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記憶の断片
少女、招集される。
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「シェラちゃーん!遊びに来ましたよー!」
玄関の扉を開けてシェラを呼ぶ知らない女性の声が聞こえる。
「シェラ様なら、カリヤさんとお出かけになられましたよ。」
メイド服を来た少女がその女性の前まで移動して言うと女性は驚いた様子で目を丸くしていた。
「わわっ!驚きました…気がつかなくてごめんなさいね。」
「いえ、お構いなく。私はそう言う性質ですので、気がつかないのも無理は無いです。」
「そ、そうなんだ…」
私は魔族の間で固有能力と呼ばれる特殊なスキルを持っているのです。
私の場合ですと、蜃気楼と呼ばれるスキルがありますね。
このスキルは私と任意の対象を認識し難くさせる力があります。
この力の性質上、必ず自分が能力の影響を受けた状態を保たれるようになります。
ただし、自分の契約者とシャタルア様のような格上の魔族には効果が全く無いか効果が薄い場合が多いです。
とは言っても、私は人間で言うところのBランク程度の力がございますので、決して弱い訳では無いのです。
言うなら、上位層の力を持っているのです。
それでも、契約の力には抗えないんですけどね…
「あの…良かったら、お名前を教えてもらっても良いかな?一応、私もシェラちゃんのパーティの仲間だし、貴方もシェラちゃんのパーティになるんでしょ?」
私は自信たっぷりに胸を張る。
でも、シェラ様みたいに大きくは無いですね。
とても平坦です。
シャタルア様の様な角も無いですね。
普通のヒトの子と思われても無理は無いです。
魔族としてはちょっと悔しいですけど…
「私の名前はティアラです。シェラ様がつけてくださった初めての名前なのです!」
「そうなんだ!私はメイリーンです。ティアラちゃん、よろしくね!」
メイリーンは陽に当たって白く輝く毛を揺らして翡翠の目を嬉しそうに細めて言う。
私の髪より白く優しそうな翡翠の目は信用しても良いと直感的に感じた。
まあ、視線はなんか同性に向けるにしては異常だけど…
「シェラちゃんが一番だけど、ティアラちゃんも可愛いなぁ…ぐへへ…二人と温泉に行きたいなぁ…あ、カリヤちゃんも連れて行きたいから、三人だね!はぁ…はぁ…想像しただけで体温上がって来た…ぐへ…ぐへへへ…」
前言撤回、この人はヤバい人だ。
油断したら、襲われる。
そんなやり取りをしているとシャタルアさんが私たち二人を見て言う。
「ティアラ、メス犬、今すぐ我に着いてくるのじゃ。招集?があるでな!」
「ちょっと!レディーに対してメス犬扱いは酷いんじゃないかしら?」
メイリーンが「プンスコ」と口で言いながら怒る。
そう言うのって自分で言うものじゃないと思うんですけど…
「いや、あんな発情期のケモノの様な顔してたら、メス犬扱いも仕方なかろうて…」
シャタルアさんが呆れた様子で言う。
申し訳ないけど、私もそれには同意します。
そんなことを考えながら、私は急いで出る用意を済ませる。
…
「お待たせしてすみません」
私は会議室に案内されて入室直後に頭を下げて謝罪する。
「おう。待ったぜ!」
エールはそんな事を言いながら笑う。
「ティアラちゃん、こっちだよ。」
シェラが自分の隣の席を指さす。
反対の隣の席には眠そうなカリヤがいた。
「失礼します。」
私が座り、メイリーンも座る。
シャタルア様は何故か立ったままでしたが、ただ単に椅子が合わなかっただけとの事です。
高位の魔族は私たちとは何かが違うのでしょうか?
