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第三章 ザハラ王国編
70 ここから始まる
不気味な音が響く。
……何だ?
地の底から目に見えない何かが這い上がってくるように、その音がじわじわと大きくなってゆく。
足元がぐらりと揺れて――大地が怒りを噴き上げた。
(きゃああっ!)
突然襲ってきた激震に、広場はたちまち混乱に陥った。
(早く逃げろ!)
(誰か助けて!)
(ああ、神さま……!)
人々が押し合い、転げ、泣き叫ぶ。
巨大な壁が悲鳴を上げるように軋み、倒れた彫像が派手な音を立てて砕け散った。
突き上げるような揺れに堪えきれず、レイラ姉さんが地面に崩れ落ちた。
「姉さん!」
慌ててその手を掴むと、姉さんが呆然と呟いた。
「どうして、こんなことに……」
そんなこと、俺にだってわからない。
揺れはますます激しさを増してゆく。
「うわぁっ!」
「……ロイド!」
倒れそうになった俺を、ルシアンが支えてくれる。
彼の口からも、戸惑うような声が溢れる。
「これは……神罰、なのか……?」
俺たちは、ザハラの平和を願ったはずだった。
戦は終わり、ザハラは新しく生まれ変わる……そう信じていたのに。
あの願いも、祈りも……全部、無駄だったのか?
「ちくしょう!」
結局、人間なんて神の気まぐれに弄ばれるだけ。
それが運命だなんて……冗談じゃない!
込み上げてくる怒りにまかせて、俺は宙に向かって声を張り上げた。
「この……ポンコツ女神! 俺たちを騙したのか!」
――まあ、失礼ねっ! これもザハラのためよ!
「俺たちは平和を願ったのに……何だよ、これは!」
すると、男神の低い声が響いた。
――ロイドよ、これはほんの始まりにすぎない。
「これ以上何をしようってんだ! この国を滅ぼす気かっ!」
男神と女神が愉しげに笑う。
――まあ見てなさい、とっておきの贈り物を授けてあげるから!
――ああ、これでザハラは安泰だ!
「ふざけるなっ!」
「冗談じゃないわっ!」
レイラ姉さんの怒った声が、俺の叫びに重なった。
――まぁ、さすが姉弟ね。息もぴったり! その調子なら、この揺れだって止められるわね?
「つべこべ言わず、どうすればいいか教えろっ!」
――お前たちの魔力を、宙へ解き放て。その力で、この世界を変えるのだ!
俺と姉さんは、思わず顔を見合わせた。
「世界を変えろって? 俺たち、何を試されてるんだ……」
「とにかくこの揺れを止めないと。犠牲が出る前に」
俺たちは、無言で頷き合った。
「俺たちに力があるなら、やるしかないな」
「ええ、この力は、民のために使うと決めたんだもの」
「よしっ!」
俺が夜空に向けて魔力を放つと――
閃光が弾け、暗い夜空に黄玉色に輝く魔法陣が浮かび上がった。複雑な紋様が渦を巻き、俺の魔力を吸いこんで明るく輝く。
そのすぐ隣にもう一つ、蒼玉色に輝く魔法陣が現れた。
レイラ姉さんの魔力だ。
――よしっ、そのまま魔力を注ぎ続けろ!
――この国の未来は、あなた達にかかってるからねっ!
くそっ、好き勝手言いやがって。
魔力を放ち続けるのは、大変なんだ!
膝が震え、息が荒くなる。視界もじわりと滲んできた。
それでも神々は、もっと魔力が必要だと言い続ける。
「ぐっ……!」
額から汗が滴り落ちた。
二つの魔法陣がゆっくりと広がって、その縁が触れ合った――その時だった。
俺の魔力に、温かく優しい力が重なった。
懐かしい声が、心の奥へ染み込んでくる。
(ロイド……レイラ……)
母さんと父さんが微笑んでいた。
二人の想いが、俺たちを包み込む。
(いつだって、お前たちを想ってる……)
父さんの力強い声が、俺の迷いを吹き飛ばす。
(あなたたちを愛してる……そのことを忘れないで)
母さんの優しい声に、思わず涙が出そうになった。
「ああ、母さま…… それに、父さまも……」
隣で、レイラ姉さんが声を震わせた。
「ロイド……聞こえてる?」
「ああ……姉さんも?」
母さんと父さんが見守ってくれてる――
更に、魔力に力を込めた。
――ロイド、レイラ、手を緩めるな!
