ってきた。
 装備を付けている人は、ゾンビを殺した後、浩をつれ、家を出た。
 軍隊用の頑丈そうな車に乗せられた。
 車は一瞬にしてゾンビに囲まれた。
「これを装着させる」
 軍隊の人にガスマスクを顔に付けられると、車は発進した。
 浩はたった一人の親、母を一瞬にして亡くした。

 浩は緊急で開設された避難所まで来た。
 避難所は周りが塀で囲まれた場所で、塀の中のゾンビを全滅させた後にできた場所である。
 避難所の中にはたくさんの人がいた。
「なんなんだよ!」
 そんな声が聞こえてくる
 みんな何が起こっているのか理解できていないようであった。
「くっ……」
 浩の脳裏に母の顔が映った。
 最後に話したのはいつだったか……覚えてもいない。
 強い悲しみとむなしさが、浩を襲った。
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