後でシャタルア様にお伺いしなくては…
「んで、今日お前らにここに来てもらったのには理由があってな。」
エールがそう言って説明しようとするが、メイリーンが若干食い気味に言う。
「エール、先に内容を教えてください。理由もそこにあるのでしょう?」
「あ、あぁ…まあ、そうなんだが…」
エールは一旦咳払いをすると言う。
「お前らはシェラの正体は知っているな?」
私以外の全員が頷く。
「すみません。私は何も存じ上げておりませんが、それが関係するのですか?」
シャタルアが大きな欠伸をしながら言う。
「ふわぁ~…シェラはあのシェテラエンデの生まれ変わりなのじゃ。」
大賢者シェテラエンデ様、それは私たち魔族の間でも凄まじい力を持った伝説の大賢者です。
そして、魔王シャタルア様のお母様でもあります。
全ての魔の始祖であるシェテラエンデ様は人間界では魔法神であると同時に私たち魔族の中でも魔神として崇められているお方です。
「て言うことは…私は…」
私はシェラの顔を見る。
シェラは何かを考えている様子で顎に手を置いて首を傾げていた。
「そういうことじゃな。」
シャタルアは短く肯定する。
「ひえぇ…」
私はとんでもないお方と契約を結んでしまったようです。
そんな私を尻目にエールが言う。
「んで、お前らにはそのシェテラエンデ様の家に向かって貰いたいんだ。つまりは調査依頼だな。」
メイリーンが納得出来ないと言いたげに言う。
「エール、それだけの理由なら私たち全員を招集する必要はありませんよね?シェラちゃんのこと…もとい、転生について調べる必要があるのですよね。」
「ガッハッハッ!メイリーンにはかなわねぇな!だが、この依頼はあくまでも調査依頼だ。転生については報告義務は無いぜ。あくまでもシェテラエンデ様の家に関する事だけだ。ほれ、書類通りだろ?」
エールがメイリーンに書類を渡しながら言う。
「…そうですね。確かにシェテラエンデ様の家についての報告のみが依頼内容ですね。」
メイリーンが書類を見ながらため息をつく。
「そういうことだ。それに勝手に個人の秘密をバラすわけにはいかねぇしな。」
「エールにしては気が利きますね…もしかして、脳でもイジられてます?」
「相変わらず容赦ねぇな…お前は…ま、俺にだってそのくらいの配慮をする脳はあるってこった。」
エールがそう言った直後、シェラが思いついたように言う。
「お昼はカツカレーにしよう!」
場がシーンと静まり返る。
「あっ…」
シェラも気がついた様子で恥ずかしそうに頬を掻く。
「す、すみません…お腹空いちゃって…」
「だから、あれほど飯を食えと言っておいたじゃろ…全く…」
シャタルアが呆れた様子で言う。
「だってぇ…招集があるなんて思ってなかったんだもん…」
シェラが拗ねたような声を出しながら言う。
「あはは!シェラちゃん、お腹空いちゃったのね!後でエールのお金でたくさんご飯を食べるわよ!」
メイリーンがいつの間にか取ったエールの財布をヒラヒラさせる。
「おい!他はともかく、お前の食事量じゃ、俺の財布に穴が空いちまうだろ!」
エールが財布を取り返そうとするが、メイリーンが谷間に財布を挟んだ事で手出しが出来なくなっていた。
「ほらほら、エール、ここにお財布がありますよ~」
「それはズルだろ…」
エールは大きなため息をつきながら、両手を上げて降参のポーズをする。
「エールのそう言うところは好きですよ。」
メイリーンがニコニコ微笑みながらエールに財布を返す。
「そりゃどうも。」
エールは大きなため息をはいていた。
「すぴー…すぴー…もう食べられないよ…すぴー…すぴー…」
「カリヤは寝とるやないかいっ!」
シャタルアが勢いよくツッコミを入れると「ぷぅ?」と鼻音を鳴らしてカリヤが起きる。
「ん…くあ~!寝てた…」
カリヤは大きなあくびをしながら言う。
あ…ヨダレの跡がついてます…
シャタルアが呆れた様子でハンカチを取り出してカリヤの口を拭く。
「んにゃ…ありがとう…」
「…起きてるんじゃぞ。」
「うん…頑張りま…すぅ…はっ!」
カリヤは再度寝かけてハッとした様子で起きる。
自由なヒトたちですね。
このヒトたちだけだと絶対トラブル確定演出待ったナシですね。
自由過ぎて逆に怖いです。
ここは私とメイリーンさんでなんとかしないと…
あ、ダメだ…
メイリーンはカリヤさんの方を見て鼻血出してます…
自分で言うのもアレですけど、まともなのが私しか残って無いじゃないですか!
先行き不安要素しか無いんだけどぉ!?