「ぐっ……」
身体の芯から力が抜けていく。レイラ姉さんの吐く息も苦しそうだ。
このままじゃ、キツイな――そう感じ始めた時だった。
真っ赤な炎が夜空を貫き、紅玉色の魔法陣が浮かび上がった。
「ロイド、私の魔力も使え!」
その声は、ルシアンだった。
彼が放つ炎が奔流となって夜空を駆け上がり、俺の魔法陣に触れた、その瞬間――
ルシアンの想いが、俺の中に流れ込んできた。
愛してる……ロイド。
お前だけを、ずっと。
胸が熱くなった。ああ、俺はこんなにも……愛されてる。
ルシアン、俺も……
ルシアンが、嬉しそうに微笑んでくれる。
俺の精一杯の返事も、ちゃんと伝わったようだ。
――ああ、もうっ! イチャイチャしてないで、もっと魔力を送んなさいっ!
女神が喚いている間、ルシアンは騎士団の連中に声をかけていた。
「お前たち! あの紅い魔法陣を狙って魔力を放て!」
団長の号令に、ラクロスの騎士たちが心得たとばかりに、一斉に紅玉色の魔法陣めがけて魔力を撃ち始めた。
火魔法、水魔法、土魔法に、治癒魔法……んっ、絶倫魔法?
そんな魔法があったんだ……
とにかく、いろんな魔力が紅玉色へ吸い込まれてゆくと、仲間たちの声が聞こえてきた。
(しっかりしろ、ロイド!)
(負けんなよ!)
(俺たちが、ついてるからな1)
……なんだよ。こんな時に泣かせるようなことを言うなよ。
俺はひとりじゃない、お前たちがいてくれる。
(くっそぉお、俺も可愛い彼女が欲しいっ!)
その間抜けな声に、思わず吹き出した。
インビジブル魔法……ジェイだ!
すると、新たな魔力が加わって、紅玉色の魔法陣が一回り大きくなった。
カインの強化魔法だ。
(ロイド……ルシアン団長と幸せになれよ)
振り向くと、カインが笑顔を返してくれた……少しだけ眉を下げながら。
俺は狡い。彼の気持ちに気づかないふりをした。それなのに……
なんで、そんなに優しいんだよ。
俺は、彼に向かって何度も頷いた。
すると、突然、夜空に巨大な火柱が噴き上がった。
「――っ、あちっ!」
桁違いの魔力量だ……親父どのは、手加減ってものを知らないからなぁ。
乱暴だけど、強く熱い想いが伝わってくる。そうやって、俺をここまで育ててくれた。
(立派になったな、ロイド、もう心配することはないな……)
親父どの猛炎に続いて、今度は澄みきった魔力が流れてきた――セリーヌ夫人の浄化魔法。
清らかな魔力と共に、穏やかな声が心に響く。
(やっと、あなたらしく生きられるのね……よかった)
その優しい力で、俺の心の傷を癒してくれた。
感謝します、セリーヌ夫人……俺は、もう大丈夫です。
夫人の紫の瞳が、嬉しそうに揺れた。
その時、ふわっと爽やかな風が吹き抜けた。
(私たちも、加勢するわ!)
ゼフィーとゾラの声だ。
彼女たちに呼応するように、力強い風が吹き抜ける。
(ロイド、これまで殿下を支えてくれたこと、感謝する)
トビアス……まだ、エリスのこと殿下呼びしてるのかよ。
そんな調子だと、そのうち――
その時突然、夜空に巻き起こったのは竜巻?!
これは、もう間違いない。
(トビー! 名前で呼んでって言ったでしょ!)
ほら、エリスの登場だ。
さすがは王族、魔力量が半端ない……
(ロイド、私の魔力も使ってちょうだい!)
ありがたいけど……どうしてルシアンの火魔法を吹き消そうとしてるんだ?
(エリス、お前っ!)
(ふん、自分だけロイドにいいところを見せようなんて、狡いわよっ!)
二人揃うと、どうしていつもこうなるんだ……
みんなの想いが重なって一つの祈りとなった。紅玉色の魔法陣はその祈りを呑み込んで、すでに他の二つと肩を並べるほど巨大に膨れ上がっていた。
紅玉色、黄玉色、蒼玉色、三つの魔法陣が渦を巻きながら重なり合った――その時、
ゴゴゴゴゴゴォッ!!
