一話完結ミステリー

蓄積の爆発

「豊隆が……豊隆が……」
　通報を受け、警察車両が小さなオフィスビルの前に到着した。
　警部がオフィスビルの中に入ると、そこには頭から血を流している男性と、その周りで、涙を流している男性の三人がいた。
　
　警部は事情聴取を始めた。
「では、お名前と、現場発見の様子をお話ししていただきましょうか？」
「私は、福地一弘（かずひろ）です、この部屋から大きな物音がして何事かと思い、来てみたら、豊隆が亡くなっていました……驚いて、叫んだら、同僚の二人、酒井修一郎と、村澤義仁（よしひと）も駆けつけてきて、脈がないのを確認して、警察に通報したということです」
　刑事が警部のもとに駆け付けた。
「亡くなったのは、柿本豊隆さん、このオフィスビルで働いている会社員だそうです。死因は、頭を複数回殴られたことによるものだそうです。」
　すると警部は、義仁のズボンの足元に、黒いしみがついているのが分かった。
　
　すると刑事が警部のもとに駆け付けた。
「廊下の自販機のごみ箱から、レンガが見つかり、そのレンガから、柿本豊隆さんの血液反応と村澤義仁さんの指紋が検出されました」
　警部は刑事の報告を聞き、義仁のもとに詰め寄った。
「どういうことですかな？」
「私は知らない！」
　義仁の返す声が少し裏返っている。
「では、そちらのズボンのほう、鑑識に回していただいてもよろしいですかな？」
　警部はそういい、義仁のズボンについた黒い染みを指さした。
　
　義仁は歯を食いしばった後、ため息をつき、話し始めた。
「私、豊隆に嫌がらせを受けていたんです」
「嫌がらせってあの、お前が作成した書類を隠したりするあれか？」
　修一郎は義仁に聞いた。
「あぁ」
「でも、そんなんで……」
　一弘は義仁に言った。
　すると義仁の口調が激しくなった。
「そんなこと……？そんなことか……たしかに、一回じゃ二回じゃそんなことでは殺したりしない……でも毎回だ……何かあるたび、嫌がらせをされ、何をするにも警戒しないといけなかった……最近は職場に来るのもつらかった……もう……耐えられなかった……豊隆の嫌がらせには……もう……」
　こうして、義仁は逮捕された。