…失礼。かなり取り乱しました。
「…調査依頼と言うことは報酬も出るのですよね?」
私は気を取り直してエールに聞くとエールは「もちろんだ」と言う。
「基本報酬の5000Gとそれに加えて、報告内容による達成報酬もあるみたいだな。詳しい事は何も知らされてないから知らねぇけど…」
「えぇ…それはとても怪しい依頼なのでは?」
私の疑いの目に臆する事なくエールは言う。
「それについては安心してくれ。一応、国王直々の依頼だからな。」
「…ヒトの王は随分と身勝手なんですね。」
「全くだぜ。おかげで冒険者からはこっちが悪く言われるもんでたまったもんじゃねぇ…」
私が呆れるとエールも同じように考えていたようだ。
「なら、その王に躾をしてきましょうか?ちょうど試したい魔法があるんですよ。」
シェラが楽しげに言う。
「辞めてくれ!俺の首が飛んじまうよ!」
「あはは!冗談ですよ~」
エールが勢いよく止めにかかるとシェラは笑って冗談だと言うが、目が本気だった。
本気と書いてマジと読むやつの目でしたよ。
「ま、いっか。その王のおかげで私は目的を果たせるし、感謝しとかないとね。」
シェラがそう言うとカリヤは「終わったの?」と首を傾げる。
「はぁ…はぁ…可愛いが…いっぱいで…鼻血と脳汁が止まりませんわぁ…」
…うん。メイリーンさんは間違いなく変態の神様ですね。
「はぁ…はぁ…ティアラちゃんのゴミを見るような目も可愛い…」
ここまで来ると一周まわって普通に見えてきました。
間違いなく異常なほど変態なのには変わりないですけど…
私もまだまだ修行が足りないのでしょうか…
いや、変態の修行なんかしてないですけど!
「あぁ…ティアラちゃんが私を見てる…可愛い…」
メイリーンが恍惚とした表情でこちらを見ている。
「もうヤダこのヒトォ…」
その視線に頭を抱える私の虚しい呟きは誰の耳にも入らないのでした。
「よーし!やる気出して行くぞー!」
「おー!」
「ふわぁ…我も久々に楽しくなってきたのじゃ。」
「はぁ…はぁ…シェラちゃんがやる気満々で可愛い…天使過ぎる…カリヤちゃんも拳を突き上げてて可愛い…」
あ、このヒト、シャタルア様には反応しないんですね…
羨ましい…
玄関の扉を開けてシェラを呼ぶ知らない女性の声が聞こえる。
「シェラ様なら、カリヤさんとお出かけになられましたよ。」
メイド服を来た少女がその女性の前まで移動して言うと女性は驚いた様子で目を丸くしていた。
「わわっ!驚きました…気がつかなくてごめんなさいね。」
「いえ、お構いなく。私はそう言う性質ですので、気がつかないのも無理は無いです。」
「そ、そうなんだ…」
私は魔族の間で固有能力と呼ばれる特殊なスキルを持っているのです。
私の場合ですと、蜃気楼と呼ばれるスキルがありますね。
このスキルは私と任意の対象を認識し難くさせる力があります。
この力の性質上、必ず自分が能力の影響を受けた状態を保たれるようになります。
ただし、自分の契約者とシャタルア様のような格上の魔族には効果が全く無いか効果が薄い場合が多いです。
とは言っても、私は人間で言うところのBランク程度の力がございますので、決して弱い訳では無いのです。
言うなら、上位層の力を持っているのです。
それでも、契約の力には抗えないんですけどね…
「あの…良かったら、お名前を教えてもらっても良いかな?一応、私もシェラちゃんのパーティの仲間だし、貴方もシェラちゃんのパーティになるんでしょ?」
私は自信たっぷりに胸を張る。
でも、シェラ様みたいに大きくは無いですね。
とても平坦です。
シャタルア様の様な角も無いですね。
普通のヒトの子と思われても無理は無いです。
魔族としてはちょっと悔しいですけど…
「私の名前はティアラです。シェラ様がつけてくださった初めての名前なのです!」
「そうなんだ!私はメイリーンです。ティアラちゃん、よろしくね!」
メイリーンは陽に当たって白く輝く毛を揺らして翡翠の目を嬉しそうに細めて言う。
私の髪より白く優しそうな翡翠の目は信用しても良いと直感的に感じた。
まあ、視線はなんか同性に向けるにしては異常だけど…