凄まじい地鳴りと共に激震が襲った。足元が隆起し、大地がうねる。
「くそっ、揺れが酷くなったじゃないか!」
俺が叫ぶと、レイラ姉さんが宙を指した。
「あれを……見て!」
三色の魔法陣が重なり合った部分に見えるのは――底知れぬ深淵。
光も影も、あらゆるものを呑み込んで、跡形なく消し去ってしまう暗闇だ。
その暗闇へ、俺たちの魔力が吸い込まれてゆく。
―― あの穴を塞ぐのだ!
―― 魔力を、もっと魔力を注いで!
神々の声が響き渡る。
だが、もう限界に近い。魔力も体力も削られてゆくばかり。
……まだ足りない……もう少し魔力があれば……
そう願った時、重々しい足音が近づいてきた。
「あれは、俺が片づける」
俺の隣に立ったのは、アシークだった。
彼は三つの魔法陣を見上げると、渦巻く暗闇へ手を翳した。
「今、この時に……俺のすべてを捧げよう」
彼がそう唱えた瞬間、白い影が彼の前へ飛び出した。
「主っ、ダメだ! あの深淵に触れたら、いくら主でもどうなるか!」
白虎が彼の足元に縋りつき、必死に止めようとする。
アシークは白虎を静かに見下ろした。
「だから、俺がやると言っているのだ」
アシークの大きな手が、白銀の毛並みを撫でた。
「……ザグン、お前の役目ももう終わりだ。男神の元へ戻れ」
だが、白虎は蹲ったまま、その場を動こうとしない。
アシークはわずかに口元を緩めただけで、再び夜空へ目を向けた。
魔法陣の中心で渦巻く暗闇――深淵を狙って、彼が魔力を放った。
時だけが刻々と過ぎてゆく――
暗闇がアシークの魔力を吸い尽くしてゆく。このままでは彼の魔力だけでなく、彼自身まで呑み込まれてしまうのではないか――誰もがそう恐れ始めた時、
「穴が、塞がってゆくぞ!」
誰かが叫ぶ声に、俺たちは祈るような思いで夜空を見上げた。
暗い穴が、わずかに、だが確実に縮んでいく。
胸の奥に希望が生まれた、その時、
「主っ、 もう止めて!」
ザグンが悲鳴を上げ、アシークにしがみついた。
その足元が、透き通るように薄くなっていた。魔力と共に、彼の存在そのものが深淵に吸い込まれているのだ。
「これ以上魔力を失ったら、主は消えてなくなってしまう!」
その悲痛な声に、レイラ姉さんの叫ぶ声が重なった。
「アシーク、無茶よ! 魔力を止めて!」
アシークがゆっくりと姉さんへ振り向いた。
「レイラ……俺は、きっとこのために生きてきたのだ。お前と……ロイドを守るために」
「そんな……!」
すると、彼の瞳がわずかに揺れた。
「レイラ……お前を自由にしてやると言ったのに、約束を守れなかったな」
「何を言ってるの! あなたは、いつだって私を守ってくれた! 優しかったあなたが、戦いに身を投じたのも、私のためだったのでしょう? 謝るのは私のほうよ!」
「その戦いもじきに終わる。お前は自由になる……もう、私は必要ない」
「そんなこと、言わないで……!」
アシークは、もう膝まで消えかかっている。それでも彼は、魔力を放つ手を止めようとしない。
深淵が塞がるのが先か、それとも、彼が消え失せてしまうのが先なのか。
「アシーク、もういい! 」
気づけば、俺は叫んでいた。
彼が驚いたように、俺を見た。
「お前は……俺など消えてしまえばいいと、そう思っていたのではないのか?」
「バカやろう! 俺がどう思おうと関係ない! お前を心配する人がいるんだ! 姉さんに、ザグンを見ろ! お前に消えてほしくないんだよ!」
アシークが息を呑んだ。そして、姉さんを見て、足元に蹲るザグンへと視線を落とした。
「……レイラ……ザグン……」
彼の瞳から孤独の影が消え、代わりに温かい光が灯った。
彼が初めて見せる顔だった。
「俺を気にかけてくれる者がいるか……なぜ気づかなかったのだろうな……きっと、お前のせいだ」
「……俺の、せい? 」
アシークの瞳が、俺を捉えて離さない。
俺の姿を、その瞳に焼きつけようとするように。
「ああ、お前だけを見ていたからな……お前が別の男を想っているとわかっていても、どうしても諦められなかった」
「そんな……どうしようもないこと……」
アシークが片手で胸を抑えた。
