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1章
006.ランダムタネ生成の真価
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初めてこの土地でタネ生成をしてから、もう5日が経った。ここデザレインは誰もが見放した荒れ果てた土地だというのに、今では雑草が茫茫と生え、ウォーターウィードとグローアッシュがそこかしこに生えていた。
今日までで生成できた種はヒールリーフの種、アップルンの種、そしてグローアッシュ。
「それにしてもまさかグローアッシュが被るとはな」
俺は手のひらに転がったグローアッシュの種を見つめて、ため息をついた。
「ま、贅沢言える状況じゃないけどな……」
ヒールリーフは薬用植物で、葉を砕いて塗れば傷を癒してくれる優れものだ。生成された種はすでに植えていて、しっかりと育っている。手入れのいらない生命力の強さも、この土地ではありがたい。
アップルンは食用植物で、赤い果実をつける若木だ。これも植えたけれど、まだ芽が出て小さな若木ができただけ。果物が実るには時間がかかりそうだ。しかし、初めての果実がなる植物ができたとあって俺はとても興奮していた。これでスプラウトだけの生活から抜け出せるかもしれないのだからこの胸の高鳴りもわかってもらえると思う。
他にも変わったことがある。いや気づいたことと言うべきか。タネ生成を繰り返すうちに、俺は一つの違和感に気づいたのだ。
選択タネ生成をするとき、タネごとに使われる魔力量が異なる。スプラウトのようなシンプルな植物は魔力の消費が少ないが、アップルンのような果実をつける植物は倍以上の魔力を使う。
「これってランダムタネ生成も同じなのか?」
興味が湧いて次にランダムタネ生成を使うときに、魔力の流れを意識してみた。すると選択タネ生成とは違うものの、やはり少量の魔力が使われていることがわかったのだ。
「……あまりに微妙な違いだけど、確かに違いはあるな」
これに気づけたのは、自分が魔力の感覚に敏感だからだろう。他の人間だったら、おそらく気づけなかったと思う。
そして、この発見からさらに疑問が湧いてきた。
「もし、ランダムタネ生成に魔力を意図的に込めたら……どうなる?」
通常のランダムタネ生成は、ほんの少しの魔力を使うだけだ。それが魔力を込めることで、違う結果をもたらす可能性があるかもしれない。
「……やるしかないよな。」
俺は決意して、ランダム生成に魔力を込めることにした。手のひらにスキルウィンドウを浮かべ、ランダム生成のボタンを押す。だが、今回はただ押すだけではなく、自分の魔力を流し込む感覚で操作する。
「もっと……もっとだ!」
魔力がどんどん吸い取られていく感覚がした。吸収される量が増えるたびに、身体に負荷がかかる。
「くっ……これ……けっこうキツいな……!」
全身が震え、視界が揺れる。それでも俺は手を止めなかった。
最後の魔力が抜けた瞬間、全身から力が抜けて地面に崩れ落ちた。手のひらから黒く大きな種が転がり落ちるのが見えたが、それを拾う余力はなかった。
「また……やりすぎた……か……」
視界がぼんやりとしていき、やがて完全に暗闇に包まれた。
今日までで生成できた種はヒールリーフの種、アップルンの種、そしてグローアッシュ。
「それにしてもまさかグローアッシュが被るとはな」
俺は手のひらに転がったグローアッシュの種を見つめて、ため息をついた。
「ま、贅沢言える状況じゃないけどな……」
ヒールリーフは薬用植物で、葉を砕いて塗れば傷を癒してくれる優れものだ。生成された種はすでに植えていて、しっかりと育っている。手入れのいらない生命力の強さも、この土地ではありがたい。
アップルンは食用植物で、赤い果実をつける若木だ。これも植えたけれど、まだ芽が出て小さな若木ができただけ。果物が実るには時間がかかりそうだ。しかし、初めての果実がなる植物ができたとあって俺はとても興奮していた。これでスプラウトだけの生活から抜け出せるかもしれないのだからこの胸の高鳴りもわかってもらえると思う。
他にも変わったことがある。いや気づいたことと言うべきか。タネ生成を繰り返すうちに、俺は一つの違和感に気づいたのだ。
選択タネ生成をするとき、タネごとに使われる魔力量が異なる。スプラウトのようなシンプルな植物は魔力の消費が少ないが、アップルンのような果実をつける植物は倍以上の魔力を使う。
「これってランダムタネ生成も同じなのか?」
興味が湧いて次にランダムタネ生成を使うときに、魔力の流れを意識してみた。すると選択タネ生成とは違うものの、やはり少量の魔力が使われていることがわかったのだ。
「……あまりに微妙な違いだけど、確かに違いはあるな」
これに気づけたのは、自分が魔力の感覚に敏感だからだろう。他の人間だったら、おそらく気づけなかったと思う。
そして、この発見からさらに疑問が湧いてきた。
「もし、ランダムタネ生成に魔力を意図的に込めたら……どうなる?」
通常のランダムタネ生成は、ほんの少しの魔力を使うだけだ。それが魔力を込めることで、違う結果をもたらす可能性があるかもしれない。
「……やるしかないよな。」
俺は決意して、ランダム生成に魔力を込めることにした。手のひらにスキルウィンドウを浮かべ、ランダム生成のボタンを押す。だが、今回はただ押すだけではなく、自分の魔力を流し込む感覚で操作する。
「もっと……もっとだ!」
魔力がどんどん吸い取られていく感覚がした。吸収される量が増えるたびに、身体に負荷がかかる。
「くっ……これ……けっこうキツいな……!」
全身が震え、視界が揺れる。それでも俺は手を止めなかった。
最後の魔力が抜けた瞬間、全身から力が抜けて地面に崩れ落ちた。手のひらから黒く大きな種が転がり落ちるのが見えたが、それを拾う余力はなかった。
「また……やりすぎた……か……」
視界がぼんやりとしていき、やがて完全に暗闇に包まれた。
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