「シェラちゃんが一番だけど、ティアラちゃんも可愛いなぁ…ぐへへ…二人と温泉に行きたいなぁ…あ、カリヤちゃんも連れて行きたいから、三人だね!はぁ…はぁ…想像しただけで体温上がって来た…ぐへ…ぐへへへ…」
前言撤回、この人はヤバい人だ。
油断したら、襲われる。
そんなやり取りをしているとシャタルアさんが私たち二人を見て言う。
「ティアラ、メス犬、今すぐ我に着いてくるのじゃ。招集?があるでな!」
「ちょっと!レディーに対してメス犬扱いは酷いんじゃないかしら?」
メイリーンが「プンスコ」と口で言いながら怒る。
そう言うのって自分で言うものじゃないと思うんですけど…
「いや、あんな発情期のケモノの様な顔してたら、メス犬扱いも仕方なかろうて…」
シャタルアさんが呆れた様子で言う。
申し訳ないけど、私もそれには同意します。
そんなことを考えながら、私は急いで出る用意を済ませる。
…
「お待たせしてすみません」
私は会議室に案内されて入室直後に頭を下げて謝罪する。
「おう。待ったぜ!」
エールはそんな事を言いながら笑う。
「ティアラちゃん、こっちだよ。」
シェラが自分の隣の席を指さす。
反対の隣の席には眠そうなカリヤがいた。
「失礼します。」
私が座り、メイリーンも座る。
シャタルア様は何故か立ったままでしたが、ただ単に椅子が合わなかっただけとの事です。
高位の魔族は私たちとは何かが違うのでしょうか?
後でシャタルア様にお伺いしなくては…
「んで、今日お前らにここに来てもらったのには理由があってな。」
エールがそう言って説明しようとするが、メイリーンが若干食い気味に言う。
「エール、先に内容を教えてください。理由もそこにあるのでしょう?」
「あ、あぁ…まあ、そうなんだが…」
エールは一旦咳払いをすると言う。
「お前らはシェラの正体は知っているな?」
私以外の全員が頷く。
「すみません。私は何も存じ上げておりませんが、それが関係するのですか?」
シャタルアが大きな欠伸をしながら言う。
「ふわぁ~…シェラはあのシェテラエンデの生まれ変わりなのじゃ。」
大賢者シェテラエンデ様、それは私たち魔族の間でも凄まじい力を持った伝説の大賢者です。
そして、魔王シャタルア様のお母様でもあります。
全ての魔の始祖であるシェテラエンデ様は人間界では魔法神であると同時に私たち魔族の中でも魔神として崇められているお方です。
「て言うことは…私は…」
私はシェラの顔を見る。
シェラは何かを考えている様子で顎に手を置いて首を傾げていた。
「そういうことじゃな。」
シャタルアは短く肯定する。
「ひえぇ…」
私はとんでもないお方と契約を結んでしまったようです。
そんな私を尻目にエールが言う。
「んで、お前らにはそのシェテラエンデ様の家に向かって貰いたいんだ。つまりは調査依頼だな。」
メイリーンが納得出来ないと言いたげに言う。
「エール、それだけの理由なら私たち全員を招集する必要はありませんよね?シェラちゃんのこと…もとい、転生について調べる必要があるのですよね。」
「ガッハッハッ!メイリーンにはかなわねぇな!だが、この依頼はあくまでも調査依頼だ。転生については報告義務は無いぜ。あくまでもシェテラエンデ様の家に関する事だけだ。ほれ、書類通りだろ?」
エールがメイリーンに書類を渡しながら言う。
「…そうですね。確かにシェテラエンデ様の家についての報告のみが依頼内容ですね。」
メイリーンが書類を見ながらため息をつく。
「そういうことだ。それに勝手に個人の秘密をバラすわけにはいかねぇしな。」
「エールにしては気が利きますね…もしかして、脳でもイジられてます?」
「相変わらず容赦ねぇな…お前は…ま、俺にだってそのくらいの配慮をする脳はあるってこった。」
エールがそう言った直後、シェラが思いついたように言う。
「お昼はカツカレーにしよう!」
場がシーンと静まり返る。
「あっ…」
シェラも気がついた様子で恥ずかしそうに頬を掻く。
「す、すみません…お腹空いちゃって…」
「だから、あれほど飯を食えと言っておいたじゃろ…全く…」
シャタルアが呆れた様子で言う。