だが、その手も透けて消えかかっている。
「そうだな……俺も、この想いをどうすればよいかわからなかった。だが、これが俺の生き方だ。お前も、お前らしく生きてゆけ」
「もういい、早く魔力を止めろ! このままだと、お前は……!」
俺は必死にアシークへ手を伸ばした。そうやって、彼をこの世界に引き止めようとするように。
だが、その指先は虚しく彼の身体をすり抜けた。
「……俺はお前を殴り、押さえつけ、犯し続けた男だ。だから、俺を憎め。いつまでも憎み続けろ」
「お前は……それでいいのか?」
「ああ……そうすれば、俺はお前の心の中に居座り続けられる」
憎めと言いながら、彼は穏やかな笑みを浮かべる。
その顔も、もう淡く透けている。
「ロイド……お前を知って、俺は色々な感情を知った。お前をこの腕に抱いていると、世界が色づいて見えたな……なあ、ロイド……」
アシークの唇が微かに震えた。
……愛して……る……
その一言だけを残して、アシークは煙のように俺の前から消えてしまった。
「アシーク!」
彼の声はまだ耳に残っているのに。
あの金色の瞳が俺を見つめることは、もう二度とない。
レイラ姉さんの啜り泣く声が聞こえる。
気づけば、俺の頬も濡れていた。
ザグンの姿も消えていた。きっと、アシークの後を追ったのだろう。
(いつか、主と一緒に故郷の森に帰るんだ……)
あいつはそう笑っていた。
白銀の髪を靡かせ、真紅の瞳にアシークだけを映して。
アシークが消えてしまった、その直後、夜空に浮かぶ三つの魔法陣が完全に重なり合った。
眩い光と共に、魔法陣が花火のように爆ぜ散った――その瞬間、
ドドドォーンッ!!
轟音と共に、広場を囲んでいた壁が一気に崩れ落ちた。
地面に伏せた俺たちの上に土埃が吹き上がり、一瞬にして世界が真っ白になった。
……やがて、ゆっくりと騒めきが戻ってきた。
いつの間にか地鳴りは止み、揺れもすっかり収まっていた。
神々の声も聞こえない。ひと仕事を終えたと、姿を消してしまったようだ。
ゆっくりと身体を起こす。
砂だらけ、汗と涙でぐしゃぐしゃだ。
……ルシアンは?
「ロイド、無事だったか……」
いきなり腕を引き寄せられ、思い切り抱きしめられた。
ルシアンの温もりを感じた瞬間、それまで俺の中で張り詰めていたものが一気にほどけた。
ああ……やっと終わったんだ。
俺は、ルシアンの肩に顔を埋めた。
その俺の頭を、ルシアンがそっと撫でてくれる。
その時――遠くで誰かが叫ぶ声がした。
「おいっ、あれを見ろよ!」
崩れ落ちた壁の向こうから風が吹き抜け、宙を舞う土埃が少しずつ晴れていった。
……えっ?
俺は思わず息を呑んだ。
そこに広がっているのは、広大な砂漠……の、はずだった。
「なんだ、これ……信じられない……」
今、そこに見えているのは――巨大な湖だった。
水面に輝く月の道。
波ひとつない湖面が、夜空の星々まで映し込んで煌めいている。
「これこそ……奇跡だな」
ルシアンが呆然と呟いた。
驚きが収まらない。けれど、俺にはこの国の未来がはっきりと見える。
「ああ、ザハラはもう渇きに苦しむことはない。これからはいくらでも水が使える。魚も獲れる、作物も育てられる」
そして、いずれは船を拵え、他国との往来もできるようになるだろう。
他国へ侵攻するのではなく、友好を結び、交易を行うために。
サリーム王とレイラ姉さんなら、きっとザハラをそういう国にできるはず。
人々が歓声を上げながら、水辺へ駆けてゆく。
水に飛び込む者、水飛沫をあげてはしゃぐ者、跪いて両手に水を掬う者――その誰もが空を見上げて、神に感謝する。
ふと、風に乗って、誰かが口ずさむ歌が聞こえてきた。
それは、ザハラの古い民謡。何度も耳にしたはずなのに、今、初めてその意味を知った気がした。
――光は影に重なり、影は光に重なり、
ザハラに永遠の祝福が訪れる
乾いた土地に水が湧き、砂塵から守られ、
輝く碧玉が贈られた……
その歌を聴きながら、ルシアンがそっと俺の肩を抱いた。
「……ここから始まるんだな」
ああ、ザハラは生まれ変わるんだ。
そして、俺たちも――
ここから始まるんだ。
……何だ?
地の底から目に見えない何かが這い上がってくるように、その音がじわじわと大きくなってゆく。
足元がぐらりと揺れて――大地が怒りを噴き上げた。
(きゃああっ!)
突然襲ってきた激震に、広場はたちまち混乱に陥った。
(早く逃げろ!)
(誰か助けて!)
(ああ、神さま……!)
人々が押し合い、転げ、泣き叫ぶ。
巨大な壁が悲鳴を上げるように軋み、倒れた彫像が派手な音を立てて砕け散った。
突き上げるような揺れに堪えきれず、レイラ姉さんが地面に崩れ落ちた。
「姉さん!」
慌ててその手を掴むと、姉さんが呆然と呟いた。
「どうして、こんなことに……」
そんなこと、俺にだってわからない。
揺れはますます激しさを増してゆく。
「うわぁっ!」
「……ロイド!」
倒れそうになった俺を、ルシアンが支えてくれる。
彼の口からも、戸惑うような声が溢れる。
「これは……神罰、なのか……?」
俺たちは、ザハラの平和を願ったはずだった。
戦は終わり、ザハラは新しく生まれ変わる……そう信じていたのに。
あの願いも、祈りも……全部、無駄だったのか?
「ちくしょう!」
結局、人間なんて神の気まぐれに弄ばれるだけ。
それが運命だなんて……冗談じゃない!
込み上げてくる怒りにまかせて、俺は宙に向かって声を張り上げた。
「この……ポンコツ女神! 俺たちを騙したのか!」
――まあ、失礼ねっ! これもザハラのためよ!
「俺たちは平和を願ったのに……何だよ、これは!」
すると、男神の低い声が響いた。
――ロイドよ、これはほんの始まりにすぎない。
「これ以上何をしようってんだ! この国を滅ぼす気かっ!」
男神と女神が愉しげに笑う。
――まあ見てなさい、とっておきの贈り物を授けてあげるから!
――ああ、これでザハラは安泰だ!
「ふざけるなっ!」
「冗談じゃないわっ!」
レイラ姉さんの怒った声が、俺の叫びに重なった。
――まぁ、さすが姉弟ね。息もぴったり! その調子なら、この揺れだって止められるわね?
「つべこべ言わず、どうすればいいか教えろっ!」
――お前たちの魔力を、宙へ解き放て。その力で、この世界を変えるのだ!
俺と姉さんは、思わず顔を見合わせた。
「世界を変えろって? 俺たち、何を試されてるんだ……」
「とにかくこの揺れを止めないと。犠牲が出る前に」
俺たちは、無言で頷き合った。
「俺たちに力があるなら、やるしかないな」
「ええ、この力は、民のために使うと決めたんだもの」
「よしっ!」
俺が夜空に向けて魔力を放つと――
閃光が弾け、暗い夜空に黄玉色に輝く魔法陣が浮かび上がった。複雑な紋様が渦を巻き、俺の魔力を吸いこんで明るく輝く。
そのすぐ隣にもう一つ、蒼玉色に輝く魔法陣が現れた。
レイラ姉さんの魔力だ。
――よしっ、そのまま魔力を注ぎ続けろ!
――この国の未来は、あなた達にかかってるからねっ!
くそっ、好き勝手言いやがって。
魔力を放ち続けるのは、大変なんだ!
膝が震え、息が荒くなる。視界もじわりと滲んできた。
それでも神々は、もっと魔力が必要だと言い続ける。
「ぐっ……!」
額から汗が滴り落ちた。
二つの魔法陣がゆっくりと広がって、その縁が触れ合った――その時だった。
俺の魔力に、温かく優しい力が重なった。
懐かしい声が、心の奥へ染み込んでくる。
(ロイド……レイラ……)
母さんと父さんが微笑んでいた。
二人の想いが、俺たちを包み込む。
(いつだって、お前たちを想ってる……)
父さんの力強い声が、俺の迷いを吹き飛ばす。
(あなたたちを愛してる……そのことを忘れないで)
母さんの優しい声に、思わず涙が出そうになった。
「ああ、母さま…… それに、父さまも……」
隣で、レイラ姉さんが声を震わせた。
「ロイド……聞こえてる?」
「ああ……姉さんも?」
母さんと父さんが見守ってくれてる――
更に、魔力に力を込めた。
――ロイド、レイラ、手を緩めるな!