「だってぇ…招集があるなんて思ってなかったんだもん…」
シェラが拗ねたような声を出しながら言う。
「あはは!シェラちゃん、お腹空いちゃったのね!後でエールのお金でたくさんご飯を食べるわよ!」
メイリーンがいつの間にか取ったエールの財布をヒラヒラさせる。
「おい!他はともかく、お前の食事量じゃ、俺の財布に穴が空いちまうだろ!」
エールが財布を取り返そうとするが、メイリーンが谷間に財布を挟んだ事で手出しが出来なくなっていた。
「ほらほら、エール、ここにお財布がありますよ~」
「それはズルだろ…」
エールは大きなため息をつきながら、両手を上げて降参のポーズをする。
「エールのそう言うところは好きですよ。」
メイリーンがニコニコ微笑みながらエールに財布を返す。
「そりゃどうも。」
エールは大きなため息をはいていた。
「すぴー…すぴー…もう食べられないよ…すぴー…すぴー…」
「カリヤは寝とるやないかいっ!」
シャタルアが勢いよくツッコミを入れると「ぷぅ?」と鼻音を鳴らしてカリヤが起きる。
「ん…くあ~!寝てた…」
カリヤは大きなあくびをしながら言う。
あ…ヨダレの跡がついてます…
シャタルアが呆れた様子でハンカチを取り出してカリヤの口を拭く。
「んにゃ…ありがとう…」
「…起きてるんじゃぞ。」
「うん…頑張りま…すぅ…はっ!」
カリヤは再度寝かけてハッとした様子で起きる。
自由なヒトたちですね。
このヒトたちだけだと絶対トラブル確定演出待ったナシですね。
自由過ぎて逆に怖いです。
ここは私とメイリーンさんでなんとかしないと…
あ、ダメだ…
メイリーンはカリヤさんの方を見て鼻血出してます…
自分で言うのもアレですけど、まともなのが私しか残って無いじゃないですか!
先行き不安要素しか無いんだけどぉ!?
…失礼。かなり取り乱しました。
「…調査依頼と言うことは報酬も出るのですよね?」
私は気を取り直してエールに聞くとエールは「もちろんだ」と言う。
「基本報酬の5000Gとそれに加えて、報告内容による達成報酬もあるみたいだな。詳しい事は何も知らされてないから知らねぇけど…」
「えぇ…それはとても怪しい依頼なのでは?」
私の疑いの目に臆する事なくエールは言う。
「それについては安心してくれ。一応、国王直々の依頼だからな。」
「…ヒトの王は随分と身勝手なんですね。」
「全くだぜ。おかげで冒険者からはこっちが悪く言われるもんでたまったもんじゃねぇ…」
私が呆れるとエールも同じように考えていたようだ。
「なら、その王に躾をしてきましょうか?ちょうど試したい魔法があるんですよ。」
シェラが楽しげに言う。
「辞めてくれ!俺の首が飛んじまうよ!」
「あはは!冗談ですよ~」
エールが勢いよく止めにかかるとシェラは笑って冗談だと言うが、目が本気だった。
本気と書いてマジと読むやつの目でしたよ。
「ま、いっか。その王のおかげで私は目的を果たせるし、感謝しとかないとね。」
シェラがそう言うとカリヤは「終わったの?」と首を傾げる。
「はぁ…はぁ…可愛いが…いっぱいで…鼻血と脳汁が止まりませんわぁ…」
…うん。メイリーンさんは間違いなく変態の神様ですね。
「はぁ…はぁ…ティアラちゃんのゴミを見るような目も可愛い…」
ここまで来ると一周まわって普通に見えてきました。
間違いなく異常なほど変態なのには変わりないですけど…
私もまだまだ修行が足りないのでしょうか…
いや、変態の修行なんかしてないですけど!
「あぁ…ティアラちゃんが私を見てる…可愛い…」
メイリーンが恍惚とした表情でこちらを見ている。
「もうヤダこのヒトォ…」
その視線に頭を抱える私の虚しい呟きは誰の耳にも入らないのでした。
「よーし!やる気出して行くぞー!」
「おー!」
「ふわぁ…我も久々に楽しくなってきたのじゃ。」
「はぁ…はぁ…シェラちゃんがやる気満々で可愛い…天使過ぎる…カリヤちゃんも拳を突き上げてて可愛い…」
あ、このヒト、シャタルア様には反応しないんですね…
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