「ぐっ……」
身体の芯から力が抜けていく。レイラ姉さんの吐く息も苦しそうだ。
このままじゃ、キツイな――そう感じ始めた時だった。
真っ赤な炎が夜空を貫き、紅玉色の魔法陣が浮かび上がった。
「ロイド、私の魔力も使え!」
その声は、ルシアンだった。
彼が放つ炎が奔流となって夜空を駆け上がり、俺の魔法陣に触れた、その瞬間――
ルシアンの想いが、俺の中に流れ込んできた。
愛してる……ロイド。
お前だけを、ずっと。
胸が熱くなった。ああ、俺はこんなにも……愛されてる。
ルシアン、俺も……
ルシアンが、嬉しそうに微笑んでくれる。
俺の精一杯の返事も、ちゃんと伝わったようだ。
――ああ、もうっ! イチャイチャしてないで、もっと魔力を送んなさいっ!
女神が喚いている間、ルシアンは騎士団の連中に声をかけていた。
「お前たち! あの紅い魔法陣を狙って魔力を放て!」
団長の号令に、ラクロスの騎士たちが心得たとばかりに、一斉に紅玉色の魔法陣めがけて魔力を撃ち始めた。
火魔法、水魔法、土魔法に、治癒魔法……んっ、絶倫魔法?
そんな魔法があったんだ……
とにかく、いろんな魔力が紅玉色へ吸い込まれてゆくと、仲間たちの声が聞こえてきた。
(しっかりしろ、ロイド!)
(負けんなよ!)
(俺たちが、ついてるからな1)
……なんだよ。こんな時に泣かせるようなことを言うなよ。
俺はひとりじゃない、お前たちがいてくれる。
(くっそぉお、俺も可愛い彼女が欲しいっ!)
その間抜けな声に、思わず吹き出した。
インビジブル魔法……ジェイだ!
すると、新たな魔力が加わって、紅玉色の魔法陣が一回り大きくなった。
カインの強化魔法だ。
(ロイド……ルシアン団長と幸せになれよ)
振り向くと、カインが笑顔を返してくれた……少しだけ眉を下げながら。
俺は狡い。彼の気持ちに気づかないふりをした。それなのに……
なんで、そんなに優しいんだよ。
俺は、彼に向かって何度も頷いた。
すると、突然、夜空に巨大な火柱が噴き上がった。
「――っ、あちっ!」
桁違いの魔力量だ……親父どのは、手加減ってものを知らないからなぁ。
乱暴だけど、強く熱い想いが伝わってくる。そうやって、俺をここまで育ててくれた。
(立派になったな、ロイド、もう心配することはないな……)
親父どの猛炎に続いて、今度は澄みきった魔力が流れてきた――セリーヌ夫人の浄化魔法。
清らかな魔力と共に、穏やかな声が心に響く。
(やっと、あなたらしく生きられるのね……よかった)
その優しい力で、俺の心の傷を癒してくれた。
感謝します、セリーヌ夫人……俺は、もう大丈夫です。
夫人の紫の瞳が、嬉しそうに揺れた。
その時、ふわっと爽やかな風が吹き抜けた。
(私たちも、加勢するわ!)
ゼフィーとゾラの声だ。
彼女たちに呼応するように、力強い風が吹き抜ける。
(ロイド、これまで殿下を支えてくれたこと、感謝する)
トビアス……まだ、エリスのこと殿下呼びしてるのかよ。
そんな調子だと、そのうち――
その時突然、夜空に巻き起こったのは竜巻?!
これは、もう間違いない。
(トビー! 名前で呼んでって言ったでしょ!)
ほら、エリスの登場だ。
さすがは王族、魔力量が半端ない……
(ロイド、私の魔力も使ってちょうだい!)
ありがたいけど……どうしてルシアンの火魔法を吹き消そうとしてるんだ?
(エリス、お前っ!)
(ふん、自分だけロイドにいいところを見せようなんて、狡いわよっ!)
二人揃うと、どうしていつもこうなるんだ……
みんなの想いが重なって一つの祈りとなった。紅玉色の魔法陣はその祈りを呑み込んで、すでに他の二つと肩を並べるほど巨大に膨れ上がっていた。
紅玉色、黄玉色、蒼玉色、三つの魔法陣が渦を巻きながら重なり合った――その時、
ゴゴゴゴゴゴォッ!!
凄まじい地鳴りと共に激震が襲った。足元が隆起し、大地がうねる。
「くそっ、揺れが酷くなったじゃないか!」
俺が叫ぶと、レイラ姉さんが宙を指した。
「あれを……見て!」
三色の魔法陣が重なり合った部分に見えるのは――底知れぬ深淵。
光も影も、あらゆるものを呑み込んで、跡形なく消し去ってしまう暗闇だ。
その暗闇へ、俺たちの魔力が吸い込まれてゆく。
―― あの穴を塞ぐのだ!
―― 魔力を、もっと魔力を注いで!
神々の声が響き渡る。
だが、もう限界に近い。魔力も体力も削られてゆくばかり。
……まだ足りない……もう少し魔力があれば……
そう願った時、重々しい足音が近づいてきた。
「あれは、俺が片づける」
俺の隣に立ったのは、アシークだった。
彼は三つの魔法陣を見上げると、渦巻く暗闇へ手を翳した。
「今、この時に……俺のすべてを捧げよう」
彼がそう唱えた瞬間、白い影が彼の前へ飛び出した。
「主っ、ダメだ! あの深淵に触れたら、いくら主でもどうなるか!」
白虎が彼の足元に縋りつき、必死に止めようとする。
アシークは白虎を静かに見下ろした。
「だから、俺がやると言っているのだ」
アシークの大きな手が、白銀の毛並みを撫でた。
「……ザグン、お前の役目ももう終わりだ。男神の元へ戻れ」
だが、白虎は蹲ったまま、その場を動こうとしない。
アシークはわずかに口元を緩めただけで、再び夜空へ目を向けた。
魔法陣の中心で渦巻く暗闇――深淵を狙って、彼が魔力を放った。
時だけが刻々と過ぎてゆく――
暗闇がアシークの魔力を吸い尽くしてゆく。このままでは彼の魔力だけでなく、彼自身まで呑み込まれてしまうのではないか――誰もがそう恐れ始めた時、
「穴が、塞がってゆくぞ!」
誰かが叫ぶ声に、俺たちは祈るような思いで夜空を見上げた。
暗い穴が、わずかに、だが確実に縮んでいく。
胸の奥に希望が生まれた、その時、
「主っ、 もう止めて!」
ザグンが悲鳴を上げ、アシークにしがみついた。
その足元が、透き通るように薄くなっていた。魔力と共に、彼の存在そのものが深淵に吸い込まれているのだ。
「これ以上魔力を失ったら、主は消えてなくなってしまう!」
その悲痛な声に、レイラ姉さんの叫ぶ声が重なった。
「アシーク、無茶よ! 魔力を止めて!」
アシークがゆっくりと姉さんへ振り向いた。
「レイラ……俺は、きっとこのために生きてきたのだ。お前と……ロイドを守るために」
「そんな……!」
すると、彼の瞳がわずかに揺れた。
「レイラ……お前を自由にしてやると言ったのに、約束を守れなかったな」
「何を言ってるの! あなたは、いつだって私を守ってくれた! 優しかったあなたが、戦いに身を投じたのも、私のためだったのでしょう? 謝るのは私のほうよ!」
「その戦いもじきに終わる。お前は自由になる……もう、私は必要ない」
「そんなこと、言わないで……!」
アシークは、もう膝まで消えかかっている。それでも彼は、魔力を放つ手を止めようとしない。
深淵が塞がるのが先か、それとも、彼が消え失せてしまうのが先なのか。
「アシーク、もういい! 」
気づけば、俺は叫んでいた。
彼が驚いたように、俺を見た。
「お前は……俺など消えてしまえばいいと、そう思っていたのではないのか?」
「バカやろう! 俺がどう思おうと関係ない! お前を心配する人がいるんだ! 姉さんに、ザグンを見ろ! お前に消えてほしくないんだよ!」
アシークが息を呑んだ。そして、姉さんを見て、足元に蹲るザグンへと視線を落とした。
「……レイラ……ザグン……」
彼の瞳から孤独の影が消え、代わりに温かい光が灯った。
彼が初めて見せる顔だった。
「俺を気にかけてくれる者がいるか……なぜ気づかなかったのだろうな……きっと、お前のせいだ」
「……俺の、せい? 」
アシークの瞳が、俺を捉えて離さない。
俺の姿を、その瞳に焼きつけようとするように。
「ああ、お前だけを見ていたからな……お前が別の男を想っているとわかっていても、どうしても諦められなかった」
「そんな……どうしようもないこと……」
アシークが片手で胸を抑えた。
だが、その手も透けて消えかかっている。
「そうだな……俺も、この想いをどうすればよいかわからなかった。だが、これが俺の生き方だ。お前も、お前らしく生きてゆけ」
「もういい、早く魔力を止めろ! このままだと、お前は……!」
俺は必死にアシークへ手を伸ばした。そうやって、彼をこの世界に引き止めようとするように。
だが、その指先は虚しく彼の身体をすり抜けた。
「……俺はお前を殴り、押さえつけ、犯し続けた男だ。だから、俺を憎め。いつまでも憎み続けろ」
「お前は……それでいいのか?」
「ああ……そうすれば、俺はお前の心の中に居座り続けられる」
憎めと言いながら、彼は穏やかな笑みを浮かべる。
その顔も、もう淡く透けている。
「ロイド……お前を知って、俺は色々な感情を知った。お前をこの腕に抱いていると、世界が色づいて見えたな……なあ、ロイド……」
アシークの唇が微かに震えた。
……愛して……る……
その一言だけを残して、アシークは煙のように俺の前から消えてしまった。
「アシーク!」
彼の声はまだ耳に残っているのに。
あの金色の瞳が俺を見つめることは、もう二度とない。
レイラ姉さんの啜り泣く声が聞こえる。
気づけば、俺の頬も濡れていた。
ザグンの姿も消えていた。きっと、アシークの後を追ったのだろう。
(いつか、主と一緒に故郷の森に帰るんだ……)
あいつはそう笑っていた。
白銀の髪を靡かせ、真紅の瞳にアシークだけを映して。
アシークが消えてしまった、その直後、夜空に浮かぶ三つの魔法陣が完全に重なり合った。
眩い光と共に、魔法陣が花火のように爆ぜ散った――その瞬間、
ドドドォーンッ!!
轟音と共に、広場を囲んでいた壁が一気に崩れ落ちた。
地面に伏せた俺たちの上に土埃が吹き上がり、一瞬にして世界が真っ白になった。
……やがて、ゆっくりと騒めきが戻ってきた。
いつの間にか地鳴りは止み、揺れもすっかり収まっていた。
神々の声も聞こえない。ひと仕事を終えたと、姿を消してしまったようだ。
ゆっくりと身体を起こす。
砂だらけ、汗と涙でぐしゃぐしゃだ。
……ルシアンは?
「ロイド、無事だったか……」
いきなり腕を引き寄せられ、思い切り抱きしめられた。
ルシアンの温もりを感じた瞬間、それまで俺の中で張り詰めていたものが一気にほどけた。
ああ……やっと終わったんだ。
俺は、ルシアンの肩に顔を埋めた。
その俺の頭を、ルシアンがそっと撫でてくれる。
その時――遠くで誰かが叫ぶ声がした。
「おいっ、あれを見ろよ!」
崩れ落ちた壁の向こうから風が吹き抜け、宙を舞う土埃が少しずつ晴れていった。
……えっ?
俺は思わず息を呑んだ。
そこに広がっているのは、広大な砂漠……の、はずだった。
「なんだ、これ……信じられない……」
今、そこに見えているのは――巨大な湖だった。
水面に輝く月の道。
波ひとつない湖面が、夜空の星々まで映し込んで煌めいている。
「これこそ……奇跡だな」
ルシアンが呆然と呟いた。
驚きが収まらない。けれど、俺にはこの国の未来がはっきりと見える。
「ああ、ザハラはもう渇きに苦しむことはない。これからはいくらでも水が使える。魚も獲れる、作物も育てられる」
そして、いずれは船を拵え、他国との往来もできるようになるだろう。
他国へ侵攻するのではなく、友好を結び、交易を行うために。
サリーム王とレイラ姉さんなら、きっとザハラをそういう国にできるはず。
人々が歓声を上げながら、水辺へ駆けてゆく。
水に飛び込む者、水飛沫をあげてはしゃぐ者、跪いて両手に水を掬う者――その誰もが空を見上げて、神に感謝する。
ふと、風に乗って、誰かが口ずさむ歌が聞こえてきた。
それは、ザハラの古い民謡。何度も耳にしたはずなのに、今、初めてその意味を知った気がした。
――光は影に重なり、影は光に重なり、
ザハラに永遠の祝福が訪れる
乾いた土地に水が湧き、砂塵から守られ、
輝く碧玉が贈られた……
その歌を聴きながら、ルシアンがそっと俺の肩を抱いた。
「……ここから始まるんだな」
ああ、ザハラは生まれ変わるんだ。
そして、俺たちも――
ここから始まるんだ。
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